ミュージカル『手紙』2022 インタビュー!村井良大×spi「同じ感覚で芝居ができる貴重な仲間」


2022年3月12日(土)より、東京・東京建物 Brillia HALLにて、ミュージカル『手紙』2022が上演される。東野圭吾の名作小説を原作に、2016年にミュージカル化された『手紙』。ブラッシュアップしながら再演し、海外でも公演が行われるなど、“日本発”のミュージカルとして繰り返し上演されてきた。

2022年版は、これまでと同じく藤田俊太郎の演出のもと、弟・直貴役に村井良大、兄・剛志役にspiが決定。2015年のミュージカル『RENT』以来の共演となる二人は、常に挑戦を続けながら、それぞれの役者の道を歩んできた。互いに「数少ない、同じ感覚を持つ役者」と語る二人に、作品のことからお互いのことまで、語ってもらった。

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

ミュージカル『手紙』2022 インタビュー!村井良大×spi「同じ感覚で芝居ができる貴重な仲間」

――ミュージカル『手紙』、2022年版として再再演を迎えますが、ご出演が決まった時のことを振り返っていただけますか?

村井:東野圭吾さんの原作小説は多くの方が知っている名作ですし、演出の藤田俊太郎さん、そしてspiと一緒にやれるというのは、楽しみでしかなかったです。役者としては、こんなにワクワクするメンバー、ワクワクできる作品に参加できるということは嬉しい限りなので。

spi:俺はね、最初は正直「俺で大丈夫か?」って思いましたけど。でも、これまで吉原光夫さんがやっていた役なので、「光夫さんやってたんなら大丈夫かな?」って思いました。

村井:光夫さんをどういう目で見てるの(笑)。

spi:俺、あの人がやったことある役ばっかやってるから。背中追っかけてるから。だからぶっちゃけ、弟を誰がやるか次第だなと思ってました。それ次第では降板も・・・。

村井:おいおいおい(笑)。

spi:でも、村井くんだって聞いて「絶対やりたい」という気持ちが強くなりました。

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――お二人は久しぶりの共演になりますよね。2015年の『RENT』以来でしょうか?

村井:そうですね。ありがたいことにspiと僕は見た目のスタイルがまったく違うので、役かぶりになることもなく。7年ぶりかな。

spi:お互い、1回仕事の路線が変わったりしたからね。俺は俺、村井は村井の道を進んで、それが今また出会えたって感じですね。

村井:spiとは、自分の思い描く役者像というか、役者としてのあり方・スタイルの話をすることが多いんですが、僕は彼に教わることが多くて。spiがポロッとしゃべる言葉って、核心を突いてくるんですよ。だから、ハッと気づかされることが多くて、彼と話すことで考えが変わることも結構あって。

話す度に、自分の中でも世の中でも「凝り固まった考え」を壊してくれる。歌もダンスも芝居も一級品だし、。しかもその表現力が型にはまってない。ずっとこの人のお芝居を観ていたいって思える。表現者という意味でも、本当に柔軟ですごいといつも思っています。

spi:ベタ褒め!ありがたいね~。

村井:spiがやっているものに僕は出れないし。なんかちょっと違うんだよね。それが今回、交わることができるのが本当に嬉しい。

spi:だから兄弟役なのかも。違う路線を走ってきた二人だけど。

村井:ああ、そうかも。生き様が違うというかね。

spi:ほんと、源氏と平家ぐらいスタンス違うもんね。

村井:源氏と平家(笑)。

spi:俺から見た村井は、数少ない、ちゃんと芝居ができる人です。俺の思うお芝居、俺の好きなスタイルのお芝居っていう意味ね。そう思えたのは市村正親さんと、濱田めぐみさん、そして村井くん。そう思える人って今、ほんと少ないんですよ。どうにでもなっちゃうので。「演じます」というタイプではなく、「生きてます」って感じの人は、最近だとマイノリティだと思う。村井くんはそういうお芝居をする人だから、貴重な仲間です。

