2007年11月に東京・日比谷に誕生したシアタークリエが、開場10周年を迎える。メモリアルイヤーのオープニング作品として、同劇場で3度上演され、公演の度に連日満員となり、数々の演劇賞にも輝いた『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』が、2017年11月1日(水)に3年ぶりに開幕。初日には、主演の井上芳雄と坂本真綾が、脚本・演出のジョン・ケアード、翻訳・訳詞を手掛けたケアード夫人である今井麻緒子と共に初日特別カーテンコールが行われた。
本作は、知的で紳士、でも一風変わった若き慈善家ジャーヴィス(井上)と、孤児でありながらはつらつとして聡明な18歳の少女ジルーシャ(坂本)の恋の物語。ある夜、大学に進学し勉学を保証するという思いがけない手紙を受け取ったジルーシャ。ただ、そこには「月に一度手紙を書くこと」という条件があった。手紙の主は、その夜に見た、車のヘッドライトに照らされ、まるで足長蜘蛛(ダディ・ロング・レッグズ)のような影、まさにその人だった。
影でしか見たことのない相手だったが、ジルーシャは心を躍らせ手紙を送り続けた。影の正体であるジャーヴィスもまた、知性ある手紙を毎回送ってくれる彼女に、惹かれていった。そしてついにジャーヴィスは、影の正体であることを隠してジルーシャの前に現れる―。
終演後、井上と坂本がステージに登場すると観客から大きな拍手が沸き起こった。井上はまず、初日を無事開けられたことへの感謝を述べると、客席で観劇していたジョンを呼び、本作の魅力に触れた。ジョンは「すばらしいパフォーマンスを観ることができて本当に嬉しかった」と二人を賞賛。続けて本作の初演時について語りだした。
「作品ができたのは2009年。カリフォルニアのベンチュラという場所にある120席くらいしかない小さな小さな劇場で上演されました。15都市くらいを巡演し、最後はイギリスのウエストエンドまで行ったんです」と、そこまで語ったジョンは、やおら客席を見て「今日はなんと、オリジナルキャストの一人、ロバート・ハンコックが観にきているんです、ほら、立って立って!」呼びかけた。その声の先には、少し腰を浮かせただけでもかなりの高身長と分かる男性が。
その姿に劇場にはどよめきと歓声、拍手が満ちた。すかさず井上が、“足ながおじさん”という副題に絡め、ケアードに「僕と彼(ロバート)、どっちの足が長い?」とケアードに問いかけると、その回答は「彼(ロバート)の方が、身長が高いからね。僕よりもずっと高いくらいだから・・・(笑)」。これ以上は察してくれと言わんばかりのジョンの笑みに「おお・・・」と頭を抱えた井上だった。
さらに、改めて出演者から一言挨拶があり、坂本は「始まるまでは緊張していましたが、こうやって舞台が終わり皆さんから拍手をいただくと、ものすごく愛を感じ、作品に帰ってこれたなと思いました。またジルーシャになれて、こんなに幸せなことはないです」と、客席を見渡しながら喜びをかみしめていた。
井上も「またこの作品に帰ってこれたな」としみじみ語りながら「この公演を(メモリアルイヤーの)1年間、ずっとやればいいのに」と言うと、「死んじゃう・・・(笑)!」と坂本。しかし、「でも、他の人がやるよりいいでしょ?」と続けた井上と笑い合い、二人の作品愛を感じさせた。
今回の上演では、前回の公演内容から変更となった場面や台詞、歌もあるそうだ。それはどの場面なのか、私の好きなあの歌は無事・・・!?など、いろいろなことを想像しながら、劇場に足を運んでいただきたい。
なおこの日、本作がDVD化されることが発表された。発売日は、2018年春を予定(8,000円+税)。本編のほか、特典映像、特製ブックレットが付く。予約方法などの詳細は、公式HPにてご確認を。
『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』は11月1日(水)から11月24日(金)まで、東京・シアタークリエにて上演。その後、11月から12月にかけて、福岡、兵庫、愛知を巡演する。日程の詳細は以下のとおり。
【東京公演】11月1日(水)~11月24日(金) シアタークリエ
【福岡公演】11月28日(火)・11月29日(水) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【兵庫公演】12月1日(金)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【愛知公演】12月16日(土)・12月17日(日) 中日劇場
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)