「これが今の梅棒100%!」野田裕貴×多和田任益『シン・クロス ジンジャー ハリケーン』インタビュー


2022年11月18日(金)より上演される、梅棒第15回本公演『シン・クロス ジンジャー ハリケーン』。本作は、梅棒の20周年を締めくくる公演であり、多和田任益を加えてから初のメンバーだけで行う公演でもある。

選んだのは、7年前に上演した梅棒 4th PLAY『クロス ジンジャー ハリケーン』の再演。再演といっても、ただ再演するのではないのが梅棒だ。今回、どんな想いで公演を作ってきたのか、本作の中で“濃い”関係性を演じる野田裕貴多和田任益に話を聞いた。

久しぶりにメンバーだけでやる公演だからか、新陳代謝が早い!

――梅棒さんにとって、久しぶりのメンバーだけの公演になりますね。今回のお稽古は、どうでしたか?

野田:梅棒って、まずは一度通してみてからどんどんブラッシュアップしていくんですが、今回はやっていて、新陳代謝が早いなと・・・。メンバーだけだからなのか、「ここはもっとこうした方がいいね」といった意見が出るのがすごく早くて。すごい勢いで、どんどん良い方に作り直すことを繰り返してきた感じです。今回、タイトルにも“シン”という言葉をつけたので、多分メンバー誰もが「本当にいいものにしたい」「今やる意味のある公演にしたい」と思っているんじゃないかと。そんなことを日々感じてきました。

――多和田さんは、加入してから初めてのメンバーオンリー公演になりますね。今人さんのブログに、今回多和田さんが結構仕切っていると書かれているのを拝見しました。

多和田:仕切っているというか、単純に担当するコマが少し増えたので、今人さんはそう感じたんだと思うんですけど(笑)。僕は『ラブ・ミー・ドゥー!!』から加入させてもらって、『風桶』『おどんろ』と経験させてもらったんですけど、少し、稽古中に感じることが変わってきた気がしています。

「梅棒が大好き」「梅棒をもっとたくさんの人に知ってもらいたい」っていう根っこの部分は変わってないんですよ。その上で、「もっとできることがあるな」とか、「自分はこう思う」ってことが増えたというか。多分、“自分”の意見が少しずつ前に出せるようになってきているのかなって思います。

加入したばかりの頃は、まだよく分かってないかもしれないからそんなに意見を言わない方がいいかなと思っていたんですけど、最近は「僕はこう思います」みたいなことが言えるようになってきたし、先輩たちもそれをちゃんと聞いてくれている実感があります。

梅棒への熱い想いが「梅棒の頭脳の一つとして、団体をより活性化させてくれている」

――着実に「梅棒の多和田さん」になっていかれていますね。

多和田:いろんなタイミングで「メンバーになったんだな」と感じてきたんですけど。例えば、加入して1発目の『ラブ・ミー・ドゥー!!』で、梅棒名物でもある「梅棒ユニゾン」をオープニングで踊った時とか。今回のメンバーだけの公演を経験することが、自分の中で「メンバーになったんだな」と噛みしめる最終確認になるんだろうなって思っています。そういう気配を、稽古の中でも感じています。

――野田さんは、側で見ていて、梅棒メンバーとしての多和田さんの成長はどう感じていらっしゃいますか?

野田:元々人柄も知っていましたから、何も心配することはなく。 今回、担当してる振付の曲数もなんだかんだ今までで一番多いかもしれないです。メンバーの中でも「こういうところはたわちゃん(多和田の愛称)得意そうだな」って振ったりと、たわちゃんのポジションがみんなの中に共有されていってる感じもします。何かあった時にしっかり意見を言ってくれているのを見ると、「・・・すごくメンバーだなぁ、梅棒だなぁ」って感じます。

多和田:すごい笑ってるけど、ほんと(笑)?

