『RENT』開幕!花村想太、平間壮一、堂珍嘉邦、甲斐翔真らがもどかしい想いをぶつける2020年版


2020年11月2日(月)に東京・シアタークリエにてミュージカル『RENT』が開幕した。本作は、プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』をベースに、舞台を20世紀末のニューヨークに置き換え、当時の若者達の行き方や世相を映しながら“今を生きる”姿をリアルに描いた作品。初日前には、2020年版の出演者より花村想太と平間壮一、堂珍嘉邦と甲斐翔真、遥海と八木アリサが登壇した。

日本でも、繰り返し上演されている本作。今回は、2017年以来約3年ぶりの上演となり、オーディションにより多くのキャストを一新した。さらに、稽古はリモートで行われるという、これまでにない形で創作された。

そんな2020年の『RENT』でストーリーテラー的役割を果たす映像作家のマーク役を演じるのは、5人組ダンス&ボーカルグループ「Da-iCE」の花村と平間(Wキャスト)。花村はこれが初ミュージカル、平間は二度演じたエンジェル役からの役替わりとなる。

花村は、Wキャストの自身の初日に向けて「ステージに立つことができるのか、不安や時間との戦いの日々でしたが、今できる最善、最高のものができたのではないかなと、今からワクワクしています」と心境を語った。

ミュージカルは初挑戦となるが、「(ミュージカル作品の)稽古のやり方などが分からず、僕にとっての“普通”がない状態でスタートさせていただいたのですが、自分にとってすごく成長させていただける機会になったと思います。平間さんや堂珍さんといった経験している方が『RENT』の世界観を僕ら初めてのキャストにもしっかりと伝えてくださったので、あまり不安を感じることもなかったです」と、“レントファミリー”に支えられて充実した稽古を積んできたようだ。

役が代わっての出演となる平間は、「アンディ(日本版リステージを担当するアンディ・セニョールJr.)、マーカス(振付補のマーカス・ポール・ジェームズ)と、初めてネットを通して稽古してきました。大変なこともたくさんあったけど、あとは本番をやるだけでです。客席にお客様も100%入っていただけるということで、すごく嬉しいですし、1公演、1公演を大切にしていきたいなと思います」と開幕への期待を口にした。

2015年、2017年に続き、3度目のロジャー役となる堂珍は、「この『RENT』という作品の持つメッセージを、どこまで届けられるか。無事に完走して、たくさんの方に観ていただくことを目標にここまでやってきたので、あとはしっかりとみんなでやっていきたいと思います」と意気込む。

新キャストとして、同じくロジャー役を務める甲斐は、リモート稽古が始まった序盤に、アンディ・セニョールJr.から言われた「君たちの潜在能力を引き出し、限界を突破したいんだ。僕はそこに興味がある。でも、それはとても苦しくて気持ちの悪い作業だから覚悟して。その代わり、先にあるものはとても素晴らしいものだから僕を信じてほしい」という言葉が印象的だったと挙げた。

そして、「その言葉どおり、本当に苦しい稽古期間をそれぞれに問題を悩んで悩んで初日を迎えます。悩みなどを“演じる”ということではなく、本当に悩みながら作り上げました。それ故に、通しを観た時に“リアル”ってこういうことだと、作品に血が流れることを目の当たりにした時に、早くお客様に観ていただいて、この時代だからこそ汲み取れるメッセージを受け取って、お一人お一人に“答え”を見つけてもらえたら嬉しいです。初日楽しみです」と赤裸々な思いを吐露。

シンガーソングライターでもある遥海は、ミミ役で初ミュージカルへ。演技をするのは初めてなので悩んだそうだが、「皆さんからたくさんアドバイスをして頂きましたし、スタッフの皆さんにもパワーを頂きました。最後、自分はどうなってもいいや!と思うくらい、すべてをかけます(笑)。私たちが壁にぶつかりながら作り上げた『RENT』の世界観を、皆さんにしっかりお届けできるよう、精一杯がんばっていきたいです。楽しみです。そして、楽しみにしていてください」と笑顔を見せた。

モデル・女優として活躍する八木も、同じくミミ役で初舞台・初ミュージカル挑戦。「無事に作品をお届けできそうで、とても楽しみです」と開幕を喜びながら、「今まで声を出して一緒に楽しめていた場面が、以前のようにはできないんですが、代わりに“Moo Mooボード”とか、音を出せるもので新しい楽しみ方をしていただけるんじゃないかなと。SNSなどで皆さんの感想を見るのが楽しみなので、毎日全力でがんばっていきたいと思っています」と楽しむ気合十分。

『RENT』では、1幕の「Over The Moon」で客席から歓声を上げる場面があったが、2020年版は発声を控えなければならない。なので、気持ちは「拍手」や音で届けよう。「Moo Mooボード」は公演グッズの一つ(レインボーカラーの面には『RENT』ロゴ、白い面には「Moooooo!!」という文字が書かれたボード)。じゃばらに折って打ち鳴らしたり、胸の前に掲げたりして、該当曲の部分で使用することができる。

新しい生活様式にのっとって、気をつけて行動しなければならない今。稽古場でも、細かなルールを設けて、予防に取り組んできたようだ。「本当はもっと会話をしたかった」「もっとコミュニケーションを取りたかった」・・・そんなもどかしい稽古の中で、平間は「より“レントファミリー”への愛おしさが湧いてきました。必死に我慢して、溜め込んできた分、本番で爆発できるんじゃないかなと思います」と、逆境をパワーに変えていきたいと語った。

