秋元康がプロデュースする、劇団4ドル50セントの第2回本公演『ピエロになりたい』が2018年11月22日(木)に東京・オルタナティブシアターにて開幕した。2018年2月の立ち上げ以降、週末定期公演を行いながら、個々の活動も活発に行う同劇団の新作となる本公演は、第1回本公演に引き続き脚本・演出に丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)を迎えた、ピエロの養成学校を舞台にした青春群像劇。
初日前には囲み会見とゲネプロが行われ、主演の湯川玲菜と仲美海(ダブルキャスト)、本西彩希帆、前田悠雅、福島雪菜、蕪祐典、奈波慎剛、岡田帆乃佳、長谷川晴奈が登壇した。
本作は、プロデューサーの秋元のアイディアから生まれた、ピエロを目指す若者たちの物語。9割が演劇経験のない演劇の素人集団として結成された、劇団4ドル50セントのメンバー内でオーディションを開催し、選ばれた9人のキャストがメインを務める。
劇団のリーダーを務める岡田は「1年で成長してきた姿をみなさんに見ていただけるよう、一生懸命がんばります」と挨拶。湯川も「みんなを引っ張っていく役どころなので、自分自身も成長した姿をお見せできたら」と意気込んだ。
仲は「Wキャストで主演を務めさせていただくので責任もプレッシャーもありますが、それよりも、この劇団のメンバーとスタッフの方々とこの舞台を作れたことを嬉しく思います。この素敵な舞台をお客さんに届けらえるようがんばります」と笑顔を見せた。
また、蕪は「全力で1公演も気を抜かず駆け抜けたい」、本西は「新しい“劇団4ドル50セント”をみなさまにお届けできるようがんばります」、前田は「喜劇ということもあって、劇団員同士で、どうしたら世界一おもしろい劇団になれるかを考える機会が多かったです。特に25人でのパフォーマンスに力を入れて、お客さんをワクワクドキドキさせられる舞台を作っていきたいです」とコメント。
福島は「もう初日を迎えるのかという不安もありますが、冷静に、でも心は熱く最後まで諦めずにがんばります」、奈波は「お客さんに見に来て良かったと思ってもらえるように全力で全公演に挑みたいです」、長谷川は「(自分は)体が小さいですが、存在感が出せる役です。千秋楽までがんばっていきたいと思います」と思いを語った。
本作の見どころは何と言っても、出演者全員で披露するジャグリングだ。舞台上では、25人全員で連続100回のカスケード(奇数個のボールの投げ技)にも挑戦する。湯川は「2ケ月間練習をしましたが、ギリギリまでできなくて・・・粘って粘って、涙を流しながら練習しました。投げ出したくなる時もありましたが、諦めなくてよかったです」と辛かった稽古を振り返る。
劇中では、カスケードのほかにも、シガーボックス(二つの箱で一つの箱を挟んで持ち、落とさずに操る)、皿まわし、デビルスティック(両手に持ったハンドスティックでセンタースティックと呼ばれる棒を叩いて浮かせたり、回したりする)、ディアボロ(空中で回転させるコマ)という全5種類のジャグリングを披露する。
さらに、仲は「この舞台のために、秋元さんが新曲を書き下ろしてくださっています。ピエロメイクをしてそれを披露するところが見どころです」とアピールした。
【あらすじ】(※ストーリーの内容に触れています)
どこかの国、どこかの町、どこかの学校。 その伝統ある学校には、世界中から若い男女が集まっていた。彼らはあだ名で呼び合い、年齢、名前などの素性を一切明かさないことを約束させられている。なぜなら、この学校はピエロの養成学校だから。ピエロは化粧をして道化を演じなくてはいけない。 彼らの素顔など、笑顔を売るピエロに必要ないのだ。
「ポーカー」と呼ばれる女の子がいた。名前の由来はポーカーフェイス、感情を表に出さず 無表情なため、そう呼ばれてきた。両親の離婚、学校での人間関係、世界に対する諦め・・・。彼女は感情を押し殺しながら生きてきたのだ。
幼い頃、母親に連れられて行ったサーカス。笑顔を売るピエロの存在が、いつしか彼女の夢になっていた。そして、自分を変えるため、ピエロの養成学校に入学したのだ。学校には、自分の顔が嫌いな少女、うまく笑えない女、自分がつまらない人間だから誰かを演じたい男など、一癖も二癖もある仲間たちが集まっていた。
ピエロの養成学校での厳しい授業を通して、自分を変えていこうとする生徒たち。校長からは卒業する条件として、全員で100回連続でカスケードを成功させるように言われる。心を一つにし、カスケードに挑戦した生徒たちは、見事難題をクリアし卒業が認められた。
しかし、世の中の情勢は刻々と変化し、戦争は激化。ピエロは不謹慎な存在といわれ、活動も禁止になってしまう。そんな状況の中、ポーカー(湯川・仲)は、悲しみが溢れる今だからこそ、学校をサーカス小屋にして、サーカスを開催しようと提案する・・・。
25人のキャストたちが、ステージ上で揃ってジャグリングする姿は圧巻。まるで本物のピエロのように、満開の笑顔で難しい技を決めていくキャストたちに、劇場は一気に飲み込まれた。
その後に続いた、ダンスと歌のド派手なパフォーマンスも印象深い。本作は劇団にとって、2回目の公演だ。素人も多かったという劇団だけに、統制がとれたダンスを見せるまでには相当な苦労と計り知れない練習、そして熱い思いがあったことは想像に難くない。華やかに舞いながらも、彼らの思いがストレートに伝わってきて、見ているこちらも込み上げるものがあった。
少年少女たちの成長、そして夢を追う姿を通し、観客も夢見る力を取り戻していく。そんな温かな世界が広がっていた。
劇団4ドル50セント第2回本公演『ピエロになりたい』は11月22日(木)から12月2日(日)まで東京・オルタナティブシアターにて上演される。
(取材・文・撮影/嶋田真己)