2021年9月から10月に上演される『近松心中物語』の全キャストが発表された。主軸となる男女二組には、田中哲司、松田龍平、笹本玲奈、石橋静河が配された。
KAAT神奈川芸術劇場の芸術監督に就任した長塚が、2021年メインシーズンの演出1弾に選んだのは『近松心中物語』。戦後を代表する劇作家・秋元松代の代表作である本作は、近松門左衛門の「冥土の飛脚」をベースに他作品の要素を加え、近松作品の魅力をふんだんに盛り込んだシンプルで力強い言葉と蜷川幸雄の劇的な演出により、観客からの圧倒的支持を得て1000回を超えて上演され、演劇界の金字塔と称された。
元禄時代、境遇の違う二つの恋の情景を、華やかな演出で描いたことで人気を博した本作を、長塚は格差を問われる現在を深く突き刺す普遍的な戯曲と捉え、俳優とともに台詞の魅力を紐解きながら新たな「近松心中物語」を創り上げる。
田中は亀屋忠兵衛役、松田は傘屋与兵衛役、笹本は遊女・梅川役、石橋は与兵衛の妻・お亀役。このほか、石倉三郎、綾田俊樹、山口雅義、章平、辻本耕志、益山寛司、松田洋治、朝海ひかる、石橋亜希子、清水葉月、青山美郷、延増静美、蔵下穂波、福長里恩/藤野蒼生(子役/Wキャスト)、藤戸野絵(子役)が出演。これまで50人規模の多くの出演者で描かれてきた戯曲に、今回は19名で取り組む。
また、音楽は昨年デビュー30周年を迎えたラップグループ、スチャダラパーが担当。ラップ×『近松心中物語』という異色の組み合わせが実現する。
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『近松心中物語』に9月4日(土)から9月20日(月・祝)までKAAT神奈川芸術劇場<ホール>にて上演される。その後、北九州、豊橋、兵庫、枚方、松本を巡演する。チケットは、7月下旬に発売予定。
コメント紹介
◆長塚圭史(演出)
元禄の世に咲いた境遇の違う二つの恋の情景は、
格差を問われる現在により深く突き刺さります。
この戯曲の煌びやかさの本性を改めて炙り出し、
台詞の深淵を紐解いて、現在ここに追い詰められた生の肉体を描き出したいのです。
金に追い詰められる忠兵衛と梅川のあまりに切ない境涯と、
裕福ながらも自ら堕ちることに愛を見出す若いお亀の純真。
そしてそうした世間と折り合いがつかぬかのように
この情景を心に留めて次代へ繋がってゆく与兵衛。
この四人の人間模様を現代に抽出したい。
神奈川県が生んだ稀代の劇作家秋元松代の代表作。
KAAT神奈川芸術劇場初のシーズン制、演出第一弾に決めたことは
必然と言って過言ではありません。
近松門左衛門の浄瑠璃から元禄の人間模様を力強く現在に描き出した
秋元戯曲の台詞の力を体現出来ればと。
◆スチャダラパー(音楽)
芸術監督からのご指名により、大役任されました。
期待に添えるよう気張っていきます。
ANI
数々の名優、作家たちによって再演が繰り返されてきた大きな作品の音楽を担当するにあたって、我々としては「まともに立ち向かっても勝てるわけがない」を合言葉に、
反則スレスレのカウンターパンチを狙って、頑張っていきたいと思っています。
Bose
令和と江戸を繋ぐという長塚さんのチャレンジに、何とか力添えになれるよう、
スチャダラなりのやり方で頑張りたいと思います。
SHINCO
あらすじ
物語は元禄時代、大阪・新町(遊郭街)で始まる。
真面目な飛脚屋亀屋の養子・忠兵衛は、新町の遊女・梅川に出会い、互いに一目で恋に落ちる。
梅川に、さるお大尽からの身請け話が持ち上がる。
金に困った忠兵衛は、幼馴染みの古道具商傘屋の婿養子・与兵衛に金を借りにいく。与兵衛が快く貸してくれた50両で、梅川の身請けの手付金を払い安堵する忠兵衛と梅川の元に、大尽からの身請けの後金300両が届いてしまう。一方、お人よしで心優しい与兵衛は、与兵衛に恋い焦がれる女房のお亀、舅姑とともに、大店の婿養子として身の置き所のない想いを抱いて暮らしていたのだった。
忠兵衛と梅川/与兵衛とお亀。華やかな元禄の世に生きる境遇の違う男女二組。
恋い焦がれる人と共にいるために心中を選ぶ、それぞれの恋を描く・・・。
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『近松心中物語』公演情報
上演スケジュール
【神奈川公演】2021年9月4日(土)~9月20日(月・祝) KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
【北九州公演】9月25日(土)・9月26日(日) 北九州芸術劇場 中劇場
【豊橋公演】10月1日(金)~10月3日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
【兵庫公演】10月8日(金)~10月10日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【枚方公演】10月13日(水) 枚方市総合文化芸術センター 関西医大 大ホール
【松本公演】10月16日(土)・10月17日(日) まつもと市民芸術館 主ホール
スタッフ・キャスト
【作】秋元松代
【演出】長塚圭史
【音楽】スチャダラパー
【出演】
<主な登場人物・配役>
亀屋忠兵衛(飛脚宿・亀屋の養子):田中哲司
傘屋与兵衛(古道具屋・傘屋の婿養子):松田龍平
遊女・梅川:笹本玲奈
傘屋お亀(傘屋の一人娘・与兵衛の妻):石橋静河
丹波屋八右衛門(忠兵衛の飛脚屋仲間):石倉三郎
<以下、様々な役の担い手>
男一(亀屋後家妙閑、傘屋長兵衛、ほか):綾田俊樹
男二(槌屋平三郎、ほか):山口雅義
男三(亀屋番頭伊兵衛、ほか):章平
男四(太鼓持弥七、お綱、ほか):辻本耕志
男五(九重太夫、亀屋若手代、ほか):益山寛司
男六(お大尽、青手代、亀屋取引先の番頭、ほか):松田洋治
女一(傘屋お今、ほか):朝海ひかる
女二(越後屋女主人お清、ほか):石橋亜希子
女三(遊女白菊、遊女土佐、お鶴、ほか):清水葉月
女四(遊女遠州、お光、ほか):青山美郷
女五(遊女鳴戸瀬、ほか):延増静美
女六(遊女千代歳、ほか):蔵下穂波
男七(禿、傘屋丁稚長松、おちょぼ):子役 福長里恩/藤野蒼生(Wキャスト)
女七(禿、久作、おちょぼ):子役 藤戸野絵
田中哲司/松田龍平、笹本玲奈/石橋静河