異質な稽古の中でも、堂珍は「僕らは役を与えられているんですが、役と自分の人間性や発する雰囲気、そういったものがうまく役と溶け合うことが、この『RENT』の面白いところだと思っています。(今回の稽古でも)夢や悩み、そういう“カミングアウト”をしながら、みんな、どんどんと『RENT』にのめり込んでいったように感じました」と個々のキャストの変化を感じていったようだ。

甲斐も「本当にたくさんの方々からの支えがあり、まさかの“電波”でミュージカルを作り上げる快挙を成し遂げました(笑)。2020年版の『RENT』は面白い!って言えると思います。2020年の『RENT』は、これから先もできないんじゃないかと。毎回そうかもしれないけれど、僕ら胸を張っていたいです」と手応えを語った。

最後に、花村は「僕は、人に弱みを見せることがすごく苦手で、我が道をいく一匹狼タイプの考え方をしてきたんですが、“レントファミリー”は不思議とその扉をこじ開けてくださいました。みんなと心を開いて作り上げた、僕にとって本物の『RENT』をお届けできるんじゃないかと思っております。なので、いつも応援してくださっている方にも、僕やほかのキャストさんを知らない方にも、そして、『RENT』を大好きな“あなた”にも絶対に刺さるものになったと思うので、足を運んでいただけたら嬉しいです」と挨拶。

平間も「稽古中にプロデューサーさんから『平間のマークはRENTを通じて何を伝えたいの?』と聞かれたことがあって。その時は明確なものがすぐに出てこなくて、ずっと考え続けていくと答えていたんですが、場当たりを見ている時にふと『あ、俺はこれを伝えたい』ということが見つかりました。稽古中は、仲間がいるから強く生きていけるんだとふんわりと思っていたんですけど、『違う、個々の生きるパワーが必要なんだ』と気づいたんです」

「1人1人の強さを出すためには、遠くに離れていようが、姿が見えていなかろうが、信じるべきものが芯にあるから、1人でも強く生きていけるんだ。そういうことを、僕はこの『RENT』を通して伝えたいなと思いました。ソーシャルディスタンスを取り人との距離が開いてしまう、心が離れてしまう人もいる、通じ合えないことが多い中で、自分は何を信じるか。それを大事に生きていけば、人間というものが強くなっていくんじゃないかな。そういうことを伝えていきたいです。なので、お時間があれば見に来てください。がんばります。よろしくお願いします」とメッセージを送った。

このほか、コリンズ役として加藤潤一と光永泰一朗、エンジェル役としてRIOSKE(COLOR CREATION)と上口耕平、モーリーン役としてフランク莉奈と鈴木瑛美子、ジョアンヌ役として宮本美季、ベニー役としてSUNHEEと吉田広大(それぞれWキャスト)、ICHI、コリ伽路、奈良木浚赫、小熊綸、吉田華奈、吉原シュートが出演。

公開ゲネプロは、「平間・甲斐・遥海・加藤・RIOSKE・鈴木」、「花村・堂珍・八木・光永・上口・フランク」の2パターンで行われた。新顔が多く加わり、新鮮な血が通う今回の『RENT』。花村・平間は共にいい意味でフラットだ。物語の中で生まれるマークの変化と、ミュージカル初挑戦で生じるであろう花村の変化、役が変わり経験を重ねたことで見えてくる平間の変化。この変化の行く先が、とても楽しみだ。

ロジャーについては、安定した堂珍のほか、甲斐が加わったことで新たな“理想”が生まれたように思う。ミミ、エンジェル、モーリーンとWキャストのどちらも新キャストの役も、それぞれが稽古の中で個性を模索してきた様子が見える。その個性が、公演を通してどう確立していくのか。

そして、出演発表後にベニー役となった吉田のスモーキーな歌声が、役と作品のよいアクセントになっているように感じた(吉田は、11月20日(金)以降はミスター・ジェファーソン役での出演を予定している)。

予期せぬことが起こり、この先どうなるか分からない・・・そんな漠然とした不安を、世界中の人が感じている今。それでも、私たちは生きなければならない。
「過去もない、未来もない。今日という日を精一杯生きる――」
刻々と変わる時代の中で、直面する問題は違っても、作品が訴えかける力強いメッセージが私たちの心を揺さぶる。

この作品が、無事に最後の幕を下ろすことができたら、それは2020年の終わりが近いということ。この1年、525,600分のこの時を自分はどう生きただろうか?ままならぬ時代を抱きしめる、そんな2020年版の『RENT』が産声をあげた。

ミュージカル『RENT』東京公演は12月6日(日)までシアタークリエにて。その後、12月11日(金)・12月12日(土)に愛知県芸術劇場にて愛知公演を予定。上演時間は第1幕1時間20分、休憩30分、第2幕1時間の計2時間50分(予定)。

公演情報

ミュージカル『RENT』
【東京公演】2020年11月2日(月)~12月6日(日) シアタークリエ
【愛知公演】2020年12月11日(金)・12月12日(土) 愛知県芸術劇場

【出演】
マーク:花村想太(Da-iCE)/平間壮一
ロジャー:堂珍嘉邦(CHEMISTRY)/甲斐翔真
ミミ:遥海/八木アリサ
コリンズ:加藤潤一/光永泰一朗
エンジェル:RIOSKE(COLOR CREATION)/上口耕平
モーリーン:フランク莉奈/鈴木瑛美子
ジョアンヌ:宮本美季
ベニー:SUNHEE/吉田広大
ICHI、コリ伽路、奈良木浚赫、小熊綸、吉田華奈、吉原シュート

【公式サイト】https://www.tohostage.com/rent2020/
【公式Twitter】@RENT_TOHO
【チケット販売】https://enterstage.jp/database/2020/11/4869.html

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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