ミュージカル界のアベンジャーズ集結!『カムフロムアウェイ』レポート――9.11の裏で起きた奇跡の物語


2024年3月7日(木)に東京・日生劇場で、ミュージカル『カムフロムアウェイ』が開幕。前日となる3月6日(水)に公開ゲネプロと会見が行われ、安蘭けい、石川禅、浦井健治、加藤和樹、咲妃みゆ、シルビア・グラブ、田代万里生、橋本さとし、濱田めぐみ、森 公美子、柚希礼音、吉原光夫らキャスト陣が登壇した。

ミュージカル界のアベンジャーズ集結!『カムフロムアウェイ』レポート――9.11の裏で起きた奇跡の物語

日本ミュージカル界を牽引する12人のミュージカルスター集結

『カムフロムアウェイ』は、2001年9月11日の同時多発テロの裏、カナダの小さな島・ニューファンドランド島で起きた実話をもとにしたブロードウェイミュージカル。安蘭けい、石川禅、浦井健治、加藤和樹、咲妃みゆ、シルビア・グラブ、田代万里生、橋本さとし、濱田めぐみ、森公美子、柚希礼音、吉原光夫ら12人の出演者が100人近くの役を演じ分けながら、100分間ノンストップで物語が繰り広げられる本作は、数々の演劇賞を受賞しており名作と名高く、日本ミュージカル界を牽引する12人の名立たる俳優が日本初演を担うことからも注目を集めている。

2001年9月11日、ニューヨークで同時多発テロ事件が起きた。アメリカの領空が閉鎖され、目的地を失った38機の飛行機と7,000人の乗客・乗員たち。彼らはニューファンドランド島のガンダー国際空港に降り立ち、島で5日間を過ごすことになる。ニューファンドランド島は小さな町で、人口は1万人。38機の乗客・乗員を迎え、島の人口は一夜にして約2倍となった。しかも彼らは、人種や出身、宗教など、全てが違っている。『カムフロムアウェイ』は、そんな乗客・乗員たちとニューファンドランド島の人々が紡ぐ、実話をもとにした希望の物語である。

レポート:島で展開されるかけがえのない時間と空間

ミュージカル界のアベンジャーズ集結!『カムフロムアウェイ』レポート――9.11の裏で起きた奇跡の物語

冒頭から圧巻のステージに、胸の高鳴りが止まらない。ケルト民謡やフォークロック、そして世界中の音楽がブレンドされたナンバーたちに乗せて、私たちは『カムフロムアウェイ』の世界への旅に出ることになる。

遠くから来た人たち、すなわち「カム・フロム・アウェイズ」と、ニューファンドランド島の人たちは、この非常事態において、心身ともに、まさに「瀬戸際」。言いようもない不安や怒り、苛立ちを抱えるカム・フロム・アウェイズだが、そんな彼らに島の人たちは5日間寝る間も惜しんで尽くす。衣食住といった生命維持的な部分だけでなく、精神面でも寄り添おうとする島民たちに、助け合いや心づくしの何たるかを教えられる心地だ。

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ゲネプロ前に行われた取材で、吉原は本作を「穏やかな風を与えてくれる作品」と表現していたが、その言葉に深く頷いてしまう。何もかもが違う人々が交流し心を通わせていく光景が、じわりと胸に染みた。日本のミュージカル界を引っ張るスターたちの共演と言っても過言でない本作だが、このキャストが集った意味を開幕間も無く知ることになるだろう。

まず、とにかくキャスト全員が舞台上から姿を消すことがほとんどない。こなす役の数は3人以上、しかも様々な役を100分間の中で行ったり来たりするのだ。しかしながらキャストたちは、その一人ひとりの人生を生きていることを疑わせない。芝居、声色、佇まいに振る舞いに出で立ち、あらゆる表現を駆使して、それらを客席に伝えてくれる。

