昨年、日本全国で120公演以上のツアーを行ったキエフ・クラシック・バレエが今年も来日。2018年7月より“チャイコフスキーの3大バレエ”と呼ばれる『くるみ割り人形』、『白鳥の湖』、『眠れる森の美女』から、ハイライトシーンをお届けする。
さらに昨年に引き続き今年も、2014年ローザンヌ国際バレエコンクールで第1位を獲得し、現在パリ・オペラ座バレエ団で活躍する二山治雄と、2017年同コンクールで第3位受賞、先頃英国ロイヤルバレエスクールを卒業した中尾太亮がゲスト出演、初々しくも華麗なパフォーマンスを見せてくれる。また本公演は4歳以上で入場可、チケット価格も手頃に設定されているので、夏休みのファミリーイベントにもぴったり。7月23日(月)には東京・東京文化会館での公演後、二山と中尾両名の囲み取材が行われた。
まず『くるみ割り人形』からの抜粋では、華やかな群舞の花のワルツ、中国の踊りやアラビアの踊りといった個性的で楽しいソロのダンサー達、そしてヒロインのクララと王子様が踊るパ・ド・ドゥ(二人の踊り)と、クラシック・バレエの楽しさ、美しさをまさにハイライトで見せる。
続く『白鳥の湖』第1幕第2場のシーンでは、まず悪魔ロットバルトが舞台に登場。主役であるオデット姫はこのロットバルトに魔法をかけられて昼間は白鳥に姿を変えられているのだが、このロットバルトは真っ黒の衣裳で怖さも感じさせながらも、優雅な魅力を振りまく。そして湖の畔でオデットは王子と出会って恋に落ち、オデットと同じ魔法にかかった娘達の群舞、オデットのソロ、オデットと王子のパ・ド・ドゥや有名な「四羽の白鳥」などの踊りが繰り広げられる。白鳥達の踊りやオデットのソロは、クラシック・バレエの中でも最も美しい場面の一つ。「四羽の白鳥」ではキエフ・クラシック・バレエのプリンシパルである長澤美絵、東京シティ・バレエ団の島田梨帆も出演。
休憩の後は、『眠れる森の美女』より、ローズ・アダージオと呼ばれる、主人公オーロラ姫(長澤)が16歳の誕生日に求婚者達からバラを贈られる、というシーンが踊られる。それから場面は飛んで、オーロラ姫と姫を助けたデジレ王子の結婚式のシーン。おとぎ話なので、招待客として長靴をはいた猫や青い鳥などが登場。王子を踊るのが二山、青い鳥を踊るのが中尾。二山は王子らしいノーブルで美しい雰囲気を持つ。そして足を上げる時やジャンプの時に、重力を感じさせない浮揚感のようなものがあり、回転にも余裕があって、見ていて心地良い。中尾は若さと喜びが全身から溢れるような、はつらつとした青い鳥を見せてくれた。
現在二山はパリ、中尾はロンドンが活動拠点だが、日本と海外の違いについて二山は「パリでは稽古の時から、本番のステージも舞台が斜めなんですけど(客席から見やすいように)、日本は舞台が平らなので踊りやすいです」とコメント。
二人のお互いの関係について、まず二山は「去年の夏のこの公演で知り合い、そこからだんだん仲良くなって、僕がロンドンに行った際も会ったりして、すごく親交が深まりました。やはり一緒の舞台に立つということで、お互いお客様を感動させられるような舞台を一緒に築き上げたいという気持ちを感じながらやっていると思います」と話すと、中尾は「3、4年前にローザンヌ国際バレエコンクールで二山くんが1位をとったというニュースを僕が日本にいる頃に知りました。それから数年越しにこうやって一緒の舞台に立つことができるなんて想像もしてなかったし、僕はまだちょっと一緒に躍らせてもらえることに緊張しています」と微笑ましい心情を述べた。
この『3大バレエ』の見所について、二山は「ロシアのバレエの代表作3つのハイライトという、初めてバレエを見るお客様にも見やすい内容で、見て楽しい作品になっていると思います。」と語り、中尾は青い鳥の踊りについて「すごく大変です。この踊りは特にずっとジャンプしているんですけど、足も疲れますし、でも表情はしっかり作っているので、僕の中ではブルーバード(青い鳥)はなかなか大変なバレエの一つだと思います」と解説。
二山は王子役について、「王子というのはやはり長身な方がやるイメージなので、その中で自分の身長を生かした王子を見せる、というのがすごく難しいですが、エレガントな部分もあり、プラス自分のテクニックを見せられるような踊りを追求しながら練習しました」と、その真摯な姿勢をのぞかせた。
この公演では4歳以上から入場可、ということで、二人に子供達へのメッセージを尋ねると、二山は「僕はまだまだダンサーとして未熟なので、僕自身もさらにこれからもっとバレエを楽しみながら励んでいきたい。そして小さいお子さんにももっとバレエの楽しさを知ってもらいたい。そしてまたローザンヌのコンクールや、いろんなバレエ団に行ってくれる生徒さんがいれば、すごく嬉しいです」とコメント。
中尾は「僕のプロのキャリアは8月末から始まるんですが、この生徒の段階でプロフェッショナルの方達と躍らせて頂く機会を得られるのは、やはり小さい時からバレエをしていて、日々の努力が実ったのかなと思います。ロンドンの先生に言われた言葉ですが、『夢を見ることを忘れないこと。それが一番大事だ』と教わったので、本当にその通りだと思います。小さい時からの夢をいつになっても忘れずに、それを追い続けていると、僕も小さい時の夢、プロのバレエダンサーになるという夢が叶おうとしていますし、夢を忘れないということが一番大切だと思います」と語ってくれた。
『チャイコフスキー 夢の3大バレエ 名場面集「くるみ割り人形」「白鳥の湖」「眠れる森の美女」より』は7月13日(金)から9月2日(日)まで全国各地で上演。詳細は公式サイトにてご確認を。
【公式サイト】https://www.impres-tokyo.com/
(取材・文/月島ゆみ、写真/オフィシャル提供)