野田:あはは、ほんとほんと(笑)。

多和田:もともとすいーつさん(野田の愛称)とは、加入する前から仲良くしていただいていて、お互い甘いものが好きで話したり、年齢も(梅棒の中で)一番近いこともあってプライベートでよく遊んだりしていたんですけど、ほかの先輩方に受け入れてもらうにはどうしたらいいだろう?って考えたんですよ。加入したタイミングがコロナ禍だったので、皆さんとごはんに行ったり、打ち上げをしたりもできなくて。そういう機会って、「あの先輩はこういうことを思っているんだ」とか、相手を知る大事な時間じゃないですか。環境として充分ではないスタートだったから、稽古や本番の中で、自分を出していかないとダメだなと・・・。

加入はゴールじゃない。もちろん、加入を認めていただけた段階で受け入れてもらえてはいるんですけど、ちゃんと僕を知ってもらわなきゃいけない。先輩方はそんな意識はしてなかったと思うんですけど(笑)。僕は結構そういうの敏感なので、「前より笑ってくれるようになったな」とか、「挨拶がフランクになったな」とか感じて、地味に嬉しくなったりしています。

――多和田さんは、梅棒さんにとって野田さん以来の加入メンバーになりますよね?

野田:そうなんです。たわちゃんが入るまでは僕が最年少で。5年空いて、やっと新たに入ってきてくれた大事なメンバーです。改めて考えるとすごいね。僕、割と人見知りなので・・・仕事のことはしゃべるけど、ちょっと距離があるみたいな状態が続いていて、馴染むまで時間かかったんだよ。つるさん(鶴野輝一)とか、仲良くなるまで2年ぐらいかかった気がする(笑)。たわちゃんは、元々の人柄もあるし、「梅棒が大好き!」って言ってくれているから、自然と周りからも愛されるんだろうな。

多和田:最初は、先輩方にも「ファンが入った」みたいな感じに思われてるところもあったと思うんです。ファンの方も5年ぶりの新メンバーっていったら「何者じゃい!」って驚いたと思うし。でも、最初から「梅棒が大好き」ってことあるごとに言ってたから、その想いはちゃんと伝わっていて、重要なことだったのかなって思います。

野田:その想いはひしひし感じるよ。他のメンバーも感じてると思う。好きゆえに思うところがあったら「こうした方がいいんじゃないか」って言ってくれたり、僕らとは違う角度からの意見が出てきたりもするので。梅棒の頭脳の一つとして、団体をより活性化させてくれているなと感じています。

――梅棒さんが振付で入られている公演を見ると、梅棒の「誰」が振付をしているのか、個性が見える瞬間があるんですが、そこにこれからは多和田さんの色も加わっていきそうですね。

多和田:分かります!中に入ってみて、なお思いますもん。やっぱり、みんな個性や癖があって、得意なジャンルもあったりするから。その上で、みんなお互い尊重しあって、尊敬しあっているんだなって感じます。

今回の作品も、序盤で1曲、僕が振り付けた曲の時に、今人さん(伊藤今人)が「ははっ、多和田っぽい!」って言ってくれた瞬間があったんです。今人さんは、梅棒の総合演出として真ん中に立って作品を見てくださっているので、その今人さんがそう感じてくださったってことは、ちゃんと意味のある年月の過ごし方ができているのかなって、思えたことがあったんです。

――今回のメンバーオンリー公演では、今までの梅棒さんに感じなかったものが、きっと多和田さんの要素なんでしょうね。

多和田:確かに!長年、梅棒を観て来られた方ほど、それを感じてもらえるかもしれないですね。

「僕らなりのアニバーサリーであり、大きな挑戦」

――多和田さんは、梅棒さんのメンバーオンリー公演『OFF THE WALL』をご覧になったのが、加入を希望する決定打になったんですよね?

多和田:そうなんです。僕が初めて梅棒を生で見たのは2018年の『Shuttered Guy』だったんですけど、もう、忘れられなくて!「こんなエンタメあるんだ!自分も出たい!」って、衝撃的に思いました。2019年に『ウチの親父が最強』でゲスト出演させていただけたあとも、また出たいなあという思いが消えなくて。でも、ダンサーさんは結構おかわり(再出演)があるって聞いたんですけど、俳優はすぐにはまた呼ばれないって聞いていたので、どうしたらいいんだろう・・・と考えた結果、「メンバーになれば毎公演出れる!」という単純な想いが芽生えたんですよ。

でも、そんな軽い感じで入りたいなんて伝えるのは失礼だし、だからってゲスト枠で何度も出たいとお願いして、他の俳優が梅棒を経験する機会を潰してはいけない・・・みたいな葛藤もあったりして。

そんな時に、メンバーだけでやる『OFF THE WALL』(2020年2月)があったんです。当時、本気で悩んでいて。「今、そういうタイミングなんだ!」って思ったんです。これを見て「お前のその気持ちは本物なのか?自分に問いただせ!」って言われているのかなって思って観に行って、今に至るので、めっちゃ想い入れがあって。

