2020年1月31日(金)に、東京・品川プリンスホテル ステラボールにていよいよ開幕する、リアルファイティング「はじめの一歩」The Glorious Stage!!。アニメ版で主人公・幕之内一歩の声優を務めた喜安浩平が作・演出を手掛け、“ボクシング”にかける男たちの熱い戦いを舞台化する。真剣勝負の世界を、どのように演劇として表現するのか?その稽古場を取材した。
稽古場の重いドアを開けて、困惑した。・・・来る場所を間違えてしまっただろうか?思わず一度視線を反らし、二度見した。板の上にいたのは、見覚えのある俳優たちの姿だった。ほっと胸をなでおろす。よかった。それほどまでに、演劇の稽古場というには異質な光景が目前に広がっていた。
稽古場中央には、リングを模したせり出し舞台。以前行ったインタビューで、喜安は「普通のプロセニアムの演劇(※観客席と舞台を区切る額縁型の壁面を通して観る演劇)の舞台ではなく、後楽園ホールのような囲み型の客席が再現できる劇場でやりたい」と希望していたが、そのイメージ通りの舞台セットが実現していた。しかもこのリング、回る。打ち合う俳優たちの姿をぐるぐると360度観ることができるようになっていた。
「はじめの一歩」は、「週刊少年マガジン」(講談社)で1989年から連載中の森川ジョージによるボクシング漫画で、累計発行部数9,600万部を超える大ヒット作。主人公・幕之内一歩が、プロボクサーとして、人間として成長していく過程が描かれる。
一歩役を演じるのは、本作が本格的なデビュー作となる後藤恭路。シュートボクシングの経験者という、一歩を演じるに申し分のない若手だ。この日の稽古場では、この後藤と「浪速のロッキー」の異名を持つ千堂武士役の松田凌が対戦するシーンが作られていた。
この稽古場、特徴的だったのが“口”より“身体”が動くということだった。演出をつける言葉に、後藤は短い言葉で答え、黙々とリング(舞台)に向かう。松田も然り。鋭い眼光で前を見据え、喜安の言葉に頷いて見せる。この光景、テレビとかで観たことある。試合中の、選手とセコンドの関係だ・・・。本作に冠せられた“リアルファイティング”というタイトルの意味が、よく伝わる光景だった。
続いて、日本フェザー級チャンピオン伊達英二役の松本寛也と後藤が打ち合う。同じ場面を繰り返しながら調整していく中で、だんだんと松本が凄みを上げていく。繰り出すパンチが速度を上げる度に髪の揺れが大きくなる。伊達といえば、必殺のハートブレイク・ショット。どのように表現されているのか・・・お楽しみに。
そして、山口大地演じる冴木卓麻、ヴォルグ・ザンギエフ役の才川コージら、続々と一歩の前に立ちはだかるライバルたち。冴木と一歩の対戦では、“リズム”を何度も確認していた。場に流れる音楽のカウントを確認し、ストップモーションなども織り交ぜながら“魅せる”試合を作り上げていく。
次のシーンで、才川と喜安が出のタイミングを確認している傍らで、山口が休憩しつつ筋トレをしているのが印象的だった。どんな時間も無駄にしないスタイル。この精神は“リング外”でもあちこちに見られた。
一歩が所属する鴨川ボクシングジムのメンバー、鷹村守役の滝川広大、青木勝役の塩田康平、木村達也役の高橋奎仁には歌うシーンがあるようで、稽古場をあちこち動き回りながら、フンフンと口ずさんでいる。
後藤を中心とした稽古が舞台セット上で行われている一方で、稽古場の隅で黙々と鏡で動きを確認していたのは、一歩の永遠のライバル・宮田一郎役を演じる滝澤諒。とにかく、彼は終始動いていた。そこへアンサンブルのアブラヒム・ハンナが合流し、いつしか打ち合いに。原作漫画を何度も手に取りながら、漫画の絵を再現しようとしているようだった。2.5次元舞台として、演劇としてのリアルを追求する姿に余念がない。
とにかく、ストイック。外は雪がちらつきそうなぐらい寒いというのに、シャツを脱ぎ捨て、休憩時間もシャドーボクシングに打ち込む。しなやかに躍動する筋肉は、この作品が追求するリアルさを雄弁に物語っていた。本番で、どんなファイトが繰り広げられるのか、開幕が待ち遠しい。
リアルファイティング「はじめの一歩」The Glorious Stage!!は、2020年1月31日(金)から2月9日(日)まで東京・品川プリンスホテル ステラボールにて上演される。
【公式サイト】https://ippo-stage.com
【公式Twitter】@ippo_stage
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(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)