2019年7月1日(月)現地時間、米倉涼子が出演するミュージカル『CHICAGO』がアメリカ・ニューヨークで開幕。米倉はロキシー役として3度目となるブロードウェイの舞台に立った。さらに今回、劇中の名曲「ロキシー」の録音にも挑戦。7月26日(金)に世界デビューを果たす。また、同曲は来日ツアーに合わせて再発売される日本盤CDのボーナス・トラックとしても収録されることも発表された。本記事では、ブロードウェイで新境地を切り開いた米倉にアメリカ演劇界が沸いたオフィシャルレポートを紹介する。
ミュージカル『CHICAGO』は、禁酒法が施行されていた1920年代のシカゴが舞台。愛人を殺した悪女ロキシーは獄中生活の最中、一世を風靡したヴェルマと出会い意気投合する。そして出会った悪徳弁護士のビリーとマスコミの力を借りて裁判に挑む物語。1997年にはトニー賞で最優秀リバイバル・ミュージカル作品賞を含む6部門を獲得し、ブロードウェイでロでングラン記録を持つ作品となった。
劇場の入り口には“米倉涼子、ブロードウェイに舞い戻る”と英語で書かれたビルボードが観客の目を引きつける。さらには劇場で配布されるプログラムには「世界中で成功を収めた『CHICAGO』は日本のスーパースターのリョウコ・ヨネクラを歓迎する。観客を魅了するんだリョウコ!」と激励のメッセージが添えられていた。
今年はミュージカル『CHICAGO』がアメリカ内でも注目されている。同作品の生みの親である巨匠ボブ・フォッシーとブロードウェイ初演のロキシー役を演じた妻グエン・ヴァードンとの歩みや、『CHICAGO』誕生までの葛藤が丁寧に描かれた連続ドラマ『フォッシー/ヴァードン』がTV放送されたからだ。多くの視聴者から舞台を観たいという声が起こっている。
この日の客席は、世界中から来た観光客や、目の肥えたニューヨーカーで埋め尽くされた。主演ロキシー(米倉)が登場すると観客から拍手が沸き起こる。笑いなどの反応も同作品が通常上演されるのと同じタイミング。同じステージに立ってきた他のロキシー役の大女優が出演する場合と一切変わらないステージとなった。
劇場を訪れた観客は米倉演じるロキシーに、“アメージング”“エクセレント”“グレート”そして“ワンダフル”という称賛の言葉で口を揃える。オーストラリアから来たという女性は「リョウコが特段目立って素晴らしかった」。カナダから来たという女性二人組は「カーテンコールで紹介されるまで日本人だと気が付かなかったが、とにかく素晴らしかった」と言う。またアリゾナ州からの学生たちは「リョウコが役にピッタリで、役を自分の物にして完璧にこなしていたので、また彼女が観たい」と興奮気味に語った。
初日を終えた米倉は「キャストがウェルカムで迎えてくださり、いつでも力になるからと言ってくれて、本当に素敵なカンパニーです」と、ブロードウェイに帰ってきたことを実感した。「2012年、2017年の時とは違う緊張感があって、いろいろな想いが今回はありました。『CHCAGO』とずっと関わっていたいです。(同役を演じるようになって)気がついたら10年以上が経っていますが、それだけの歳月を使って役を深く知ることができ、演じることが楽しくなってきています。私にとって『CHICAGO』はミュージカルの中で一番好きな作品であり、夢でもあり、今日は舞台に立てて本当に嬉しいです」と初日の感想を述べた。音楽配信での世界デビューについて聞かれると「なぜ私が?という感じだったが、ありがたい経験でした」と大先輩を前に控えめに答えた。
コンビを組むヴェルマ役のアムラ=フェイ・ライトは、米倉について「『CHICAGO』は人生を映し出す鏡のようなもの。毎回彼女が来るたびに良い意味で変わっていっています。自分の個性を反映させた役作りをしていて、おもしろくて、我慢強く、そしてにじみ出る優しさが生かされている。年齢を重ね、人生経験を積み、それも活かされて“進化”しています
」とコメント。
ブロードウェイの舞台に立つには実力だけでは叶わない狭き門。ここで3度に渡り主演を務めた米倉涼子がアメリカ演劇界に残した功績は大きい。NYブロードウェイでの出演は7月14日(日)まで続く。その後、8月には日本公演が待っている。
【大阪公演】8月1日(木)~8月4日(日) オリックス劇場
【東京公演】8月7日(水)~8月18日(日) 東急シアターオーブ
【公式HP】https://theatre-orb.com/lineup/19_chicago/
(C)MASAHIRO NOGUCHI
(取材・文・撮影/オフィシャル提供)