2018年9月16日(日)にミュージカル『マイ・フェア・レディ』が東京・東急シアターオーブにて開幕した。その初日前日には囲み会見が行われ、朝夏まなと、神田沙也加、寺脇康文、別所哲也が登壇した。本記事では初日前会見の模様をお届けする。
珠玉の名曲とともに再演を重ねて日本初演55周年を迎えた『マイ・フェア・レディ』。ミュージカル史に燦然と輝く不朽の名作が“新プリンセス”を迎えて帰ってきた。新生イライザをWキャストで演じるのは、宝塚退団後初主演となる朝夏と、ミュージカル界での活躍目覚ましい神田。イライザを淑女に仕立てるヒギンズ教授には、2013年からの出演となる寺脇と、新たにWキャストに加わる別所。演出は、日本初演50周年となった2013年から引き続きG2が務める。
衣裳姿で会見に登壇した4人。5月に行われた製作会見で「自分なりのイライザを見つけたい」と語っていた朝夏は「イライザ自身の変化ももちろんなんですが、共演者の皆さんとお芝居をやっていくことで、いろんな発見がありました。前半から後半にかけての外見の変化はもちろんですが、心の変化がハッキリとお客様に伝わるようなイライザを目指したいです」と稽古を振り返った。
イライザを演じることが念願だったという神田。実際に舞台に立った気持ちとして「ずっと幸せです。毎日、ナンバーを歌わせて頂けるのも、お衣裳を着替えることも全部が嬉しかったです。念願でしたが、そこがゴールではなく、そこからイライザの気持ちや動きについて、稽古の中で発見もいっぱいしました。芝居のおもしろさやシアターオーブに立ってみたことで、『ミュージカルっていいな』と原点に立ち返る思いです。とても幸せな体験をさせていただいているとつくづく感じています」と幸せをかみしめながら語った。
4人の中で唯一の『マイ・フェア・レディ』経験者である寺脇は、ヒギンズ役を演じる上で大事にしている点について「一番怖いのは、過去の自分の芝居をなぞってしまうこと。今回は、新鮮な思いをもう一度取り戻す時間がありましたし、それにG2さんの演出では、以前よりも大人っぽいヒギンズに作りかえようというのがありましたので、苦労はしましたが、なんとかたどり着けました」と説明すると、続けて「でも、どんなヒギンズになろうとも、彼は明るく陽気な部分というのは純粋で、そこだけは絶対に失わないように気をつけています」と加えた。
名だたるミュージカル作品に出演し続けている別所は、ヒギンズの魅力について「彼は言語学者なので、言葉へのこだわりがこれほどまであるのかと非常に感じています。それと同時に、言葉の向こう側にあるものに対する思いとして、その心がどこにあるかということを、イライザとの出会いで教えてもらっているんじゃないかと思っています」と解説。そして、「素晴らしい俳優のみなさんが演じ継いできているものなので、それを大切に、僕なりに情熱を持って、チャーミングな神田イライザとともに作り上げたいと思います」と意気込みを披露した。
イライザが下町の娘から貴婦人へと変化することに対して、演じる上で工夫した点を質問された朝夏と神田。朝夏は「前半どれだけ、ワイルドにガサツになれるかというところと、後半どれだけレディになっていけるかというところを、バランスを取りながら、一人の人間として、説得力があるような人物として描くことを考えています。ですが、舞台に立った時には、寺脇さんや共演の皆さんから受ける心で感じたものを、そのままストレートにお芝居ができたらいいなと思っています」と答えた。
神田は「イライザの変化といっても、正しい言葉使いや知性を身につけたことで、イライザがもともと持っていた魅力が、より浮き彫りになっているんだと思います。そういう構図が後半に見えるかが自分の中では勝負です。表面的な変化ではなく、不変のものをいつも持っていようと考えています。いつも全力で、いつも目の前にあるものに一生懸命という女性であれば、もともとの持っていた魅力が華やかに最後に花開くと思って、何かを狙わずに、奇をてらったことをしないように気をつけたつもりです」と役への思いを熱く語った。
それぞれのペアの話となると、寺脇は「今回はG2さんの配慮もあり、お互いの稽古をほとんど見ることなく、シャットアウトしていたのが良かったと思います。稽古の最後あたりで『こんなにも違うのか!』と見えましたし、別所君の稽古から『ここはこういう風になるんだよな、いただき!』と盗ませて頂きました(笑)」と裏話を披露すると、会場が笑いに包まれた。さらに、「それにより、まったく色と形の違う花が今回は咲いていると思います。それぞれが魅力的なチームになったので、両方を観て欲しいですね」と呼びかけた。
別所も「そうなんです。本当にそれぞれがそれぞれの色というんでしょうか、鳥類と魚類ぐらい違いますね」と突飛な例えで、登壇者たちの笑いを誘った。さらに「同じ作品なんですけど、それぞれの色が美しく出るようにがんばりたいです。具体的な違いとして、ヒギンズがイライザに言葉を教えるシーンで早口言葉が違っていたりと、そのような、いろんな違いが要所にあります」と見どころを語った。
最後に、朝夏は「素敵な劇場で、セットも衣裳もオーケストラの音楽も素敵です。その中で共演者の皆様と、この世界でイライザとしていられることを幸せに思って、まずは初日をしっかり開けて、別所さんと神田さんにお渡しできるようにがんばります」と意気込み、神田は「スタッフの皆さんがイライザに変身させてくれる感覚を改めて感じました。だから、舞台の真ん中に立つということも改めて大きなことですし、喜びを持って、ステージの上に立てたらと思います」と会見を締めくくった。
ミュージカル『マイ・フェア・レディ』は9月30日(日)まで、東京・東急シアターオーブにて上演。その後、福岡、広島、大阪、愛知、大分を巡演する。日程の詳細は以下のとおり。
【東京公演】9月16日(日)~9月30日(日) 東急シアターオーブ
【福岡公演】10月6日(土)・10月7日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【広島公演】10月10日(水)・10月11日(木) 上野学園ホール
【大阪公演】10月19日(金)~10月21日(日) 梅田芸術劇場メインホール
【愛知公演】10月24日(水)・10月25日(木) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
【大分公演】10月31日(水)・11月1日(木) iichiko 総合文化センター iichiko グランシアタ
(取材・文・撮影/桜井宏充)