神田沙也加主演のミュージカル『キューティ・ブロンド』が、2019年2月11日(月・祝)に東京・シアタークリエにて開幕した。2001年制作のアメリカ映画をミュージカル化した本作品は、2017年に日本版公演が上演されると、主人公のエル役を務めた神田のハマリっぷりや多幸感に満ちたストーリーが評判を呼び、チケットは全席完売。千秋楽に早くも再演が発表されたほか、神田はこのエル役で「第43回菊田一夫演劇賞」を受賞した。
あれから約2年。今回の公演では、翻訳・訳詞・演出の上田一豪と、神田をはじめ、植原卓也、樹里咲穂、新田恵海、木村花代、長谷川初範らが出演者が再集結。さらに、新たに平方元基が加わりさらにパワーアップ。その模様を、公開ゲネプロよりレポートする。
ブロンドヘアとピンクのファッションがトレードマークの主人公エル(神田)は、婚約間近だった彼氏のワーナー(植原)から一方的な理由で振られた悔しさをバネに一念発起。猛勉強の末にハーバード大学のロー・スクールへ入学するも、その華美な外見から学内でも悪目立ちしてクラスメイトたちから批判を浴びてしまう。しかし、そんな逆境に奮い立ったエルは、一人前の弁護士を目指して先輩のエメット(平方)らとともに奮闘していく。
本作品の見どころは、なんといっても見事な神田のハマリっぷり。ピンクの衣装に身を包み、ブロンドのロングヘアをなびかせて舞台を駆け回る姿は、まさにエルそのもの。天真爛漫な言動から目が離せず、くるくると変わる表情の豊かさにも惹きつけられる。
そんなエルの理解者となるのが、ちょっぴり冴えないけれど優しさにあふれた先輩のエメット(平方)と、姉御肌で繊細な一面も持ち合わせているヘア&ネイリストのポーレット(樹里)。エルにとって二人との出会いが大きなものになるが、エメットとポーレットにとってもエルの存在は欠かせず、互いを高め合っていくことの大切さがしっかりと描かれている。
いわゆるエルのサクセスストーリーだが、主要人物から愛すべき脇役まで個性豊かなキャラクターが揃っているところも魅力の一つ。エルの彼氏だったワーナー(植原)はキザだけど嫌味のない愛すべきキャラクターだし、ワーナーの新恋人であるヴィヴィアン(新田)はエルの敵役でありながら自然体で、物語が展開していくうちに実はヴィヴィアンこそ同性から好かれるキャラクターかもしれないと思わせてくれる。
美容法レッスンでビジネスを手掛けるブルック(木村)は登場シーンからエンジン全開で、エルとの掛け合いは笑い必至。エルたちが通うロー・スクールの教授であり弁護士でもあるキャラハン教授(長谷川)もクセのある人物で、パワフルで筋の通ったイーニッド(武者真由)をはじめ、セリーナ(まりゑ)、マーゴ(美麗)、ピラー(MARIA-E)のトリオもダイナミックなパフォーマンスで観客を飽きさせない。このほか、一人何役もこなすアンサンブルキャスト(青山郁代、折井理子、濵平奈津美、山口ルツコ、上野聖太、高瀬雄史、棚橋麗音、古川隼大)が居なくては成り立たず、エルの愛犬でチワワのブルーザーも大切な座組の一員だ。
ファッションやヘアメイクがしっかりと作りこまれているのはもちろんのこと、エルの部屋や私物など一つひとつのアイテムにもこだわりが見えて眼福さを感じるし、ミュージカルナンバーも明るくキャッチーなものが多い。耳に残るメロディーと一度聞いたら忘れられないフレーズにのせられて、会場から自然と手拍子が沸き起こる場面も見られた。
全体的にとてもテンポがよく、上演時間があっという間に感じるほど。ただ楽しいだけではなくて、何不自由なく育ったお嬢様が芯のある女性へと自立していくストーリーは観る者の心に訴えるものがあり、見終えたあとはここでしか味わえない爽快な気分が待っている。
神田演じるエルをはじめ、個性的なキャラクターたちが観客の背中をそっと押してくれるような『キューティ・ブロンド』の世界を、お見逃しなく。
ミュージカル『キューティ・ブロンド』は、2月28日(木)まで東京・シアタークリエにて上演。その後、下記の日程で全国ツアーを行う。上演時間は一幕1時間15分、休憩20分、二幕1時間15分の計2時間50分を予定。
【東京公演】2月11日(月・祝)~2月28日(木) シアタークリエ
【山形公演】3月3日(日)やまぎんホール
【静岡公演】3月6日(水)静岡市清水文化会館マリナート
【愛知公演】3月9日(土)~10日(日)刈谷市総合文化センター アイリス
【大阪公演】3月14日(木)~18日(月)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【広島公演】3月20日(水)~21日(木・祝)はつかいち文化ホールさくらぴあ 大ホール
【福岡公演】3月23日(土)~24日(日)久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【長野公演】3月27日(水)~28日(木)ホクト文化ホール 中ホール
【富山公演】3月31日(日)オーバードホール
(取材・文・撮影/堀江有希)