劇団「ロ字ック」4年ぶり新作公演!さとうほなみ主演・舞台『剥愛』囲み取材・ゲネプロレポート

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劇団「ロ字ック」4年ぶり新作公演!さとうほなみ主演・舞台『剥愛』囲み取材・ゲネプロレポート

2023年11月10日に東京・シアタートラムで舞台『剥愛』が開幕した。舞台演出家・映画監督・脚本家の山田佳奈が主宰する劇団「ロ字ック」の4年ぶり新作公演となる本作。初日前にはメディア向け囲み取材とゲネプロが行われ、主宰で演出・脚本を務める山田、主演のさとうほなみをはじめ出演する⑥名のキャストが登壇し、初日を迎えての心境や意気込みを語った。

本作の舞台は田舎にある剥製師の工房。剥製師とは動物の皮を剥ぎ、鞣して縫製し、仕上げに着色を施し、生きていた頃の姿にまで復元する。50年ほど前には盛んだった剥製業界も現在は需要も減っていた。剥製師を父(吉見一豊)に持つ菜月(さとう)は離婚をすると実家に戻っていた。そこにある男(山中聡)がやってきて雇われるのだが・・・。家族愛のゆがみ、欲望、人の過ちが描かれていく。

主役の菜月役には、人気バンド「ゲスの極み乙女」でドラムを担当し、女優としても活躍するさとうほなみ(「ゲスの極み乙女」などアーティスト業では“ほな・いこか”名義)。過去の業を背負いながら、現代の悩みに向かい葛藤する女性を演じている。

ゲネプロ前の囲み取材でさとうは「メディアに囲まれるこの時間が一番緊張する!」と照れながらも「本当に素敵な作品に出会えたという気持ちでいっぱいです。早く皆さんに観ていただきたいです」と初日を迎えての心境を語った。

劇団「ロ字ック」4年ぶり新作公演!さとうほなみ主演・舞台『剥愛』囲み取材・ゲネプロレポート

今作は剥製の工房が舞台だが、実はさとうはファーなども触れないくらいに剥製が苦手。しかし今回の舞台のために剥製工房に見学に行って可愛さに気がついたそうだ。剥製の表情も柔らかく、今回の舞台美術で借りている剥製の中ではタヌキがお気に入りだと笑顔を見せた。吉見も剥製を作る過程を見学し、年を召した剥製師が完成した時に凄く良い笑顔を見せたことに感銘を受けたことを話す。

山田は剥製師たちの意義や精神性が垣間見えることで、安易に剥製が苦手とも言えなくなると語る。剥製師は全国でも少なくなっている中で“新しい命を吹き込む”という作業に尊さを感じたようだ。

劇団「ロ字ック」4年ぶり新作公演!さとうほなみ主演・舞台『剥愛』囲み取材・ゲネプロレポート

稽古中の様子を問われると岩男海史から「おばあさんの幽霊を見た」と仰天エピソード。女性出演者たちが「え! やだやだ!!」と怖がる中、「暗転の中で出演者がすれ違ったりするんですけど、90歳くらいのおばあさんがゆっくり、ゆっくり歩いてて・・・」と岩男が話すも「それ、さとうほなみじゃない?(笑)」と途中で幽霊の正体が暗転中慎重に歩くさとうの姿(しかも本来とは別の方向に歩いてしまっていたようだ)だとばれて会場は笑いに包まれていた。

劇団「ロ字ック」4年ぶり新作公演!さとうほなみ主演・舞台『剥愛』囲み取材・ゲネプロレポート

アーティストとしても活躍するさとうは共演者から“ロックなイメージ”を持たれていたが瀬戸さおりは「大胆さの中にも繊細な部分があり、それをうまく表現されているので注目してほしい」とさとうをアピール。劇中では複雑な心境を抱えた姉妹を演じる二人だが“愛してやまないもの”という質問にさとうは「私の愛してやまないものは瀬戸さおりです!」と劇中とは違う仲の良さが伝わってきた。

山田はさとうにラストシーンの演出をつけていた時「剥製の工房がモチーフだから剥製の力を借りて最後の演出を達成してくださいとお伝えしたら、一瞬にして目がグーっと動いたんです。その時に彼女の中で稽古中積み上げられてきた菜月という役が動いたんだな感動しました」と印象的なエピソードを披露。しかし「おばあちゃんの話より面白くなかったな」と反省(?)をしていた。

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息子の親権を旦那に取られ離婚調停中で再就職を探しながら実家に帰ってきた女性。家を出ずに実家の職業を手伝い家事を行う女性。時代に取り残されつつある職業を続ける男性。過去を持った男性。障害を持っている男性。周囲に変人だと言われている女性。本作の登場人物たちは皆寂しさと抱えている。時には家族ゆえの口喧嘩もあったり、閉塞感を感じる部分もあるが彼らの普通の日常が描かれる。

実家に帰ることで過去への後悔に襲われたり、離婚調停や就活の現実の問題に直面したりしながらも生きていく菜月を、さとうは誠実に演じていた。また実力ある俳優たちが脇を支えることで重いテーマが描かれているが、どこか登場人物たちに親しみが生まれバランスがとられている。

劇団「ロ字ック」4年ぶり新作公演!さとうほなみ主演・舞台『剥愛』囲み取材・ゲネプロレポート

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剥製は死んだ動物を再度生きていた頃の姿にまで復元をする。作成途中には表面的に美しい皮だけではなく、内臓などグロテスクな部分も処理なければならない。人間も表面上は綺麗に見えても、心の中には過去の過ちへの後悔や妬みや欲望などどろどろとしたものを抱えている。過去は消えないが、前を向くことで新しいことが生まれるかもしれない。そんな希望を感じる作品だ。

舞台『剥愛』は11月19日(日)まで東京・シアタートラムで上演。11月22日(水)からは愛知・穂の国とよはし芸術劇場 PLAT アートスペースで、11月25日(土)からは大阪・扇町ミュージアムキューブCUBE01で上演。上演時間は2時間5分を予定している。

劇団「ロ字ック」4年ぶり新作公演!さとうほなみ主演・舞台『剥愛』囲み取材・ゲネプロレポート

(取材・文・撮影:一本柳歌織)

目次

舞台『剥愛』公演情報

スケジュール

【東京公演】2023年11月10日(金)~11月19日(日)シアタートラム
【愛知公演】2023年11月22日(水)~11月23日(木・祝)穂の国とよはし芸術劇場 PLAT アートスペース
【大阪公演】2023年11月25日(土)~11月26日(日)扇町ミュージアムキューブCUBE01

スタッフ・キャスト

【脚本・演出】山田佳奈

【出演】さとうほなみ、瀬戸さおり、山中聡、岩男海史、柿丸美智恵、吉見一豊

【公式サイト】http://www.roji649.com/hakuai/

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