皆さん、「舞台を観ていてあの人が気になったんだけど、情報が少ない・・・」と思ったことはありませんか?エンタステージは、日々取材をする中で“気になるあの人”に直撃してみようと思い立ちました。
第1回は、新原泰佑さんに注目!新原さんは、ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』でミュージカルデビュー(その前に『ニュージーズ』にも出演が決まっていましたが残念ながら中止に)。4歳からダンスを習い、振付も手掛けるなどダンスの世界で活躍されていました。2018年には“日本一のイケメン高校生”を決める「男子高生ミスターコン2018」にてグランプリを受賞。
その後、「表現者としてダンスだけでなく、芝居にも挑戦し、自分の幅を広げていきたい」と、俳優の世界に飛び込みました。新原さんがのめりこんだダンス、俳優への道を目指したきっかけ、そして初ミュージカルとなった『ポーの一族』でユーシス役ほかを演じながら考えていることなど、いろいろとお話いただきました。
20歳でダンス歴16年?!驚きの経歴
――今回ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』を拝見して、新原さんのことが気になり、インタビューの機会をいただきました。まず、自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。
お声がけくださりありがとうございます。新原泰佑と申します。2000年10月7日生まれの現在20歳で、『ポーの一族』で初めてのミュージカルに挑戦しています。今も本番を重ねながらいろいろと模索して、成長をしていけるようにがんばっている最中です。俳優として舞台に立ったのはすごく最近のことなんですが、ダンスを16年やっております。
――20歳でダンス歴16年ということにびっくりしたのですが・・・。プロフィールを拝見したんですが、4歳で習い始めたんですね?
はい、ダンスが大好きで。もともと、俳優として活動を始める前は、ダンサーとか、振付師とか、インストラクターとか、ダンスに関わるお仕事をしていました。ダンス以外やってこなかったと言っても過言ではないんですけど(笑)。ダンス一筋で生きてきましたね。
――ダンスを始めたきっかけは何だったんですか?
もともと、母親が「身体を動かしたい」とダンススクールに通い始めたんですね。そこに一緒に行っていたのがきっかけです。子育ての一環で一緒に連れて行ってもらっていたんですけど、母もびっくりするぐらい息子が熱中し始めちゃったみたいで。自分から「やりたい」と言い出したことでもないし、それが将来、仕事に繋がるなんて微塵も思ってなかったんじゃないでしょうか(笑)。
――そこまでダンスに惹かれたのは何故だったのでしょう?
最初はできないことも多くて、「やめたい!」と思った時期もあったんですけど、自分、すごく負けず嫌いな性格で。できないから「やめる」と言って逃げるのは、なんかちょっと違うなと思ったんですよ。幼いなりに意地があったんでしょうね。「死んでも行って、やってやるわ!」と負けず嫌いを発揮していたら、だんだんと、自分はダンスが好きなんだと思うようになりました。
何より、人前に立つことや、誰かに喜んでもらうことがすごく好きで。例えば、ダンスの発表会に出たりして、自分が踊っている姿を見て人に「かっこいい!」とか「感動した!」って言ってもらえたのがすごく嬉しかったんですよ。その喜びがあったから、続けられたという部分が強いですね。
ダンサーから俳優へ・・・『キンキーブーツ』の衝撃に突き動かされた高校時代
――誰かを喜ばせたいという動機は、すごく今につながっているのかもしれないですね。ダンスの世界から俳優としてやっていきたいと思ったのは?
お芝居をしたいという気持ちが芽生えたきっかけは、とあるミュージカル作品を観たことでした。それはもう、衝撃的で。お芝居と歌とダンスで、ここまで人を魅了できる空間にいられることは、これ以上ない幸せなんだろうなとすごく思ったんです。それが、俳優になりたいと思った瞬間でしたね。
――運命の出会いでしたね。ちなみに、タイトルを伺ってもいいですか?