村井:確かに。なかなかないことだよなあ。

spi;話が早いのよ。「ここってさ・・・」って言うと。

村井:「ああ・・・はいはい、OK」で解決するね。

spi:「うん、そう」みたいな。皆まで言わずとも通じるというか。

村井:文章で伝わりづらいね(笑)。

――(笑)。でも、なんとなく分かります。

村井:台本に答えは書いてあるんです。でも、正解は書いてない。その人によっての答えの吐き出し方って違うし。最近、Wキャストとかを経験して、すごく思うんですよ。

spi:はいはい、そうね。

村井:もちろん人間が違うから台詞を出す音も違うし、醸し出す空気も違う。でも、各々の役者が感じているものをそのままやって「正解」を探していく。いろんな役者の色が見えるんだけど、spiが言うように、本当に同じような感覚でできる人ってなかなかいないんです。だから、同じような感覚でできる人の芝居を見ると、すごく感情移入しちゃって嬉しくなる。「そうだよね、それが一番美しいよね」って。

spi:ほんとそういう人、最近いないんだよね・・・。いても、役者辞めちゃったり。一般の人の感覚に近いからなんだと思うのよ。見せるぜ!みたいなって感じじゃなくて、「生きてるぜ」だから。私生活に近い。すべて経験を舞台上に切り取って持ってきているだけだから。

そういう感覚の人たちって、結局お芝居をやめて、結婚して、子どもを持ったりしていくから。俺たちも一般の人とはズレてる部分があるから、お芝居続けているんだと思うんだけどね。でも、そういう感覚を持ち続けながらお芝居をしている我々は結構貴重。

――作品としても、そういう感覚のお二人が演じられることでまた違った見え方になりそうですね。『手紙』は、ファンタジーではない、現実にありえるお話ですから。

村井:確かに。もしかしたら友人に起こる出来事かもしれないし、隣の家で起こってもおかしくない出来事だし。

spi:兄弟どちらも、マジでどこにでもいる人だからね。

ミュージカル『手紙』2022 インタビュー!村井良大×spi「同じ感覚で芝居ができる貴重な仲間」

――それぞれの人物像はどう映ってますか?

spi:剛史はどこにでもいる人だけど・・・バカだなぁと思います。でも、先のことが考えられずに行動してしまう人って、結構いる。裕福ではないし、ぶっちゃけ狭い世界に住んでいて満たされていない。結果、殺人という罪を犯してしまうけれど、普通の人なんだと思います。

村井:直貴もどこにでもいるような青年ですよね。兄が殺人を犯して、犯罪者の家族という目で見続けられる。そうやって生きていくしかない。今、誰でも「謝罪」を求められる時代ですからね。有名な人の謝罪会見が「いい謝罪会見」「悪い謝罪会見」と言われるように、もはやパフォーマンスになっている。ちょっとした一言がメディアに取り上げられて、いろいろ言われる。謝ってるのに。それが一般の人にまで及んでいる。生きづらさを全員が感じていますよね。そういう意味ではより感情移入しやすい人物になっていると思います。

――この作品は日本発のミュージカルとして作られ上海などでも上演されていますが、「日本」でしか作れない作品なのかもしれないですね。

村井:今は「普通」が贅沢なんですよね。普通にご飯を食べて、普通に生活して、普通に結婚する。でも、「普通」って何?僕だって「普通」だと思うけど。普通を普通にできない、今の日本っぽさがより色濃く見えますよね。

spi:僕は再演を観たんですけど、この話の設定が1999年なので、ちょっと当時を思い出しながら観ていました。むき出しのセットで作り上げた閉鎖的な空間の上に、空を描いていたんですよ。その抜け感、コントラストを作ったのが藤田さんらしいなあと。生きづらいけれど、ここで生きていくしかないって訴えかえられているような気持ちになりました。今回はより、発するものが強く感じられるかもしれない。

――共演者の方については、初めてご一緒する方が多いですよね。

村井:初めてご一緒する方が多いんですけど、お芝居が好きな人が多い印象です。三浦透子さんは、初めて話した時に「映画は絶対映画館で観たい」とおっしゃられていたのが印象的でした。清々しくて、心地いい方ですね。7 MEN 侍のみんなとはバンド仲間になるんですけど、僕はバンドをやった経験はないので、がんばらないとなって思ってます。

spi:俺が気になってるのは、7 MEN 侍に入れてもらえるか。もうそれだけ。

村井:それ大事だね(笑)。

ミュージカル『手紙』2022 インタビュー!村井良大×spi「同じ感覚で芝居ができる貴重な仲間」

――ちなみに、お二人はご兄弟はいらっしゃいますか?

spi:俺は弟がいます。

村井:僕は姉、兄がいます。

spi:そうだったんだ。

村井:そう、弟なのよ。

――お二人にとって「家族」ってどういうものですか?

