2021年7月9日(金)東京・紀伊国屋サザンシアター TAKASHIMAYAで『ロミオとロザライン』が開幕した。本作は、鴻上尚史による新作書き下ろし作品。タイトルロールのロミオ役を務める川﨑皇輝(少年忍者/ジャニーズ Jr.)は、これが舞台初主演となる。
ロザラインとは、シェイクスピアの戯曲上でロミオがジュリエットに出会う前に恋をしていた女性。ジュリエットとは実は従姉妹関係にあたる。ロミオはジュリエットに会った瞬間、あっと言う間にロザラインのことを忘れたと言うのだが・・・。
物語は、『ロミオとジュリエット』を上演する稽古場から始まる。初日は5日後、これまで順調に進んでいた稽古だが、ロミオを演じる北山(川﨑)がロザラインの存在に疑問を覚える。どうしてシェイクスピアはロザラインを登場させたのだろう。ただ恋を知らない青年が、ジュリエットに一目惚れするだけではいけなかったのか。“リアルな演技”を追求する北山は、このまま納得できないと、自分は本物の演技が出来ないと稽古を中断。稽古場は混乱状態に。
ジュリエット役を演じるのは、今はひたすらに本格派女優を目指す元アイドルの蓮見(飯窪春菜)。ジュリエットとして本気でロミオを愛したい、と演出家・松谷(吉倉あおい)にじゃんじゃんダメ出しをくださいとせがむ。
松谷はキタヤマを納得させるべく、文献や過去の論文を手当たり次第に当たる。しかし、なかなか答えには辿り着かない。昼は稽古、夜はロザラインについての研究と、寝る間も惜しんで作品に向き合う松谷。ふと気が緩んでうたた寝の中で見た夢は、「ロミオとジュリエット」の世界で・・・。
本作では、シェイクスピア作『ロミオとジュリエット』の話と並行して、演じる役者達の物語が綿密に絡んでくる。ただの思い付きだけでは終わらない、「ジュリエットのいない夜」というロザラインに着目した小説を書き上げた鴻上だからこその隙のない、それでいて息苦しくないストーリーが、瞬く間に観客を『ロミオとロザライン』の世界へと引き込む。
川﨑はその身軽さを活かして舞台を縦横無尽に駆け回り、演技に対して真面目に向き合うキタヤマの熱心さと川﨑自身が、時折オーバーラップするほどの熱量を発する。舞台初主演とは思えないほど、作品全体をあの細身からは想像できないパワーで引っ張り続けていた。
初日を迎え「ついに初日まで来た、という実感がしています。稽古の1か月間を通じていろんな方に助けていただいて、支えていただいた成果を発揮したいです。僕が演じる北山は、しっかりしているというか、芯のある役なので、そのせいか共演者の方からも大人っぽくなったねって言われます。ロミオのシーンは、セリフも長くてシェイクスピアの独特の言い回しも多いですし、衣装も素敵で、なによりかっこいい役なので。僕もかっこいいロミオになれるように頑張りたいです。
笑える部分や考えるところもある面白い内容になっているので、みなさんが楽しんで下さったら、僕らの芝居も変わってくるんじゃないかと思うんです。それが舞台なので、まずは楽しんで観ていただけたら嬉しいです」とコメントを寄せている。
飯窪は、‟ジュリエット”と‟ジュリエットを演じている役者・蓮見”の切り替えを器用にこなしている。元アイドルの向上心、女優としての気高さを、観客が“そうそう、これ”と思う塩梅で演技に反映させていた。
演出家でありロザライン役も担う吉倉(どのようにロザラインが登場するかは、ぜひ作品を見ていただきたい!)。ぐわんぐわんと揺れ動く心情を、その声、表情、立ち姿すべてで目一杯に表現していた。
約2時間の上演時間の中で、『ロミオとジュリエット』は予想を超えたさらなる物語へと変化していく。『ロミオとジュリエット』を知っているからこそ、その抗えない運命に翻弄されるキャラクターたちに、思わず切なさに胸を締め付けられ、新たな展開にハッと驚かされることだろう。
『ロミオとロザライン』公演情報
上演スケジュール
【東京公演】2021年7月9日(金)〜7月25日(日) 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
【大阪公演】2021年7月30日(金)〜8月1日(日) サンケイホールブリーゼ
スタッフ・キャスト
【作・演出】鴻上尚史
【出演】
川﨑皇輝(少年忍者/ジャニーズ Jr.) 吉倉あおい 飯窪春菜/
一色洋平 二宮陽二郎 ザンヨウコ 渡辺芳博/
大高洋夫
【公式サイト】http://www.romeoandrosaline.com/
【公式Twitter】@RomeotoRosaline