あらすじ
『子守』清元連中
かつては、地方の貧しい家の少女が子守として年季奉公に出されることがあり、江戸の町には子守の姿がよく見られました。この作品は、そんな江戸末期の町の様子を舞踊化した「風俗舞踊」の一つ。越後から上京した子守が、赤ん坊を背負って豆腐屋へ使いに行った帰り道、鳶に油揚げをさらわれ、それを追って飛び出してくるところから始まります。赤ん坊が眠った後には、一人で人形遊びするなどあどけなさを見せる一方で、恋に憧れる大人びた顔も覗かせますが、全体を通してまだ都会になじまない田舎娘の無邪気さが感じられます。後半では、紅白柄の棒で、両端に房のついた「綾竹」という小道具を用いて、清元の演奏と息を合わせた軽快な踊りを見せます。五節句(※)の変化舞踊から独立して踊られるようになった作品です。
『鳶奴』長唄囃子連中
七世市川團十郎が一月から十二月の情景を十二変化で踊った「倣三升四季俳優(まねてみますしきのわざおぎ)」のうち四月に当たるのが本作で、当時は「初鰹の戯奴僕(はつがつおのさらわれやっこ)」と呼ばれました。その後、八世市川團十郎が七歳の時にこの部分だけを踊って評判を取ると、子どもの舞踊の手ほどきの曲としても人気を得たと伝わります。奴とは武家に仕える中間(ちゅうげん)。新緑の季節、主人の命で使いに出た帰りでしょうか、鳶に初鰹をさらわれた奴が駆けて来て、賑やかな演奏とともに戰物語風の振りを見せるほか、井戸の鶴瓶棹を手に鳥を捕る振りなどがユーモラスに描かれます。『子守』と併せて、鳶に物をさらわれることがよくあった江戸の日常を描いた作品です。
『男伊達花廓(おとこだてはなのよしわら)』長唄囃子連中
江戸の庶民の憧憬の的であった男伊達。その代表格である御所五郎蔵を主人公にして、侠客としての粋な風情と心意気、恋人の許へ通う男の艶やかな色気を身上とし、若い者を相手にみせる颯爽とした所作ダテが大きな見どころとなる歌舞伎舞踊。歌舞伎の様式美、舞踊の華やかさを一時に堪能できる演目です。
この演目の元となったのは1864年(文久四年)2月、江戸市村座で初演された『曾我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)』です。作者は江戸時代を代表する劇作家の河竹黙阿弥。彼は約50年間に時代物90作品、世話物130作品、そして、140曲もの舞踊を生み出しました。
物語は、身分違いの叶わぬ恋に落ちた男女が江戸に追放され、男は五郎蔵として、女は傾城・皐月として廓に身を置き日々を過ごしていました。そんなある日、過去の遺恨から2人は運命の悪戯に翻弄されていくという悲劇のストーリー。
この物語のスピンオフ作品として生み出された『男伊達花廓』。御所五郎蔵の皐月への気持ちに想いを馳せながらお楽しみください。
公演情報
上演スケジュール
【東京公演】
2023年3月30日(木)
東京国際フォーラムホールC
【神奈川公演】
2023年3月31日(金)
神奈川県民ホール
出演
市川團十郎
市川ぼたん
市川新之助
主催
売新聞社/ニッポン放送/tvk(神奈川)
公式リンク
公式サイト:http://www.zen-a.co.jp/naritayaoyakokai/