「最高に仕上がっている」橋本祥平ら出演ミュージカル『伝説のリトルバスケットボール団』会見・公開ゲネプロレポート


2024年2月15日に東京・草月ホールにて、橋本祥平、梅津瑞樹、糸川耀士郎、吉高志音、太田将熙、平野良ら出演のミュージカル『伝説のリトルバスケットボール団』が開幕した。2023年7月に上演した1日限りのプレビュー公演から約半年、満を持しての本公演となる。

『伝説のリトルバスケットボール団』は、パク・ヘリムによる笑いあり涙ありのストーリーを、ファン・イェスルによる魅力的な音楽にのせてお届けする、多くの人に評価され愛される韓国発ミュージカル。日本版キャストには、橋本祥平、梅津瑞樹、糸川耀士郎、吉高志音、太田将熙、平野良らが名を連ねる。

「最高に仕上がっている」橋本祥平ら出演ミュージカル『伝説のリトルバスケットボール団』会見・公開ゲネプロレポート

物語の中心となるのは、クラスメイトからいじめられ、無視され、親からも見放されていた高校生のキム・スヒョン。絶望の淵に立たされ、命を絶つことを決意し、屋上から身を投げた。しかしながら、何故かスヒョンは生きていた。目覚めると、場所は依然として屋上。変わったことといえば、3人の高校生が目の前に現れたことであった。

明るく爽やかなオープニングテーマから一転、クラスメイトに虐げられるスヒョンの在りように胸が痛くなる。演じる橋本祥平の痛ましげな表情と声色が、客席を突き刺すようだ。

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しかし追い詰められた彼の前に3人の高校生、スンウ、ダイン、ジフンが現れると、ステージの空気はまた一変。思わず体が動いてしまうようなキャッチーで可愛いナンバーに乗せて、彼らはスヒョンに「お願い」をする。「どうせ死ぬなら、その体を俺たちの為に使ってくれないか?」

糸川耀士郎演じるスンウ、梅津瑞樹演じるダイン、吉高志音演じるジフンは、15年前に死んだ高校生で、未だ成仏できずにいるらしい。スヒョンは頼みを断りきれず、憑依される事を受け入れる。憑依されたスヒョンの七変化が楽しい。

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明るさを取り戻したステージを観て、思わず笑みがこぼれる。会見において、楽曲の良さをキャスト陣が口々に語っていた。色とりどりの曲はすべて、橋本の言うように「プレビュー公演を経てキャストに馴染んで」おり、吉高の言うようにキャストが「音を楽しんでいる」様子が、序盤から非常に印象的だった。

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スヒョンと3人の幽霊が奇妙な関係性を結ぶ一方、平野良演じるジョンウは、コーチをする弱小バスケットボールチーム存続の危機に苦悩していた。バスケへの思いは並一通りでない様子の彼。年長者としての大らかさと一人の人間の複雑な心中を思わせる芝居はもちろん、豊かな歌唱も必聴。

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そんな中、チームのメンバーである太田演じるサンテは、意に介さない様子で一人練習に励んでいる。しかしながら彼も、単純ならぬ道程と思考を経て今に至っているようだ。等身大の高校生、その痛いほどの人間らしさに、物語が進むにつれ、寄り添ってしまう人も多いだろう。

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悩むジョンウの前に現れたのは、(スンウ憑依)スヒョンである。糸川演じるスンウは、ちょっぴり悪戯な表情と凛とした佇まいが目を惹いてやまない。彼は生前、バスケが得意だったらしい。

華麗なプレーをたまたま目の当たりにしたジョンウは、救世主とばかりにスヒョンをチームに勧誘。あれよあれよという間にスヒョンはチームに入部することに。それをきっかけに、物語が、そして登場人物それぞれの人生が、音を立てて動き出す。

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物語の中で、スヒョンと交流を重ねていく個性豊かな幽霊たち。梅津演じるダインは、コメディ要素を担いながら聡明さをも併せ持つ人物像が魅力。その緩急の凄まじさもさることながら、剽軽さの裏にある事情を目の当たりして、衝撃を受け、胸を打たれること請け合いである。吉高演じるジフンは、愛嬌ある笑顔と人好きのする雰囲気が周囲を和ませる。真っすぐなまなざしが彼の真っすぐな言葉に説得力を持たせ、客席をも勇気づけるようだ。

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「客席もリトルバスケットボール団の一員になる」とは平野の言葉だが、まさに客席の私たちも彼らの仲間になったような没入感と一体感が、この作品の刺激的なところの一つ。併せて、舞台装置の興趣とホールの特性も存分に味わいたい。

