池袋のLIVE エンターテインメントビルMixalive TOKYO(ミクサライブ東京)内に誕生するTheater Mixaのこけら落とし公演にラインアップされた、「錆色のアーマ」外伝 -碧空の梟-(あおのふくろう)。“逆2.5次元”として広がる本シリーズが、約1年の時を経て再び動き出す。本記事では、ビジュアル撮影現場の荒木健太朗、平田裕一郎、神里優希に密着した模様をレポートする。
「錆色のアーマ」は、舞台を原作としてメディアミックス展開を行う“逆2.5次元”プロジェクトで、2017年6月に舞台第1弾、2019年6月に第2弾「-繋ぐ-」を上演。2019年1月から「月刊コミックジーン」(KADOKAWA)でコミカライズが始動し(現在第2巻まで発売)、舞台第2弾の開幕同日にアニメ化されることも発表された。
本作が描くのは、鉄砲の腕前一つで名乗りを上げた孫一が率いる“雑賀衆”と、天を喰らおうとする信長の出会いと因縁。戦乱の世を舞台に「アーマ」と呼ばれる武器を携えた男たちの物語を、音楽を交えながら膨らませてきた。
これまでの2作では、孫一役の佐藤大樹(EXILE/FANTASTICS from EXILE TRIBE)と織田信長役の増田俊樹を中心に物語を展開してきたが、この「外伝」には二人は登場しない。“雑賀衆”の中から、鶴首(荒木)、黒氷(平田)、アゲハ(神里)、第2弾に登場した紀ノ國筆頭・藤白(石渡真修)、そして伝説の兄弟鬼・酒呑童子(田中しげ美)と茨木童子(佐藤永典)。
そして、新キャストとして暗躍する精鋭集団“梟”の橘三兄弟、次男・東雲(しののめ)役の仲田博喜、長男・未布留(みふる)役の櫻井圭登、三男・羽矢十(はやと)役の富園力也が加わり、物語は新たな展開を迎えることとなる。
昨今の2.5次元作品と一線を画すオリジナルの“逆2.5次元”作品だからこそ、その世界観を共有するために重要な役割を担うのが、初演から本シリーズを牽引する荒木平田、神里の存在だろう。
ビジュアル撮影というと、大抵の場合、登場人物と演じる役者が初めて出会う場所になる。だが、シリーズ作品経験者には、そこはもはや演じる一つの場。どんなに間が空いても、役者の中に“役”がしっかり息づいているのを感じる現場だった。
撮影は、荒木からスタート。荒木が演じる鶴首は、雑賀衆の中では最年長で孫一を支える存在だ。すっと前を見据える色見の違う両眼には、鶴首という役が抱える複雑な背景が去来する。槍にもなる長銃のアーマ「鳳凰落とし」を自在に操りながら、カメラマンの要望の一つ一つに「はい」と静かに答えていた。
鶴首という役柄については、第2弾で多くの新事実が明かされた。荒木も「最初はびっくりしました。次は何になるんだろう・・・(笑)?」と笑っていたが、それも「オリジナルだからこその広がりですよね」と今後を楽しみにしている様子。
「オリジナル」を自分たちで作り出すという意識は、初演からかなり高かったそうだ。外伝という展開も「初演の時から『孫一に出会う前の雑賀衆はどんな風に生きていたんだろう?』とか、『どういう順番で入ってきた?誰が先輩で、誰が後輩?』みたいな話をたくさんしていて。だから、外伝という形がいつかあってもいいのかなと思っていました」と想像していたという。
もう一つ、荒木はとてもおもしろい話をしてくれた。劇団公演(荒木はスタジオライフ出身)では当たり前だったロングラン公演。最近の2.5次元作品では長期公演も増えているが、一つの劇場で長く同一公演を続けることはまだ珍しくもある。
同じことを繰り返し続ける演劇。「よく『新鮮にやろう』って言うんですけど、なかなかそうはならないんですよね。例えば、キャベツに毎日『これ、新鮮だから!』って声をかけていても、新鮮さは保てない。僕ら人間も、気持ちだけでは新鮮にはできないんです」。
「毎日一つでも新しい発見をすることが大事だなと思っています。『この人、ここにほくろあったんだ』とか、『この場所にこんな照明が仕込まれていたんだ』とか、些細なことでも発見して感じるだけで新鮮になる。いくつ気付きを自分の中に持てるかが、一つのことを長くやり続ける上では重要。発見しようとしていることが、すでに新しいことだから。僕はそう、思っています」
荒木のこの考えは、役者だけでなく、私たちの仕事や生活にも通じる大事なことかもしれない。荒木が、3度目となる鶴首役とどのように向き合い、鶴首の新しい一面を見つけるのか、楽しみだ。