本作はミュージカルなので、歌唱の場面は言うまでもなく多いのだが、「話すように歌う」力が特に強い。朗々と響くソロ歌唱の素晴らしさは言うまでもないが、デュエット、トリオ、そしてキャスト全員の合唱といった、複数人での歌唱のハーモニーを耳にしたときの高揚感は凄まじく、なんとも魂が揺さぶられる思いがした。

キャスト陣の卓越した実力と技術だけでなく、チームワークの重要性もキーとなる本作。取材会ではキャスト陣が稽古の過酷さとそれを共有した絆とを強調していたが、それにも納得である。次々に入り乱れる役柄と複雑なフォーメーションにも関わらず、その完成度は目を見張るもので、それがまた客席をどんどん物語へと没入させていくのだ(ちなみにスタンバイキャスト[上條駿、栗山絵美、湊陽奈、安福毅]の大変さと素晴らしさ、そして心強さをキャスト陣がしきりに口にしていたが、想像に難くない)。

また演出のクリストファー・アシュリーが言うように、音楽とバンドチームも本作においてとても重要な位置を占めている。ニューファンドランド島の5日間というかけがえのない時間と空間は、彼らがいないと成立しない。

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舞台セットはほぼ変わらず、回る盆と照明以外はこれまたすべてキャストが人力で動かし、場面ひとつひとつを作り上げているのもこの舞台の特色といえよう。アンサンブルがおらず、舞台装置も大仰でないこの舞台で、キャスト12人がバンドチームとともにこの世界のすべてを形成していくさまは、言いようもなく鮮やかである。

大仰でない舞台セットだが、そのシンプルさゆえの魅力も印象に残る。咲妃は本作の見どころを「舞台セットとその美しさ」だと語っていたが、その言葉通りで、それが作品自体の持つ特有の美しさをも際立たせている。照明も効果的にステージを彩り、場面の移り変わりだけでなく登場人物たちの内的世界までも私たちに知らせてくれるようだ。舞台装置が織りなす情景描写と登場人物の心情とがリンクするさまはとても叙情的でドラマチックだった。

ミュージカル界のアベンジャーズ集結!『カムフロムアウェイ』レポート――9.11の裏で起きた奇跡の物語

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色彩豊かな華のキャスト陣たちがひとつにまとまり、底知れぬ力を持つこの作品に挑む。目の当たりにしたステージは、生命力溢れる大きな花束のようだった。

目まぐるしく過ぎ去っていく日常の中で、「何かに止められ」、何かに「気付く」瞬間があるのだとすれば、この花束を受け取ったときはまさに、あなたにとってその瞬間になり得るに違いない。

ミュージカル界のアベンジャーズ集結!『カムフロムアウェイ』レポート――9.11の裏で起きた奇跡の物語

ミュージカル『カムフロムアウェイ』は、3月7日(木)から3月29日(金)まで東京・日生劇場、4月4日(木)から大阪・SkyシアターMBS、4月19 日(金)から愛知・愛知県芸術劇場大ホール、4月26日(金)から福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール、5月3日(金祝)から熊本・熊本城ホールメインホール、5月11日(土)から群馬・高崎芸術劇場大劇場にて上演。上演時間は約1時間40分を予定(休憩なし)。

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インタビュー

クリストファー・アシュリー(オリジナル演出家)

この作品を作ってから、この世界では、大きな分断、そしてたくさんの紛争が起こっております。このように戦争やパンデミックがある中で、優しさであったり、他人に対して寛容な思いを持つというような作品を手掛けることができて、本当に幸せな思いです。
このキャストたちとご一緒できて、本当に楽しいです。この作品については何もかも知り尽くしたつもりでいましたが、このキャストたちから作品についてたくさんのことを学んでいます。この人たちが好きすぎて、今後キャリアの中でこの人たち以外はお仕事しないと決めたところです(笑)。バンドの皆様も含め、ホリプロさんがご用意してくださったこの素晴らしいコミュニティに感謝の気持ちでいっぱいです。
ぜひ、この美しい劇場で、この素晴らしいキャストをご覧になるために、『カムフロムアウェイ』にいらしてください。日本の皆様に穏やかな風をお届けできれば幸いに存じます。

