2022年夏に東京都内3劇場で連続上演するミュージカル『ダブル・トラブル』が、7月28日（木）に開幕した。本作は、ボブ・ウォルトンとジム・ウォルトンという作詞家と作曲家の兄弟が、チャンスを掴むためハリウッドで奮闘する姿を描いたミュージカルコメディ。昨年も上演され、今年は3シーズン制でパワーアップ上演する。初日前には、トップバッターを務める浜中文一、相葉裕樹をはじめ、全シーズンの出演者が勢ぞろいした。
2021年にはダブルチーム編成かつ異なる劇場で同時期に上演する、という試みを行った本作。2022年の夏は、「～2022夏 Season A～」「～2022夏 Season B～」「～2022夏 Season C～」と3シーズンに分け、さらにオルタナティブシアター・有楽町よみうりホール・自由劇場の3つの劇場を渡り歩く。
「～2022夏 Season A～」には、初日に登場した浜中と相葉のほか、日野真一郎（LE VELVETS）、横山賀三が出演し、回替わりの組み合わせで上演。「～2022夏 Season B～」には林翔太と寺西拓人が登場。「～2022夏 Season C～」に林・寺西に加え、原田優一、太田基裕が参加する。原田・太田は昨年の公演にも出演しており、続投となった。
翻訳・訳詞は高橋亜子、演出はウォーリー木下、音楽監督は落合崇史と大塚茜、振付はTETSUHARU、タップ振付は本間憲一。ピアノ演奏は栗山梢・小林創・篠塚祐伴・中西司・中原裕章が回替わりで担当する。
物語の舞台は、とあるリハーサルスタジオのバンガロー。そこへ、作曲家の兄ジミー（A：相葉＆日野／B・C：林／C：原田）と、作詞家の弟ボビー（A：浜中＆横山／B・C：寺西／C：太田）が意気揚々とやってくる。彼らは、ミュージカル映画の曲を書くことで、大ブレイクのチャンスを掴むという大きな夢を抱いていた。
しかし、曲作りのために社長ガーナーから与えられた時間はたったの数時間。しかも、楽曲を気に入ってもらえなければ即クビだという。協力して楽曲制作に取り組む兄弟だったが、そこへ社長秘書のミリー、年老いた音響技師のビックス、インターンのシーモア、エージェントのクイックリー、セクシーな映画スターのレベッカなど、個性的な人物たちが次々と訪れる。
訪問者たちに振り回されながら、時に協力し、時に喧嘩をしながら、仕事に恋にと奔走するマーティン兄弟。果たして、2人はハリウッドで成功を収めることができるのか･･･?!
お気づきだろうか。演奏はピアノのみ、出演者は2人だけなのに、やたらと登場人物が多い。そう、出演者の2人はジミー兄弟を演じながら、次から次へと現れる登場人物およそ10人を、たった2人で演じきるのだ。
開演前には、その回に出演するキャストたちが素の状態で登場。ゲネプロは初日の浜中・相葉の組み合わせで行われ、2人による前説が繰り広げられた。相葉が「僕、文ちゃんの笑いの提供の仕方が好きで、本番中も微笑んじゃうんです。嬉しくなって、笑いがこらえきれない（笑）」と言うと、浜中も「僕も同じ。相葉裕樹に恋してるぐらい、嬉しくなっちゃう」と相思相愛の様子。いいコンビの予感がする。
物語の中でも、2人は常に全力投球。ジミー兄弟として歌って踊りながら、個性の強い登場人物たちに次から次へと姿を変えて劇場のあちこちから姿を現す。時に起こるハプニングも、即座に芝居の中に取り入れていく。前説での宣言通り（？）、本人たちが互いの芝居に思わず笑みをこぼす瞬間も見られ、その姿に思わずこちらも笑顔になる。良い緊張感の中、舞台上と客席が相互作用し、日々変化していくライブ感を楽しめる作品に仕上がっていた。
ゲネプロ終了後の取材会には、全シーズンの出演者が登壇。SeasonAの浜中は「ゲネプロって、どの舞台でも一回自信を無くすんですよ。でも、今回は意外といけました。その日のお客さん（の反応）によって変わっていきそうです」と手応えを感じたようだ。一方、SeasonAの相葉は「自信の持てる箇所と持てない箇所がはっきりと分かれました（笑）」と苦笑い。