ミュージカル『キンキーブーツ』(日本人版初演/2016年)です。高校生になりたての頃だったかなあ?友達が誘ってくれて、一緒に観に行ったんです。自分から能動的にというよりは誘ってもらって、楽しい舞台なんだろうな~ぐらいの感覚で足を運んだので、そこまで衝撃を受けるとは思っていなくて・・・。あの時間だけ、まるで自分のいる場所が日本ではないような、きらびやかな異世界に飛び込んだような感覚がして。そういうのって、お芝居でしか味わえない感覚だな、自分も挑戦してみたいと強く思ったことを覚えています。
――今、オーディションを受ける機会も多いかと思うのですが、どんなことを考えて臨んでいますか?
ミュージカル、ストプレ、ドラマと、作品によって見られる部分は違うと思うのですが、まず大前提として、当日に与えられた課題でも、審査を受けるまでには絶対に自分の頭と身体に叩き込むようにしています。それは、台本でも振付でも変わりません。それが最低限必要なことだと思っているので。
オーディションって、自分としては「どれだけ自分の可能性を見せられるか」の場だと思うんですよ。だから、ただ頭に叩き込んだものを見せるだけでは違うと思っていて。ダンスだったら無言で身体を動かすだけでも、その中にどれだけ自分の物語と可能性を詰められるか。お芝居だったら、台詞と共に自分の中にあるエネルギーを伝えられるか。歌だったら、ただ歌うだけならそれは文字を音に乗せて羅列しているだけだから、短時間でもどれだけ気持ちを入れられるかが勝負だなと思っていて。僕、結構緊張しがちなんですけど、惜しまず躊躇せずやろうと決めています。
――さっきおっしゃっていた「負けず嫌い」は今も生きていますか?
今も負けず嫌いだと思います(笑)。この世界にはたくさんオーディションがありますが、自分がオーディションを受けられる瞬間はその一瞬しか存在しないわけなので、その一瞬を僕は逃したくないんですね。だから、死んでも受かりたい!と思っています。受かったらいいな~ぐらいの気持ちで行くんだったら、僕は行かない方がいいと思っているので。全力でやれることをやって、自分の気持ちだけは絶対にそこで見せるぞっていう思いがあります。
初ミュージカルで「ここに立っていていい存在なんだ」と思えた
――新原さんは、中止にはなってしまいましたが『ニュージーズ』へも出演が決まっており、『ポーの一族』でついに初舞台を踏みましたね。先ほど、緊張しいだとおっしゃっていましたが、大阪での初日はどうでしたか?
いや~、緊張しましたよ。緊張しすぎて、今すぐ帰りたいぐらい。ウォーミングアップして、メイクして、衣裳をつけて、万全の状態でスタンバイして、絶対に数分後には舞台に出なければいけないのに、心の中では「どうしよう・・・」と思っていました(笑)。
『ポーの一族』で驚いたのが、幕が空いた瞬間、お客さんが拍手をしてくださるんですよ。それも初日だけではなく、毎回。僕は、ポーズを取って、微動だにしない状態でそれを聞いているんですが、その拍手を浴びた瞬間、「自分はここにちゃんと立っていられている」「ここに立っていていい存在なんだ」と思えたんです。それに加えて、この拍手をくださったお客さんに、何かを持って返ってもらえるものを見せなければいけないんだという使命感に駆られました。
――演出の小池修一郎さんとは、『ニュージーズ』『ポーの一族』と続けてご一緒されていますよね。
小池先生は、本当にいろんなことを細かく見ていらっしゃるんですよ。そして、「美」というものに対して求めるものや理想がすごく高いところにある方です。例えば、顔の角度について「気持ち、左を向く」とか、「顔はそのまま、目線だけ落とす」とか、そういった細かなところまで追求するんですね。稽古では、シーンを極限まで「美しく極める」とはどういうことなのかを目の当たりにしました。
僕、もともと振付をやっていたこともあり、作品を演出する立場を経験してきた人間なので、今も照明とか映像にも興味があるんですね。『ポーの一族』の序盤に空港のシーンがあるんですが、その電光掲示板の位置までも小池先生が微調整していたんです。照明の角度なども含めて、すべてを徹底的に微調整していくお姿を見て・・・小池先生もきっと負けず嫌なんだろうなと思いました(笑)。そういう熱はお芝居の演出にも込められていて、僕が演じている役の一つ、ユーシスについては、僕の今まで歩んできた道と重ね合わせてお話ししてくださったり。
