可愛い大人たちのほろ苦コメディ『不機嫌な女神たち プラス1』ゲネプロレポート

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2019年10月19日(土)に舞台『不機嫌な女神たち プラス1』が東京・紀伊國屋ホールにて開幕した。初日前日には囲み会見が行われ、出演の和久井映見、羽田美智子、西田尚美、谷原章介が登壇した。

本作は、和久井、羽田、西田の女神たち女性3人と、谷原演じる”プラス1”の男性一人のみによる会話劇。NHK連続テレビ小説『ちゅらさん』『ひよっこ』など数多くの国民的ヒットドラマを手掛けてきた脚本家・岡田惠和が書き下ろし、演出は田村孝裕が手掛ける。

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舞台は、田舎町の古民家カフェ。無人となっているカフェに、辻本タケオ(谷原章介)がふらりと現れるところから始まる。そこにカフェのオーナーである尾関郁子(和久井映見)と、彼女の幼なじみ・日比野さつき(西田尚美)がやって来る。何やら意味深に姿を隠すタケオ。郁子とさつきが他愛もない会話を繰り返していると、高校卒業後に上京してから連絡の無かった天野桂(羽田美智子)が帰ってきた。桂の身の上話で盛り上がる3人たち。やがて、その3人の前にタケオが姿を現す・・・。

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主演となる和久井の舞台出演は約6年ぶりで、2度目。舞台挨拶では、演じる役柄と物語を「夫とは別れ、子どもは大きくなって家を出ていて、亡くなった母の介護の終えて、一人でずっと暮らしています。近くにいてくれたであろうさつきにちょっかいを出しながら生きてきて、そこに桂とタケオがやって来るという物語です」と話すと「この大人の2時間という物語の中で、こんなにセリフをたくさん話したことは今までなかったのではないかなと思う作品です。ぜひお楽しみいただけたらと今日を迎えています」と初日を迎えた心境を明かした。

郁子と幼なじみのさつきを演じる西田は「みんなどことなく変な人たちなんですけど、私もその変な人の一人です(笑)。私の役はちょっと人と接するのが得意でない感じですが、心を許している唯一の友人がこの二人なんじゃないかなと思いながら演じています」と役柄を説明。

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同じく郁子とさつきと幼なじみの桂を演じる羽田は「東京で栄光と挫折を味わって、ちょっと傷を抱えて30年ぶりにふるさとに戻ってくる役で、そこで一波乱が起きます」と役どころを語り「脚本が岡田さん、演出が田村さんということで、緻密で寸分の隙も無い会話劇となっています。その中で、私たちも50年近い人生を物語るという2時間のステージで50年分を埋め尽くす会話劇になっていて、稽古中もとてもやり甲斐がありました。同世代の役者さんたちとこんなに密に1か月近くご一緒させてもらい、本当に中身の濃い時間となりました」と稽古を振り返った。

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そんな同世代の3人の女神たちと関係をもってしまうタケオについて、谷原は「普通に考えますと本当にひどい男で、嫌われやすい役だと思います(笑)。でも、観客の皆さんに嫌わせないで、この4人を温かく見守っていただけるようにがんばっていきたいです」と意気込みを披露。

続けて、本作に関して「内容が今の僕の実人生にリンクしている部分があるんです。不倫とか浮気をしているわけではないですよ(笑)」と笑いを誘いつつ「親が年を取ってきたりとか、子どもが成長して話をしなくなるとか、そういったものがキュッと詰め込まれています。しかも一幕の芝居で、2時間が実時間として、ずっとしゃべっている緊張感の中で緻密な会話劇を繰り広げるので、その緊張感がお客様に伝わって一緒に楽しんでいただけたらと思います」と期待を寄せた。

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世話好きなのに世話する相手がおらず、暇を持て余す郁子、何だか不思議でフワフワした存在のさつき、上昇志向が高くかつては成功を収めた桂、見た目も良く優しいので女性にモテるが長続きのしないタケオ。転換なし一幕で、三者三様の女神とプラス1な男による2時間一本勝負の会話劇がステージ上に繰り広げられる。