そんな2人を見て、同じくSeasonAの日野は「グランドミュージカルとはまた違い、お客様との距離も近いし、演奏もピアノ1本だし、役者として丸裸にされる舞台、歌も台詞もごまかしがきかない舞台なので、今すごくドキドキしています。お2人が絶対にすごくいいスタートを切ってくださるので、その気持ちを引き継いで明日に活かしたいです」と心境を明かしながら、「こういったミュージカルが、もっと日本に入ってきてくれたらいいですよね」と語った。
最年少ながら劇団四季の『ライオンキング』でヤングシンバ役を演じた経験などを持つ横山は「怒涛の稽古1ヶ月でした。僕は二人芝居も初めてですし、初挑戦のことが多く不安な気持ちが大きい中で、あたたかく見守ってくださる皆さんに助けて頂きながら、勉強させていただきながら、励んできました。僕の本番は、皆さんとは少し遅れて始まりますが、さらに盛り上げられるようにがんばります」と、フレッシュに意気込んでいた。
SeasonB（Cにも出演）は、8月16日（火）のスタートに向けて稽古の真っ最中。寺西は、SeasonAにエールを送りながら「僕たちは、SeasonAの皆さんを見てから稽古に入るというスタイルだったので、皆さんの癖の強さに引っ張られないようにするという作業が発生しているのですが、それがまた楽しくて。どのSeasonも、誰一人欠けることなく走り抜けられたらいいなと思っています」と自分たちの状況を言葉に。
林は「この作品、昨年拝見させていただいていたんですが、まさか自分がやることになるとは思っていなくて、お話をいただいた時はびっくりしたのと同時に、自分に出来るかな･･･という不安がよぎりました。映像でも原田さんと太田さんの回をいっぱい観たので、自分のやらなければいけないことは頭に入っている状態で稽古に入りました。通し稽古をしたら、また新たな課題が見つかるのかなと」とコメント。
原田と太田とはこの取材会で初めて対面したようで、「僕にとっての師匠。今日やっとお会いできました」と林が喜ぶと、2人はジェスチャーで恐縮しきりだった。SeasonCは、9月5日（月）から始まる。
顔ぶれを見て「僕も10年ぶりぐらいにイケメン枠に入ったんだなと！」と喜ぶ原田は、「僕らは初演メンバーだったので、目指すスタイルやゴールが分からなかったんです。演出のウォーリー木下さんが稽古場でゲラゲラ笑ってくれたことを劇場でやったらシーン！と静まり返ったり。その時は『ウォーリーこのヤロウ！笑ってくれたじゃないかよ！』と思ったりしましたね（笑）。そんな感じで、初演はお客様と一緒に作れた感覚があったので、今回も新たな気持ちでできたらと思います。今日のゲネプロをもっくん（太田）と2人で裏で聞いていたんですが、台詞が全然思い出せませんでしたので！その点も、新たな気持ちでやりたいと思います」と初演を振り返った。
勢いよくしゃべる原田に「しゃべりすぎです、まだ稽古にも入っていないのに（笑）」としっかりツッコみながら太田は「昨年の稽古を思い出すと、相当しんどかったはずなんですけど、わりとどの舞台もそうなんですが、いい思い出しか残らないんです。だからまた（オファーを）受けちゃったんですけど（笑）。今、久しぶりこの舞台セットの中に立ってみると、お客さんとのセッションが思い出されてちょっとエモい気持ちになります」と胸を熱くしている様子。
使用されているセットは昨年のものそのままのようで、床などには傷や擦れなども見られる。それを見て原田が「僕らの血と涙と努力の結晶がここに。このまま皆さんにも刻んでいってほしいですね！」とアピールし、太田が「本当によくしゃべりますね！」と再びしっかりツッコんでいた。台詞は忘れたと言っても、昨年から続く名コンビぶりは健在だ。
出演者たちは、同時に複数の役を演じ分けるが、SeasonAの相葉は浜中が演じるミリーが気に入っているという。「アハ～ッ！って言う独特の笑い方が稽古場で生まれたんですが、そこは僕の大好きなポイントです。女性として好きかどうかは別として（笑）」と言う相葉に続き、SeasonB・Cの林も「寺もミリーがすごく似合うんですよ。僕は見てるだけで好きになっちゃう」と告白。寺西は「えっ、好み･･･大丈夫ですか？」と心配していた。