意気込みコメント

◆安蘭けい

6か月、準備をしてきましたが、振り返るとあっという間でした。すごくすごく密度の高いお稽古をしてきたので、きっと明日は素晴らしい初日になるだろうなと思っています。
日本キャストにしかできない味を皆様にお届けできたらなと思っています。よろしくお願いします。

◆石川禅

今も元気で実在していらっしゃる方たちを演じることは、本当にないんです。限りなくドキュメントに近づけたフィクションというか、嘘をつかないで、その方たちの気持ちに成り代わって演技をするということが高いハードルで、そのハードルを飛び越えていこうと思っています。ただ、あまりにも楽しいキャストの人たちが揃っているので、毎日毎日爆笑しながら稽古をしておりました。
どうぞ皆さん劇場にお越しください。楽しいです。

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◆浦井健治

6か月間、毎日8時間くらい一緒にいたキャストと、舞台を見守ってくれているスタンバイキャスト4人、この16人で5月まで完走することを目標にやっていけること、やってこられたことが幸せです。そしてガンダー空港の奇跡を描くこの作品からも、人と人って温かいんだなということを感じさせていただいています。大切にやっていきたいと思います。ぜひお越しください。

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◆加藤和樹

稽古を重ねていく中で、みんなが同じ時間を共有して、失敗を笑いに変えながら前に進んでいく感覚から、1つのカンパニーというより、ファミリーという感じがしていました。不安ももちろんありますけれども、この長い稽古期間で自分たちが培ってきたものを舞台上で出していきます。この日比谷界隈で1番エネルギーのある作品に仕上がっていると思いますので、ぜひ劇場に観にきていただければなと思います。

ミュージカル界のアベンジャーズ集結!『カムフロムアウェイ』レポート――9.11の裏で起きた奇跡の物語
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◆咲妃みゆ

お稽古場を振り返ると、本当に壮絶だったんですけれども、本当に愛しい日々でした。1人の人間として、今後の人生で、心にずっと持っておきたい大切な考え方などを、 私自身、この作品からたくさん学ばせていただいていることにとても感謝しています。早くお客様にお届けしたいですし、この作品のモデルとなった方々への敬意を胸に、1回1回大切にお届けしたいと思います。よろしくお願いします。

ミュージカル界のアベンジャーズ集結!『カムフロムアウェイ』レポート――9.11の裏で起きた奇跡の物語

◆シルビア・グラブ

初めて舞台上で、照明とセットと全部合わせて通させていただいたとき、最後の曲で、すごい涙が出てきちゃって。これで最後のピースのお客様が入った時に、どれだけ冷静にいられるかわからないというぐらい、最高でした。
出ている側が最高と言ってしまいましたが(笑)、観ている側も最高だと思います。だから本当に、劇場へぜひお越しください!

ミュージカル界のアベンジャーズ集結!『カムフロムアウェイ』レポート――9.11の裏で起きた奇跡の物語

◆田代万里生

ガンダー空港での突然の出来事を描く作品なので、衣装やメイクも着飾るようなものではなく、こんなに日常と非日常とのカテゴライズ感がない作品は僕も初めてです。
この素敵な劇場で開幕するこの作品ですが、全1幕約100分×50公演で5000分もの時間、僕らは一緒に歩んでいきます。ぜひたくさんの方に届けていただきたいなと思っております。劇場でお待ちしております。

◆橋本さとし

役者キャリアの中で、最も過酷な稽古だったような気がします。僕、そんなミスらないんですけど(笑)、ミスをしても、みんなが笑い飛ばしてくれるので、稽古では恥もかき捨て、いっぱいミスをしながら、やっとここにたどり着きました。もうすっかり、北米の北東の果てのニューファンドランド人になりました。
みんなと一緒に、稽古を経て、劇場に入って、明日初日を迎えられるっていうのが、本当に嬉しい限りです。本気で、観に来てください!

