2019年10月に上演される舞台『フラガール』。その開幕直前に公開稽古が行われ、井上小百合(乃木坂46)、矢島舞美、富田望生、太田奈緒(AKB48)、福島雪菜(劇団4ドル50セント)、伊藤修子、総合演出の河毛俊作が登壇した。
原作となる映画『フラガール』は2006年に公開された日本映画の傑作。昭和40年という時代を背景に、エネルギーの石油化の波に飲まれながらも、需要の下がる石炭を堀り続ける福島県いわき市の炭鉱町。滅んでいく産業の中で働く人間が力強く生きていく姿をみごとに表現し、常磐ハワイアンセンター設立までのエピソードを、フラガールに生まれ変わっていく少女達の笑顔と涙で描ききった作品である。
新作舞台化するにあたり、総合演出にはフジテレビのトレンディドラマの産みの親である河毛と、プロデュース・構成演出として、現代エンターテインメント演劇の巨匠・岡村俊一が名前を連ねる。
公開された稽古シーンは、二つのフラのシーン。1曲目が始まると、パレオスカートを身につけたキャストたちが、かけ声と共に勢いよく登場。富田が演じる熊野小百合が踊りについていけずに泣いてしまう芝居が盛り込まれつつ、アップテンポで陽気なメロディーに合わせて、キャストたちがフラの代表的な楽器「ウリウリ」を振りながらの明るくにぎやかなダンスとなっていた。2曲目はスローで手の動作を中心とした伝統的なフラ。1曲目から一転しての優雅で流れるようなフラが華麗に披露された。
会見に登壇した河毛は「この作品をやっていて1番うれしいのはエンターテインメントの力ということを確信させてくれることです。今日的なテーマを持った作品をすばらしい女の子たちが苦境を笑顔とエンターテインメントで乗り越えていくという作品に作り上げるべく日々努力しております」と挨拶。
続けて「フラやタヒチアンは普通のダンスとは違い、もっとプリミティブな力強さや祈りを内包しています。その感じをつかんで、初日までにどこまでいけるかが成功の鍵だと思います。稽古をしていて、彼女たちの力をすごく信じています」と力強く語った。
フラガールのリーダー谷川紀美子役の井上は「紀美子はどこにでもいるような素朴な少女なのですが、どんどん成長していって、世の中と大人たちを変えていくというお話なので、自分もすばらしいキャストとスタッフのみなさんと成長していけたらと思います」と意気込みを披露。
かつて都会のダンサーだったにもかかわらず炭鉱の娘たちにフラダンスを指導することになる平山まどか先生役を演じる元℃-uteのリーダー矢島は「実際に舞台上に立って、お客様の前で踊る姿が物語とリンクしていてリアリティーのあるものになるんじゃないかと思います。みんなに心を突き動かされながら、まどかが人として成長していく姿を観ていただいて、感じ取っていただければ嬉しいですす」と期待を寄せた。
映画版では南海キャンディーズの山崎静代が演じた熊野小百合役の富田。この物語の舞台である福島県いわき市で生まれ育ち、常磐ハワイアンセンターにも小さい頃から行っていたという富田は「なんて華やかなお姉さんたちなんだというドキドキワクワクする感情を、今度は舞台を観に来てくださったみなさんに届ける側になるんだと思うと不思議な気持ちです」と胸の内を明かし「すごくリスペクトのある作品ですし、故郷に対する愛もありますので、含めて素敵な舞台をお届けしたいです」と意気込んだ。
紀美子の親友でフラガールを目指す木村早苗を演じるAKB48チーム8京都府代表の太田は「他のアイドルグループの方もいらっしゃることから、そのファンの方も観に来られると思うので、そのファンの方も奪いたいなと思います!」と宣言して笑いを誘いつつ、改めて「この作品を見て、家族の大切さを感じたので、観に来てくださったみなさんにもその思いを持って帰ってもらえる作品になれるようにがんばりたいです」と気合い十分に語った。
Wキャストで木村早苗を演じる劇団4ドル50セントの福島は「“天使すぎる劇団員”の福島です」と愛称を使っての挨拶を行いながらも「ちょっとキツイ肩書きだと思うんですけど(笑)」とはにかみ「所属劇団以外の舞台に出るのは初めてです。最初は緊張するかと思っていたんですけど、今はワクワクとドキドキで、一生懸命がんばろうという思いだけです」と意気込みを語った。
フラガールのメンバーで、「おっさんずラブ」のまいまい役で個性派女優として注目を集める伊藤は「私だけ40代で、みなさんについていくのは大変なんですけど、がんばろうと思っています」と苦笑いを浮かべながらも気を引き締めた。
映画版と舞台版の違いについて、矢島は「舞台の表現になると難しくなる部分があるので、稽古ではそれをどうしたら上手に表現できるのかを考えていっています。舞台ならではのフラガールができているなという感じがしています」と稽古段階でも手応えを感じている様子を見せた。
演出方法について質問された河毛は「一般的なイメージの罵倒系の演出家ではないです(笑)。役者ができない時はちゃんと理由があるはずで、その理由を探して解決するのが演出家の役目だと思っています。一人一人がちゃんと納得して動いてくれる形じゃないといいものにはならない。人を納得させるというのが演出家の大事な仕事の一つだと思います」と答えた。
その河毛に対して、井上は「すごく優しいし、指導も適切で分かりやすいです」と印象を語り「どら焼きをもらった時には、かわいらしいなと思いました(笑)」と笑顔を見せた。その話について、河毛から「甘い物が好きだと思ったので、どら焼きを持っていったら「甘いものは嫌いです」と言われて食べてもらえなかった(笑)」と裏話を披露されてしまい、井上は「すみませんでした」と思わず恐縮。
さらに河毛について、伊藤は「フラダンスの稽古の時に、河毛さんが女性更衣室に間違えて入ろうとしちゃったので注意したら、私、スタジオの事務員と間違えられてしまいました(笑)」という劇中での自身の事務員役に絡めたエピソードに会場は笑いに包まれた。
舞台『フラガール – dance for smile -』は以下の日程で上演される。
【東京公演】10月18日(金)~10月27日(日) 日本青年館ホール
【大阪公演】11月2日(土)~11月4日(月・祝) サンケイホールブリーゼ
【公式サイト】http://www.rup.co.jp/
(取材・文・撮影/櫻井宏充)