ご一緒させていただいて、ここまで多くの方に愛されている演出家さんでいらっしゃる理由がよく分かりました。作品が好き、出演者に興味がある以外に、「小池修一郎」の演出を観に来ていらっしゃる方も多いと思うんです。それって本当に素敵なことだなと。自分もそう思っていただけるような人間になりたいなと思います。
新原泰佑は「良い」を生む瞬間をこう考える
――今お話を聞いていても、『ポーの一族』での各場面を観ていても、新原さんは常にご自身の見せ方を考えていらっしゃるんですね。
ありがとうございます。それは、自分の中ではすごく大事にしていて。ダンスだけをやっていた時にコンテストなどにも出ていまして、その時も他者から自分がどう見られているのかは気を配る部分だと常に思ってやっていました。お客さんが「いいな」と思ってくださる瞬間というのは、自分の出したいエネルギーがお客さんの求める思いと一致した時であり、「良い」が生まれる瞬間だと思うんですね。
――視線が吸い寄せられるって、そういうことなんでしょうね。
そうだったら嬉しいですね~!
――『ポーの一族』は配信などもあり、劇場だけでなく多くの方に観ていただける作品です。新原さんとして、ぜひ観てほしい細かなポイントはありますか?
そうですね・・・、市場で野菜を持って踊っているシーンがあるんですが、あの場面、毎回持っている野菜が違うんです。毎日何を持つか迷っていて。自分の芝居も観てほしいのはもちろんなんですけど、『ポーの一族』は舞台セットや小道具もすごく観てほしい部分なんです。野菜もパンもお肉も、本当に細かいところまで作り込まれているので。ちなみに、お魚屋さんからいただく魚に関しては、大阪公演と東京公演では違う魚になっているんですよ。活きの良さは、朝市という設定を意識してやっています(笑)
それから、ユーシスのナイフもグリップするところに細かい彫刻が施されていたりもします。あまりにも細かすぎて、これは客席からは見えないと思うんですけど・・・。セント・ウィンザーの学生たちが出てくるシーンでは、クリケットのラケットを持っているんですが、あれも市販されているものではなく、小道具さんの手作りなんです。実際に試合で使っているものだと、重すぎて踊れなくて。細かい汚しが入っていたり、本当に細かいところまで作り込まれているので、そういう部分も観てほしいです。
――新原さんは、出てくる場面によってはコミカルに振り切れているのも印象的でした。
『ポーの一族』は物語がシリアスな分、コミカルなシーンは思いっきり明るくいって活気づけたいと思って臨んでいます。シリアスだけど、観ているお客さんの心がどんどん沈んでいってしまうのは作品の方向性として違うと思うので。だから、波をつけるという意味で、先ほどお話しした小道具を絡めるシーンや学生たちのシーンでは、自分もエネルギーを高く出していこうという思いはありますね。
――役の一つには、メリーベルと恋に落ちるユーシスの役もありますね。ユーシスを演じる上ではどんなことを意識されていますか?
ユーシスに関しては、小池先生が追求する「美」を突き詰めて体現しないと成り立たない役だなと思っています。漫画も読ませていただいた時、ユーシスって「漫画でなければ存在できないキャラクターだ」と思ったんです。周りに一層オーラをまとっているようなイメージというか。
だから、それを舞台で生身の人間が演じるには、立ち姿や首の角度、漫画で描かれているような金髪のなびき具合とか、振り返った時の髪の前にかかる量と後ろに残る量のバランスとか、すごく研究しました。
小池先生と役作りについてお話した時も、「ユーシスは美の塊として追求してほしい」と言われていて。自分が芝居をするにあたっても、最初から最後まで、ちゃんと全てが美しくあるように、芝居の熱を入れながらも見え方を常に意識しています。気持ちは、漫画を読んだ時に抱いた一層オーラをまとう気持ちで(笑)。ちゃんと表現できているといいんですけどね。
俳優として歩む未来も「僕は僕でありたい」
――今後、ご自身としてはどんな俳優さんになっていきたいと思っていらっしゃいますか?