野田:終わった後、めっちゃくちゃ泣いてたよね(笑)。

多和田:めっちゃ泣いてました!不思議でした。溢れ出すってこういうことなんだって。当時はまだ面会がギリギリできる時期だったので、終演後に楽屋へ行って、メンバーの顔を観たらもっと泣きそうになっちゃって。今人さんに会った瞬間、もうこらえきれなくなってしまって、ぶわぁ~って泣いてたら、今人さんが「え、どうしたの・・・?多和田ってこんな子だったっけ・・・?」って、びっくりしてちょっと引いてたのをよく覚えています(笑)。

でも、妙な安心感もあったんです。うん、なんかすごい安心感もあったんですよ。自分の想いに偽りはないって。そのあとすぐに、一輝さん(天野一輝)と今人さんに、うちのマネージャー含めて物理的に相談しに行きました。

――野田さんたちにとっては、メンバーだけの公演ってどういう位置付けですか?

野田:としょさん(遠山晶司)と誠さん(遠藤誠)の復帰と自分が加入した時、10周年、15周年かつ20周年の締めくくりと、たまたまきりのいいタイミングでやってきたのもあって、僕らなりのアニバーサリーであり、大きな挑戦でもあります。いつも素敵なゲストの方々が客演として出てくださっているので、メンバーだけという重圧は年々増しているんですよね。

その一方で、他の公演では気づけないそれぞれの良さや、僕らだけでぎゅっと凝縮して作った時の過程で得られるもの、本番で感じるものも、やっぱり特別なものではあります。作っている途中は、より良くするために頭を悩ませる日々なんですけど、その分、今の僕らを皆さんにお披露目できるのがすごく楽しみです。

『シン・クロス ジンジャー ハリケーン』の「シン」のイメージは島×渋谷?

――今回上演される『シン・クロス ジンジャー ハリケーン』は、2015年、7年前に上演された『クロス ジンジャー ハリケーン』を新たに再構築したものと伺いました。この作品をまたやろうと決まったのは?

野田:『クロス ジンジャー ハリケーン』も、当時のメンバーだけでやった作品でした。このタイミングを逃すともうできないかもしれないなと思うぐらいフルスロットルな内容で。だからこそ、たわちゃんがメンバーに入ったこの新生梅棒でどういうことができるだろう?という可能性を示すためにも、この作品しかないんじゃないか、と再演を決めました。

梅棒って、再演といっても同じものをやることは少ないので、僕らなりに今やる意義なども込めて、それぞれのシーンを作っています。初演から7年経て、今の梅棒ができることをふんだんに盛り込んだ作品を皆さんにお届けしたい。そんな気持ちで選びました。

――ビジュアルから「野球」の話ということは分かりますが、初演を知らない方にどんな物語なのか、簡単に教えていただけますか?

野田:舞台は、とある島です。男ばかりのその島に、都会から一人の女性が訪ねてきたことで、男たちは色めきだちます。その女性を巡って、伝統の「島一周競争」が行われることになるんですけど・・・。ごたごたが絡まって、どう盛り上がっていくのか。ハートフルな全力コメディで、すごく梅棒らしい、楽しい作品になっていると思います。

多和田:イメージは島×渋谷みたいなイメージです。

野田:それだ(笑)!

多和田:なんか、そのイメージが「シン」っぽいなと、僕は思いました。いい意味で、今っぽくなったというか。初演のテイスト、良さは残しつつ。さっき、すいーつさんが言っていた「今やる意味」を、自分でやっていても感じます。特に、僕は初演の時にはいなかった人間なので、物語の中でどういう要素になっているのか、楽しみにしていてほしいです。

――皆さんの役どころは幕が開いてからのお楽しみですが、お二人の絡みはありますか?