役柄だけでなく、俳優陣も同世代の豪華俳優陣4人が織りなす会話は真剣な話の中でも、次々と会話が脱線していく。「女の会話は脱線が基本」と劇中でも3人が語るなど、女性あるあるが随所に盛り込まれたやり取りと、女神たちに振り回される谷原演じるタケオによって綴られる物語は、登場人物立ちと同年代以上の観客だけでなく、若い人たちにも共感を抱かせる内容となっており、日本を代表する脚本家・岡田と笑いの中に人生の悲哀を描き出す田村によって贈られる上質な舞台となっている。

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同世代の4人が揃った会話劇となる本作について、和久井は「鏡前や稽古場でもずっと誰かしらが話していて、誰かしらが笑っているというところに加えて、劇場に入ってからも、自主的なセリフ合わせがずっとあって、声が途切れることがないという時間を過ごしております。これがお客様に届くようにと、そのままを観ていただけたらと思う4人です」とアピール。

同じく羽田も「同世代の女優さんたちと現場で会うのはこの頃あまりなくて、ここでこうやって出会えたのが神様からのギフトじゃないかなと思うぐらいです。同じような世代で、同じような時代に私たちはずっとキャリアを積んで、そしてここで出会えて、本当に至福の稽古時間でした。この舞台が終わった後もこのメンバーの友情が続いていくんじゃないかなという予感を感じています」と期待を募らせた。

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劇中の女性らしい会話の数々に関して、西田は「舞台上での会話が、私たちの実生活の会話となんら変わりがないんです(笑)。すごく自然な会話の中で毎日発見があって、本当に新鮮で楽しいです。私からしたら大先輩の方々なんですけど『何だコイツ』とか平気でそういうことが言い合えています」と語った。

その西田のコメントに、羽田が「こんな時にだけ人を年上にするのはよくないと思う(笑)」とツッコむと、あらためて西田は「同世代風なちょっと先輩なんですけど(笑)、そういう気持ちで舞台上でもちゃんと振る舞えればいいかなと思って楽しんでやりたいです」と意気込んだ。

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劇中らしいやり取りを見せる西田と羽田を見ながら、谷原は「尚美ちゃんが『大先輩』と言ったら、羽田さんが『同年代』と言ったりとか、稽古場でもさっきみたいな会話をずっと繰り広げていて、本当に仲が良い座組です。その会話に男の僕はツッコんではいけないし、かといってスルーするのも難しいしというそんな1か月間の稽古場でした(笑)」と笑顔で振り返った。

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最後に、和久井は「この物語は大人の女性ならではの”女性あるある”が本当にたくさん詰まっています。女の人たちが『私たち、そんなことないわよ』と思っていても、男の人から見たら『そうなんだよ、そういうとこあるんだよ。面倒くさいんだよ』と思うことも、いっぱい出てくると思います。大人の方も、これからその世代を迎える若い方にも、そこをぜひ楽しんでいただきたいです」と会見を締めくくった。

様々な感情が入り乱れながらも、脱線したり、他愛のない会話が入り混じったりと、3人の女神とプラス1の魅力的で可愛い大人たちが繰りなす上質な2時間を堪能できるほろ苦コメディーな会話劇だ。

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『不機嫌な女神たちプラス1』は、以下の日程で上演される。

【東京公演】10月19日(土)~10月27日(日) 紀伊國屋ホール
【愛知公演】11月2日(土)・11月3日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール
【大阪公演】11月6日(水)・11月7日(木) サンケイホールブリーゼ
【福岡公演】11月16日(土)・11月17日(日) イムズホール

【公式HP】https://www.fukigen-megami.com/
【公式Twitter】@fukigen_megami

(取材・文・撮影/櫻井宏充)

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この記事を書いた人

演劇、海外ドラマ、映画、音楽などをマルチに扱うエンタメライター。エンタステージ立ち上げからライターとして参加し、小劇場から大劇場のストレートプレイにミュージカル、2.5次元、海外戯曲など幅広いジャンルにおいて演劇作品の魅力を日々お伝えしています!

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