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◆濱田めぐみ

お稽古場にいる時から、本当にメンバーみんなぴたっとくっついて、1日8時間ずーっと一緒にいたので、もう他人ではなくファミリー、親族のような感覚があります。舞台上でも本当にみんな近い距離でお芝居をするんですけれども、ちょっと不安かなと思って見回すと、家族がいる。我々がお稽古場で過ごしてきた中で積み上げてきたチームワークっていうのが垣間見られると思いますし、そのチームワークの中に来てくださった観客の皆様も一員になってくださるんだと思うと、すごく楽しみで仕方がないです。
怪我なく全員で走り抜けたいと思います。よろしくお願いいたします。

ミュージカル界のアベンジャーズ集結!『カムフロムアウェイ』レポート――9.11の裏で起きた奇跡の物語

◆森公美子

キャストの皆さんと、もう膝死ぬんじゃないかと思うようなすごいお稽古をしました。本当に楽しい稽古場で、なんと7キロ痩せました!『カムフロムアウェイ』ダイエットです(笑)本当に色んな幸せをこのファミリーからいただきました。
たくさん勉強もさせていただきまして、私が1番ニューファンドランド島にいる方に近い体型だということもよくわかりました(笑)
というわけで、私、頑張ってますので、ぜひ観に来てください!

◆柚希礼音

このミュージカルは「全く演じずにやる」ということがテーマで、 稽古中から何度も何度もそれを言われて、それがめちゃめちゃ難しかったんですけれども、そのたびに、このすごいキャストの皆様が、本当に家族のように、自分のことのように教えてくれました。『カムフロムアウェイ』という作品自体だけでなく、キャストのみんなも温かくて、もう温かさでどうにかなるんじゃないかというぐらい心がぽかぽかとしております。
お客様にこの温かい物語を心から届けたいと思っておりますので、ぜひ 5月の千秋楽までたくさんの方に観ていただきたいです。よろしくお願いします。

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◆吉原光夫

穏やかで誇り高いこの作品を、どう穏やかに優しく、人に対して思いを寄せて、外連味を取って、日本のお客さんに届けられるかというのは、まだ始まっていないのでわかりません。だからその日までは、人の言うことをちゃんと聞いて(笑)、頑張りたいなと思っています。
3.11を経験し、いまも地震などの不安な状態が続いている日本に、そして人が人を傷つけ合うこの時代に、この作品は穏やかな風を与えると思います。楽しんでください。

(取材・文・撮影:遥咲貴)

ミュージカル『カムフロムアウェイ』公演情報

スケジュール

【東京公演】2024年3月7日(木)~3月17日(日) 新国立劇場小劇場
【大阪公演】2024年3月30日(土)~3月31日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
【愛知公演】2024年4月19 日(金)~4月21日(日 愛知県芸術劇場大ホール
【福岡公演】2024年4月26日(金)~4月28日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【熊本公演】2024年5月3日(金祝)~5月4日(土) 熊本城ホールメインホール
【群馬公演】2024年5月11日(土)~5月12日(日) 高崎芸術劇場大劇場

チケット

スタッフ・キャスト

【脚本・音楽・歌詞】アイリーン・サンコフ/デイヴィット・ヘイン
【演出】クリストファー・アシュリー
【振付】ケリー・ディヴァイン

【キャスト】
安蘭けい
石川 禅
浦井健治
加藤和樹
咲妃みゆ
シルビア・グラブ
田代万里生
橋本さとし
濱田めぐみ
森 公美子
柚希礼音
吉原光夫

【公式サイト】 https://horipro-stage.jp/stage/comefromaway2024/
【公式X(Twitter)】@ComeFromAwayJP

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