多和田:すごく濃いです!濃さにもいろいろありますが、普通の濃さじゃないです(笑)。例えるならば・・・「深夜ドラマ」みたいな。そういう、ちょっとドロッとした感じの関係性です。

野田:「友達イェイ!」みたいなそういう役どころではないよ、ということを踏まえて観に来てください(笑)。人間関係のドラマの作り方も、梅棒としてだんだん進化してきていると思うんですけど、今回の公演ではまたちょっと新しい取り組み方、新たな要素が生まれているので、すごくやりがいを感じています。

――メンバーオンリーの公演ですが、一部日替わりゲストが参加されますよね。

野田:ゲストさんは出ていただくシーンを限定して出演していただく感じです。

多和田:たぶん、お客さん目線で作品に入っていってくれる存在、みたいな役割を担ってもらうことになると思います。

――小越勇輝さんは『おどんろ』、千葉涼平(W-inds.)さんは『ピカイチ!』で梅棒さんの公演にゲスト出演されていますが、高橋健介さんは初ですね?

野田:すごく素敵な方々が来てくださいます。過去の梅棒公演で主役を務めてくださったお二人(小越・千葉)と、『ワールドトリガー the Stage』でご縁があった高橋くんとね(ワーステの振付は天野さんと野田さんが担当)。

多和田:すいーつさんと一輝さんのイチオシですよね(笑)。

野田:高橋くんがいてくれたらおもしろいし、期待を裏切らないからね(笑)。

多和田:初参加だから、未知の広がり方をしそう!

野田:そう、未知への期待を込めて、ね。

多和田:日替わりゲストの方がいらっしゃる日は、より味付けの濃いものを味わっていただけると思います!しょうゆとポン酢とわさび、みたいな。

野田:誰が誰(笑)?

多和田:全部おすすめです(笑)!

「梅棒ってなんぞや?」であり、「これが今の梅棒!」

――(笑)。梅棒さんらしさを存分に味わえる、久しぶりのメンバーオンリー公演を楽しみにしております。

野田:「シン」をつけた再演に向けて、みんないろんな想いを込めて作っています。メンバーも年齢を重ねていますが、全力フルスロットルなことに変わりはなく、さらに更新していきます。絶対に元気になって帰っていただける自信があるので、楽しみに観に来ていただけたら嬉しいです!

多和田:メンバーだけの公演は、今の自分を生むきっかけにもなったこともあり、すごく特別な想い入れがあります。「梅棒を広めたい」というのも加入の一つの動機ですから、その使命を全うしたいという強い気持ちで取り組んでます。僕が感じたあの感動を僕も生み出したいと、やる気は満々です。客演さんを迎えての公演の中で、「ダンスと芝居」のバランスとか、たくさん学ばせていただきました。そういう気づきをくれた客演さんたちのエッセンスも加えて、関わってくださった皆さんありきの、現在の梅棒100%を込めた公演です。

梅棒の魅力って、観た方が誰かにおすすめしたくなるところだと思うんです。そういう公演って、そんなたくさんあるわけじゃないと思うので、「梅棒いいな」と思ったら、ぜひ周りの方に輪を広げてもらえたら嬉しいです。

20周年の集大成として、これを見たら「梅棒ってなんぞや?」が分かるし、「これが今の梅棒!」って感じてもらえると思います。同時に、真価が問われる瞬間でもあると思うので、お客さんにこれを経た梅棒の向かう先に期待してもらえるものにできたらいいなと思いますね。生で体感していただいてこそ梅棒!なので、観た方がみんな、この渦に巻き込まれたいなと思うぐらい、エネルギーを込めてやりきりたいと思います!

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

梅棒15th “RE”PLAY『シン・クロスジンジャーハリケーン』公演情報

上演スケジュール・チケット

【東京公演】2022年11月18日(金)~11月27日(日) サンシャイン劇場
【愛知公演】2022年12月3日(土)・12月4日(日) 名古屋市芸術創造センター/3ステージ
【大阪公演】2022年12月8日(木)~12月10日(土) COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール/5ステージ

【作・総合演出】伊藤今人(梅棒)
【振付・監修】梅棒

【出演】
伊藤今人 梅澤裕介 鶴野輝一 遠山晶司 塩野拓⽮
櫻井⻯彦 楢木和也 天野一輝、 野田裕貴、 多和田任益(以上、梅棒)

<日替わりゲスト(出演日順)>
11月20日(日)13:00/18:00 高橋健介
11月23日(水・祝)13:00/18:00 小越勇輝
11月24日(木)14:00/19:00 千葉涼平(w-inds.)

公式サイト

【公演特設サイト】http://umebou15th.dynamize.net/
【梅棒オフィシャルサイト】https://www.umebou.com/
【梅棒OFFICIAL FANCLUB『ひのまる弁当』』https://www.umebou.net/






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