僕は僕でありたいなと思います。誰々みたいになりたいと思うと、それは真似になってしまうと思うので。それから、ダンスが好きという気持ちも大事にしたいです。ダンスは僕の生きがいであり、人生なので。ずっと続けるつもりですし、ダンスを活かして仕事もしていきたいです。
その上で、いろんなお芝居ができる俳優になれたらと思います。自然体な役からコミカルな役、ネジが外れたようなキャラクター強めな役とか、人を殺してしまう役とか、芝居でなければできない、“作品”という枠の中にしか存在できない人間になれることが芝居の醍醐味だと思うので、そういうことを楽しみながら、今後やっていけたらと思っています。
――お話を伺って、今後のご活躍がますます楽しみになりました。ぜひ、新原さんにご注目されている方々へ、メッセージをお願いします。
『ポーの一族』で知ってくださった方も、以前から応援してくださっている方も、僕のことを知ってくださったことに感謝の気持ちでいっぱいです。これからも自分は、惜しむことなく芝居にエネルギーを注いでいきたいなと思っているので、これからもっと知っていただけるようにがんばって、僕という人間をもっと好きになってもらえたら嬉しいです。
公演情報
ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』ライブ配信
【日時】
2月7日(日)12:30公演<エドガーアングルバージョン>(※終了)
2月13日(土)12:00公演<エドガーアングルバージョン>
2月13日(土)17:00公演<アランアングルバージョン>
2月28日(日)12:00公演
【配信サービス】PIA LIVE STREAM
【料金】
4,500円(税込) ※「Go To イベント」適用で3,600円
公演パンフレット郵送サービス付6,500円(税込) ※「Go To イベント」適用で5,200円(数量限定販売)
【視聴券販売期間】各回の開演30分後まで購入可能(※アーカイブなし)
国内ライブ・ビューイング
【日時】2月28日(日)12:00公演
【会場】全国各地の映画館60館
【料金】5,500円(全席指定・税込)
台湾ライブ・ビューイング
【日時】2月28日(日)12:00公演(日本時間)
【会場】台湾内の映画館6館
【料金】NT$1450
台湾・香港ライブ配信
【日時】2月28日(日)12:00公演(日本時間)
【料金】NT$1,200 HK$335
公演情報
ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』
【大阪公演】2021年1月11日(月・祝)~1月26日(火) 梅田芸術劇場 メインホール(終了)
【東京公演】2021年2月3日(水)~2月17日(水) 東京国際フォーラム ホールC
【名古屋公演】2021年2月23日(火・祝)~2月28日(日) 御園座
【原作】萩尾望都「ポーの一族」(小学館「フラワーコミックス」刊)
【脚本・演出】小池修一郎(宝塚歌劇団)
【出演】
明日海りお/千葉雄大
小西遼生 中村橋之助 夢咲ねね 綺咲愛里/福井晶一 涼風真世
能條愛未 純矢ちとせ
石川新太 大井新生 加賀谷真聡 鍛治直人 鯨井未呼斗 酒井航 高橋慈生 新原泰佑 西村清孝 松之木天辺 丸山泰右 武藤寛 吉田倭大 米澤賢人 伊宮理恵 桂川結衣 木村晶子 多岐川装子 田中なずな 笘篠ひとみ 七瀬りりこ 花岡麻里名 濵平奈津美 蛭薙ありさ 美麗(男女50音順)
【公式サイト】https://www.umegei.com/poenoichizoku/
【公式Twitter】@poe_musical