柳浩太郎の復帰舞台となる『夜明け~spirit~』が、2020年2月19日(水)に東京・ウッディシアター中目黒にて開幕した。ミュージカル『テニスの王子様』(テニミュ)の初代・越前リョーマ役として知られる柳は、2014年11月に長期休業を発表。5年の時を経て昨年より徐々に活動を再開し、本作で待望の舞台復帰を果たした。本記事では、初日前に行われた公開ゲネプロの模様をレポートする。
柳は、テニミュの公演を目前に控えた2003年12月、同作品の稽古から帰宅途中に交通事故に遭い、身体麻痺、高次脳機能障害を抱えてしまう。リハビリを経て舞台復帰し、数々の困難と戦いながら舞台・映画・テレビへの出演を続けてきたものの、2014年に活動を休止。表舞台からは遠ざかっていたが俳優への意欲を失わず、トレーニングを続け、今回の復帰へと繋がった。
柳の身に実際に起こったことをモチーフに作られた本作には、森山栄治、河合龍之介など、柳のキャリア代名詞でもある“テニミュ”を通して繋がる仲間たちが集結。さらに、テニミュの演出家・上島雪夫が振付で参加するほか、一日ゲストとして由縁のある俳優たちが入れ替わりで友情出演している。
【あらすじ】
主演舞台の初日を控えたある冬の日、柳瀬(柳)は交通事故に遭ってしまう。
事故は柳瀬の体の自由を奪い、心まで奪いにかかる・・・。
「最新の技術で彼を救おうとは思いませんか?」
柳瀬に自分を取り戻させるには、心にどんな燈火を灯せば良いのか。
彼を取り巻く人々はそれぞれの思いを抱えて行動を起こす――。
柳の復帰第一作として、テニミュの舞台プロデューサーでもある片岡義朗がプロットを書いたという本作。脚本・演出を畑雅文が手掛けた物語は、柳瀬が交通事故に遭うシーンから始まる。絶望的な状況に陥っている柳瀬の入院する病院では、柳瀬の姉、そして、柳瀬が出演している『バドミントンの王様』のプロデューサーや共演者たちが、柳瀬の回復を願いながらそれぞれの対応に追われていく。
柳瀬は、まさに柳自身のことだと強く感じた。柳は、2010年に自伝エッセイ「障害役者 ~走れなくても、セリフを忘れても~」を上梓し、その中で事故当時から出版までの出来事を詳細に、そしてあけすけに記しているが、本作では同著で語られた柳自身のエピソードのいくつかが形を変えて再現されている。柳が演じるからこそ、よりリアルにその状況が伝わり、胸が締め付けられる思いがした。
とはいえ、決して悲観をもたらす作品でも、悲しみに涙するだけの作品でもない。タイトルに『夜明け』とあるように、今後の柳の可能性や俳優としての羽ばたきを強く感じさせる、希望に溢れた作品である。思うに、柳の劇中の言葉は、全てが台本通りではなかったであろう。アドリブに近い演技も多かったと思うが、それを芝居として見事に成立させていた。これは、役者としての柳のポテンシャルの高さを感じさせるもので、本作が今後の俳優活動の大きな一歩となったことを予感させた。
劇中には思わずクスリとしてしまうシーンも多く、また、森山や河合、この日のゲストだった八神蓮との絡みでは素が垣間見える場面もあり微笑ましい。往年のテニミュファン、柳ファンにとっては胸踊るシーンも多く見られた。
カーテンコールの最後、森山に促された柳は「いろいろなことがあったかもですが、(気を引き)締めてがんばります」と力強く挨拶。ここから、柳浩太郎の俳優としての新たな物語が始まる。
舞台『夜明け~spirit~』は、2月24日(月・祝)まで東京・にウッディシアター中目黒にて上演。当日券は抽選にて販売される。詳細は、公式サイトにてご確認を。
【Daily guest】
2月19日(水)19:00公演 八神蓮
2月20日(木)19:00公演 鎌苅健太
2月21日(金)19:00公演 森川次朗
2月22日(土)14:00公演 篠田光亮/寿里
2月22日(土)18:00公演 YOH
2月23日(日)14:00公演/18:00公演 KIMERU
2月24日(月)13:00公演/17:00公演 南圭介
ニコニコチャンネル「コントラチャンネル」では、舞台中継を実施。タイムシフト視聴(終演後に観ること)は2020年03月02日(月)23:59:59まで可能。詳細は以下のとおり。
◆劇場生配信
【ネットチケット】2,500円(税込)
【2月24日(月・祝)13:00開演回(有料)】https://live2.nicovideo.jp/watch/lv324300569
【2月24日(月・祝)17:00開演回(有料)】https://live2.nicovideo.jp/watch/lv324300684
【公式サイト】https://55visio.wixsite.com/yospi
【公式Twitter】@yoakespirit
(取材・文・/嶋田真己、撮影/多治見武昭)