spi:そうだなあ・・・ぶっちゃけ、血の繋がりだけが「家族」じゃないのかなって思うこともあります。ファミリーフレンドというか、親友とはまた違うんだけどいつメン、みたいな。それもまた、家族と言えば家族だなと思うし。血のつながった「家族」は、一番最後に帰る場所なのかな。幸い、うちの家族は「いつでも帰ってきていいよ」という安心感を与えてくれているので。俺は、いろんな形の「家族」があると思ってます。

村井:うちは、すごい仲のいい家族なんです。大きな困難を乗り越えたからこそ、強くなったという感じなんですけど。僕が中学生の頃、母が結構大変な病気を患いまして、そこで「家族が一致団結して、支え合っていかなければならない」となりました。振り返ると、その感覚が生まれた時に絆が強くなったんだと思います。そういう困難を乗り越えた家族だからこそ、今も笑って楽しく集まれるのかなと。絆を大切にするけど、放任主義というか、何も言わなくても心地いい。不思議な関係が成り立つのが「家族」なんだなあって思います。

――物語の中でお二人が演じる兄弟はある選択をすることになりますが、その鍵となるのがタイトルにもなっている「手紙」です。お二人は、手紙に関して印象に残っているものありますか?

spi:感謝を伝えるものですよね。ファンの方からもいっぱいいただくし。結婚式とかでも、「手紙書いてきました」って始まると「おっ!」ってなりますね。

村井:僕、この業界に入って初めての仕事が、朝4時起き、6時半に木更津駅集合だったんですよ。当時、実家から「ようやく決まった仕事にはりきって行くぞ」と出ていこうとしたら、テーブルの上に小さい紙が置いてあって。なんだろう?と思って見てみたら、父から僕へのメッセージが書かれていたんです。たぶん、夜中に酔っ払って書いたんでしょうね(笑)。

それ、今でも財布の中に入れている宝物なんです。ザ・手紙じゃなくて、メモみたいなものなんですけど。きれいに書こうとしていないところに想いがこもっている気がして、手紙っていいなって思いましたね。

ミュージカル『手紙』2022 インタビュー!村井良大×spi「同じ感覚で芝居ができる貴重な仲間」

――お話を伺ってきて、初演とも再演とも違う、新しいミュージカル『手紙』が生まれるんだなとひしひし感じました。公演、楽しみにしております。

spi:この時代にぴったりな作品になると思います。今、みんなが自分の内側にフォーカスを当て始めているというか、自分の心の動きに注目している人が増えてると思うんですよ。今まではがむしゃらにやってればなんとかなった。でも、今はがんばらないことも大切。そういう時代の流れの中でこの作品をやるとなったら、藤田さんは登場人物それぞれの心の動きを丁寧に表現すると思うんです。2022年版の『手紙』はこれだ、言えるものを、ぜひ観に来てください。

村井:小説とも映画とも違う一面が、ミュージカル版だからこそ見えてくるんだと思います。できたら、家族や友人と一緒に観てもらえたらいいですね。誰かと見て、自分がどう思ったのか、感じたことを言葉にして話してもらえたら。これから先の、人生の支えになるような作品だと思うので、ぜひ劇場でご覧いただけたらと思います。

ミュージカル『手紙』2022 公演情報

上演スケジュール

2022年3月12日(土)~3月27日(日) 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)

スタッフ・キャスト

【原作】東野圭吾「手紙」(文春文庫刊)
【脚本・作詞】高橋知伽江
【作曲・音楽監督・作詞】深沢桂子
【演出】藤田俊太郎

【出演】
村井良大、spi、三浦透子、中村嶺亜(7 MEN 侍/ジャニーズJr.)、佐々木大光(7 MEN 侍/ジャニーズJr.)、今野大輝(7 MEN 侍/ジャニーズJr.)、青野紗穂、染谷洸太、遠藤瑠美子、五十嵐可絵、川口竜也

<ミュージシャン>
村井一帆(pf)、えがわとぶを(Bass)、萱谷亮一(Perc)、中村康彦(Gtr)、古池孝浩(Gtr)、土屋玲子(Vln)、日俣綾子(Vln)、三葛牧子(Vln)

【公式サイト】https://tegami2022.srptokyo.com/
【公式Twitter】@tegami2022



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