続いては、黒氷役の平田へ。黒氷は、義手と義足、五臓六腑のあらゆる場所が銃で仕上がっていて、五臓六腑のすべてがアーマという役どころ。衣裳を整えてもらい、スポットの下に現れた平田だが、何か違和感がある模様・・・。ガトリングガンのような回転式連発銃「白虎薙ぎ」の装着感がきつかったようで「・・・腕だけ太ることとか、あります?」などと聞いていたが、それもそのはず!左右が逆だった。慌てるスタッフさんに、「僕も気づかなくてごめんなさい(笑)。ここはこうで・・・」と装着方法を自ら詳しく説明し、爆笑から撮影は始まった。
撮影中、冷淡で荒々しい黒氷を生み出すため平田は「まだ表情が優しすぎるかな」と“見せ方”を追求する姿勢を緩めない。一方で「寄り目とかいらないですか?」と冗談を飛ばし、終始現場を和やかに笑わせていた。ちなみに、2作を共に戦い抜いてきた黒氷の右の靴は、中が粉々になっているそう。修繕が必要なその状況は、舞台の激しさを雄弁に物語る。
外伝という展開は「率直に嬉しかった」という平田。雑賀衆の面々は、作品を離れている時もとても仲がいいそうで、「お頭(孫一/佐藤大樹)ともちょこちょこ連絡を取り続けていて。この外伝が決まった時、お頭が『がんばって!』ってメッセージをくれたんですよ。今回、雑賀衆は3人だけですが“繋がってる”って感じがしていますね」と教えてくれた。
黒氷についても「やっていくうちに、どんどん好きになっていっています。『錆色のアーマ』という作品自体にも、雑賀衆のみんなに対する気持ちもどんどん高まっていっているので、今回、どう深められるか。離れていても孫一が思っていてくれるというのは僕らにとってすごく大きなことで、新キャストの皆さんを迎えて広がる物語にみんなが集結する時まで、繋いでいきたいなという気持ちが強いです」と気合い十分だった。
そして、撮影はアゲハ役の神里へ。アゲハは、見た目は女性のような美少年。神里は、これまでも美しく強いアゲハを体現していたが、このビジュアル撮影の時は・・・何だか“美しさ”に磨きがかかっている。スタッフさんたちにも「キレイになったね?」と次々に声をかけられ、少々頬を染める神里だった。
撮影中も「流し目が素敵」「うなじを見せて!」などと、声がかかり、アゲハというキャラクターならではの魅力を引き出そうと現場もノリノリ。その度に、神里の表情も輝きを増していく。ふわりと衣裳の裾をはためかせながら、小銃のアーマ「朱雀惑い」をキリリと構えてポージングを決めていった。
アゲハも、第2弾で過去の片鱗が見えてきた。複雑なバックボーンがありそうなアゲハだが、演じることについて神里の表情は「自分で作ったものがベースになるという未来を創造しながら作るのは楽しいです。みんなとたくさんコミュニケーションとって作ってきたので」と自信に満ちている。
「今までも、これからもこんな役を経験できることはなかなかないと思うんです。所作とか、一つ一つの動きで男性っぽく見えたり、女性っぽく見えたりと変わってくるので。(役を)繊細に作っていくのは大変ですけど、やりがいがありますね」
3人とも、強調していたのが“初演から出演しているからこその責任感”。仲間が観に来てくれた時に『今までで一番いい』って言ってもらえるものを作りたいと、作品を支えるという気力に満ちた言葉をたくさん聞かせてくれた。
ロングラン公演というと、初日付近と千秋楽付近でまったく芝居が変わっている!という感覚を抱いた経験を持つ人は少なくないと思う。しかし、彼らは意図してそうしているわけではない。一日一日、一公演一公演を積み重ねてきたものが、その日の芝居という“結果”なのだ。
さらに言えば、3人が演じる雑賀衆には、これまでの3年分の時間が流れている。観る側にも、演じる側にも、それぞれのタイミングに違うおもしろさが生まれるロングラン公演で、「錆色のアーマ」、そして、荒木・平田・神里がどのような変化を見せるのか。6月が待ち遠しい。
「錆色のアーマ」外伝 -碧空の梟-(あおのふくろう)は、6月4日(木)から6月28日(日)まで東京・Theater Mixaにて上演される。チケットは、4月18日(土)10:00より一般発売開始。
なお、一般発売に先駆け4月3日(金)から4月5日(日)まで、オフィシャル先行も実施される。
詳細:https://rusted-armors.com/ticket/index.html#prereq
【公式サイト】https://rusted-armors.com/
【公式Twitter】@rusted_armors
(C)「錆色のアーマ」プロジェクト
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)