2020年8月27日(木)に東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで内田理央主演舞台『星の数ほど星に願いを』が開幕した。内田の他、田村健太郎、安澤千草、吉増裕士、師岡広明、水野小論、神谷圭介、大堀こういちら出演者全員がフェイスガードで熱演している本作の模様を場面写真と共にお伝えする。
物語の舞台となるのは町工場・高見沢製作所。かつては、河原で拾ってきた石ころを「どんな願いも叶う神秘の石」としてインチキ占い師たちに売りつけることにより財をなしていた工場だが、悪質な霊感商法の評判もすっかり広まり、インチキ占い師も激減、銀行からの融資も絶え、資金繰りに窮する毎日だった。
そんな中、銀行から融資の回収の命を受けて高見沢製作所にやってくる銀行員のナナ(内田)。彼女は工場の看板商品「神秘の石」が本当に「どんな願いも叶う力」を持てば工場の業績が回復するだろうから、がんばって石の品質を向上してほしいと無茶苦茶な要求を突きつける。工場の誰一人として石の力などもともと信じていない中、ナナの作戦は功を奏するのか・・・?という物語が展開する。
テレビドラマや雑誌モデルで活躍著しい内田理央が、「ナンセンスコメディの極北」と称されるブルー&スカイの演出で、どのような演技を見せるのかに注目が集まっていたが、予想をはるかに上回るコメディエンヌを発揮。作品世界は、設定・役柄・セリフ・展開と、全てがデタラメ。そんなバカバカしい世界に身を委ね、内田は、冷酷な銀行員、実はいい人、おバカキャラ、恩返ししたい思いやり女子、などを自在に演じ分けながら観客を笑いへ誘い、女優としての新天地を開拓しているように感じた。
そして、田村健太郎・大堀こういちをはじめとする共演者たちもブルー&スカイの世界観を見事に体現し、かつ、それぞれが個性的で、噛み合っているか合ってないか分からない会話でさえ自然に愛らしく思える。客席は終始笑いが絶えず、繰り出されるナンセンスな世界と驚きの結末によって最後は呆然ともいえる様子だった。
特筆すべきは、出演者全員がフェイスガードをつけて演じており、情勢を取り入れたところ。今だからこその見ごたえある舞台となっていた。内容は、全く不要不急ではない。不要不急の今だからこそ、不要不急ではない舞台作品が上演される意義を感じられた作品だった。感染対策も万全となっており、今だからこそ同じ空間を共有しながら、安心してナンセンスな笑いに身を委ねたい方にはおすすめの舞台だ。
舞台『星の数ほど星に願いを』は9月6日(日)まで紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて上演。上演時間は約1時間50分。
【公演情報】 https://db.enterstage.jp/archives/4057
(取材・文/オフィシャル提供、場面写真:(C)引地信彦)