「最高に仕上がっている」橋本祥平ら出演ミュージカル『伝説のリトルバスケットボール団』会見・公開ゲネプロレポート

キャスト陣の息の合ったプレーがこの作品をさらに見ごたえのあるものにしていることも疑いない。会見においては稽古場の楽しさが繰り返し語られ、会見の雰囲気からもキャスト陣の仲の良さをひしひしと感じた。梅津は、プレビュー公演を経ての本公演について、キャスト陣がかなり知り合っているところから稽古を始められたこと、それが信頼感につながり、相談のしやすさが作品に良い影響を及ぼしたことを語っていたが、非常に納得感がある。そういった良い影響は各所のアドリブにも表れているようで、一公演一公演が唯一無二のものになりそうである。

物語を構成する言葉や場面において、必要のないものは一つとして存在しない。登場人物たちが交わり、対話をする中で、それぞれの思いと葛藤が浮き彫りになっていく。目まぐるしく移り変わる展開に、目を離すことができないだろう。

3人の幽霊たちの願いとはいったい何なのか。登場人物たちの止まってしまった時計は、再び動き出すのか。

ボールをつく音が響くたび、シュートがひとつ決まるたび、いとおしい彼らの人生が、生き様が、ステージに刻まれていく心地がする。ミュージカル『伝説のリトルバスケットボール団』は2月25日(日)まで東京・草月ホール、3月2日(土)からは大阪・松下IMPホールにて上演。上演時間は約2時間を予定(休憩なし)。

(取材・文・撮影:遥咲貴)

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舞台挨拶・スタッフキャストコメント

◆橋本祥平

半年前のプレビュー公演を経て、本公演に向けて準備をしてきて、すごく熟成されているような感覚があります。
この作品が韓国の公演チームの皆さんと日本の僕らを繋いでくれて、本当に感謝をしています。その思いを受け継いで、この素敵な作品をさらにいろんな方に伝え、繋げていけるような公演にしたいなと思います。
今、最高に仕上がっている状態です。初日から千穐楽まで、全力でこの作品を届けたいと思いますので、ご声援よろしくお願いします。

◆梅津瑞樹

起承転結がはっきりしているという意味で、後半の展開の急降下・急上昇具合がとんでもない作品です。日本の構成ではあまり馴染みがないような感覚さえあるかもしれませんが、そこも楽しんでいただけるのではないかと思います。
あり得たかもしれない「青春」 を、31歳がビブスに袖を通し、歌って踊っています。少しでもそれを分かち合えたらいいなと思います。

◆糸川耀士郎

ようやく本公演でたくさんのお客さんに観ていただけるのがすごく楽しみです。僕はミュージカルもお芝居もバスケも全部本当に大好きなので、ご褒美のような時間がこれから続くなって思っています。
本当に脚本が面白くて、2時間前後の中で起承転結がはっきりしていて、観劇後に充実感を味わえる作品だと思います。そういう作品をこのメンバーでできているっていう喜びも大きいです。 ぜひ劇場で観ていただけたら嬉しいです。

◆吉高志音

プレビューから半年経って、今は本当に、「ついに、俺たちの力を見せつける時が来た!」っていう思いです。共演者との関係性も深まったと感じるので、実際にお客様が入って、それをお届けできるのがすごく楽しみです。
自身の経験を思い出したり、楽しいところはわっと楽しんでいただいたり、切ないところは一緒にそれを感じていただいたり、終演後もいろんなことを考えてもらえたりするような作品になっていると思います。
あとは、「怖がらず信じてただやるだけ」、です!

◆太田将熙

テンポ感が良く、気付いたらエンディングを迎えていると思います。そんな約2時間の中で、登場人物たちが、一歩を踏み出します。その大きさはさまざまですが、小さい一歩であっても、彼らにとってそれぞれすごく大きな一歩だったりします。
彼らが一歩前に進めた瞬間を、見届けていただけたらなと思います。

◆平野良

一歩を踏み出す力や勇気、そして青春を描いたストーリーで、誰にでも共通する要素があり、幅広い世代の方に楽しんでもらえる構成になっています。そしてダンスに歌と、見ても聴いても楽しめます。
観終わった後も、またじんわりと考えられるような作品になっています。皆々様に観ていただきたいです。

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ミュージカル『伝説のリトルバスケットボール団』公演情報

スケジュール

【東京公演】2024年2月15日(木)~2月25日(日) 東京・草月ホール
【大阪公演】2024年3月2日(土)~3月3日(日) 大阪・松下IMPホール

スタッフ・キャスト

【作】パク・ヘリム
【作曲】ファン・イエスル
【オリジナル・プロダクション】アンサン文化財団、IM Culture
【演出・振付】TETSUHARU
【日本語上演台本・訳詞】私オム

【キャスト】橋本祥平 梅津瑞樹 糸川耀士郎 吉高志音 太田将熙 平野良

【公演公式サイト】http://www.littlebasketball.jp/
【公式X】@_littlebasket

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