なお、二幕の冒頭シーンは、主人公の兄弟2人ではなくまったく違う人物たちの、本編とはまったく関係のない場面から始まる。そういった斬新さも、本作のおもしろさの一つになっている。
そして、SeasonCの原田からは「さっき、日野さんが役者として丸裸にされる気持ちになるとおっしゃっていましたが、裏では我々、本当に丸裸です。裏がどんな状態になっているのか、それも想像しながら観てみてください（笑）。ウィッグがかぶりきれていない不完全さなども、人間らしいと共感していただけるかも。役者が必死に芝居をやっているけれど、100％ではないツッコみどころも醍醐味かもしれません」と壮絶な舞台裏を匂わせるエピソードも飛び出した。
そして、太田が「個性的な登場人物ばかりでみんな推しになったんですが、お客さんもそれぞれにお気に入りを見つけて、観劇後に語り合ってもらえたら嬉しいです」と、原田も「初演の時、初日と千秋楽で全然違うキャラクターになっていた登場人物もいました。お客さんに育てられて変わっていくんですね。なので、最初の方にご覧いただいた皆さんは、最後の方も観に来ていただけたらいいと思います！」と付け加え、しっかりとアピールしていた。
劇場を変え、キャストを変え、組み合わせをながら、3シーズン制で約1ヶ月半続くこの公演。それぞれのペアが、どう作品を練り上げていくのか、どう色が違うのか、“役者の個性”を存分に楽しめる公演になりそうだ。体調に気をつけ、トラブルなく劇場に足を運べば、必死に汗をかく役者たちが存分に笑わせてくれる。そして、生のエンターテインメントの強さを感じさせてくれるだろう。
ミュージカル『ダブル・トラブル』～2022 夏 SeasonA～は、7月28日（木）から8月14日（日）まで東京・オルタナティブシアター、～2022 夏 Season B～は8月16日（火）から8月30日（火）まで東京・有楽町よみうりホール、～2022 夏 Season C～は9月5日（月）から9月13日（火）まで東京・自由劇場にて上演。上演時間は約2時間30分（休憩あり）を予定。
（取材・文・撮影／エンタステージ編集部 1号）
ミュージカル『ダブル・トラブル』～2022 夏 SeasonA～（A Musical Tour de Farce）
上演スケジュール
7月28日（木）～8月14日（日） オルタナティブシアター
スタッフ・キャスト
【脚本・作詞・作曲】ボブ・ウォルトン＆ジム・ウォルトン
【翻訳・訳詞】高橋亜子
【演出】ウォーリー木下
【音楽監督】落合崇史／大塚茜
【振付】TETSUHARU
【タップ振付】本間憲一
【出演】浜中文一 相葉裕樹 日野真一郎（LE VELVETS） 横山賀三
ミュージカル『ダブル・トラブル』～2022 夏 Season B～（A Musical Tour de Farce）
上演スケジュール
8月16日（火）～8月30日（火） 有楽町よみうりホール
スタッフ・キャスト
【脚本・作詞・作曲】ボブ・ウォルトン＆ジム・ウォルトン
【翻訳・訳詞】高橋亜子
【演出】ウォーリー木下
【音楽監督】落合崇史／大塚茜
【振付】TETSUHARU
【タップ振付】本間憲一
【出演】林翔太 寺西拓人
ミュージカル『ダブル・トラブル』～2022 夏 Season C～（A Musical Tour de Farce）
上演スケジュール
9月5日（月）～9月13日（火） 自由劇場
スタッフ・キャスト
【脚本・作詞・作曲】ボブ・ウォルトン＆ジム・ウォルトン
【翻訳・訳詞】高橋亜子
【演出】ウォーリー木下
【音楽監督】落合崇史／大塚茜
【振付】TETSUHARU
【タップ振付】本間憲一
【出演】
林翔太 寺西拓人／原田優一 太田基裕
【公演サイト】https://www.musical-wtrouble.jp/
【公演Twitter】＠wtroublejp
