ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』〝はじまりの巨人〞が、2018年4月28日(土)に開幕した。シリーズ6作目となる本公演では、いよいよ始まる春高予選での次世代“小さな巨人”対決が描かれる。初日前日には、公開ゲネプロと囲み会見が行われ、日向翔陽役の須賀健太、影山飛雄役の影山達也、縁下力役の川原一馬、照島遊児役の船木政秀、中島猛役の柳原凛、演出・脚本のウォーリー木下が登壇した。
東京、兵庫など5都市での上演となり、演劇「ハイキュー!!」史上最大規模のキャパシティで上演される〝はじまりの巨人〞に向け、須賀は「(前作の)〝進化の夏〞で、僕は雨男から『進化しよう』と思って(今回の)劇場入りを楽しみにしていたのですが、僕が劇場に入った日から見事に曇天が続いています・・・(笑)」と冗談めかしていたが、初日は見事晴天で迎え、“進化”を証明(?)。
また、初登場の対戦校に触れ「今回も、新たに条善寺高校、和久谷南高校、白鳥沢学園が登場しました。原作でも、なくてはならないストーリーがたくさん入っているので、刺激的な日々を送っています。一人でも多くの方に楽しんでいただけたらと思います」と本公演への思いを語った。
影山も「春高をかけた絶対に負けられない戦いが始まります。カンパニー全員で勝ちにいきたいと思っております。かいてきた汗は嘘をつかないと思うので、全力で最後まで駆け抜けていきたいと思っています」とコメント。
また、シリーズを通して出演する川原は「今回、縁下というキャラクターがドラマを作る作品になっているので、そこを見ていただきたいのはもちろんですが」と役としてのアピールもしつつ、「僕らの世代が作る“新しい演劇の形”という思いを根底に持って取り組んでいます。そういう意気込みも、作品を通して感じてもらえたら」と意気込んだ。
本シリーズ初参加となる船木は「プレッシャーがすごかったです」と本音を吐露しながらも「条善寺高校らしく、楽しんで盛り上げていきたいなと思っています。烏野にいい影響を与えられるようがんばります」と挨拶。
同じく、シリーズ初参加の柳原は「僕は、元々バレーボールをやっていて、(原作の)和久谷南戦にはすごく思い入れがあったので、和久谷南のエース役に選んでもらえてすごく嬉しかったです。和久谷南(のキャスト)は休みの日も集まってダンスのレッスンをしてきました。そこも見ていただけたら」とチームの結束力を示した。
演出・脚本のウォーリー木下は「今までやってきたことも踏まえながら、普遍的なおもしろいエッセンスをいっぱい詰め込みつつ、秋公演に向けて未来がある作品にしたいと思います」と今回の演出について説明。
2018年秋の新作公演〝最強の場所(チーム)〞で卒業が決まっている烏野キャストたち。須賀は、秋公演への思いを「春公演は春公演として成功させることを一番に考えていますが、次が決まっているからこそできること、出せる色を演出的にもバンバン取り入れた公演になっています。〝はじまりの巨人〞を見ていただければ、〝最強の場所(チーム)〞がより楽しめると思います」と明かし、「映像出演も合わせると今回(シリーズ)最多キャストになっていて、僕らが演じているキャラクターの数も60を超えているそうです。なので、全キャラクターをしっかり見ていただいて、僕らの秋公演への思いも感じてもらえたら」とメッセージを送った。
(以下、一部物語に触れています)
幼い頃に見た“小さな巨人”に魅せられ、バレーボールを始めた少年・日向翔陽。憧れの烏野高校排球部に入部し、中学最初の試合で惨敗した天才プレイヤー・影山飛雄と出会い、最初は反目していたが、困難を一緒に乗り越えることで互いを認め合い、絆を深めていく。インターハイ予選では惜敗した烏野高校だったが、春高予選を目指し、夏の東京合宿を開催。各々進化を遂げ、いよいよ始まる春高予選に挑む―。
条善寺高校戦、和久谷南高校戦のほか、音駒高校と梟谷学園高校の対戦、白鳥沢の“ウシワカ”こと牛島若利(有田賢史)も登場し、秋公演へ向けて加速していく物語。シリーズ通して注目されてきた、アクロバティックでダンスフルな試合シーンはより迫力を持って展開し、烏野高校10人、条善寺高校6人、和久谷南高校6人が入り乱れて舞う姿は圧巻だ。
条善寺高校は、船木演じる主将・照島を中心に、「アソビ」をモットーとする自由奔放なバレーで烏野を翻弄する。初登場という緊張感を漂わせながらも、チーム一丸となって盛り上がり、楽しみつくそうというようなパワーを放つ6人の芝居は、まさに条善寺のプレイスタイルそのもののようだった。
和久谷南高校とは、須賀演じる日向と、柳原演じる中島による“次世代小さな巨人”対決が繰り広げられる。柳原の「元バレーボール経験者」という、確かなテクニックに裏打ちされた表現には、本物の試合を観ているような感覚をもたらす。また、芝居で前面に立つキャストとダンスが得意なキャストが協力し合い、作り上げたフォーメーションは、努力は裏切らないことを体現している。
和久南戦では、もう一つ、“根性無しの戦い”が描かれる。その中心となるのが、川原演じる縁下。初演からチームを支えてきた一人だが、縁下はあまり目立った存在ではなかった。同じ2年の田中龍之介(塩田康平)、西谷夕(渕野右登)のように、高い身体能力と強いメンタルを持っているわけでもない。1年の日向や影山のように、驚異の才能を持っているわけでもない。同じく1年の月島蛍(小坂涼太郎)のように恵まれた体格を持っているわけでもない。
川原は、アクロバティックで目まぐるしく光景が変わる舞台の中で、縁下の心情を丁寧に見せてくれる。決してスーパーマンではない等身大の少年の葛藤と、前へ進もうともがく姿は、多くの人が“分かる”姿なのではないだろうか。そして、縁下に続いてもう一人、1年の山口忠(三浦海里)ももがいている。次作への期待が高まる。
烏野の3年には、田中啓太が再び澤村大地役として戻ってきた。新しく菅原孝支役を務める田中尚輝も、抜群の身体能力を見せチームを支える。東峰旭役の冨森ジャスティンとのチームワークもばっちりだ。
そして、座長であり、シリーズを引っ張り続けてきた須賀が、中心にいる絶対的な安心感。それと同時に感じる、積み上げてきたキャリアに甘んじることのない貪欲さ。影山とのコンビネーションも一層高め、「やることがいっぱいだ」と言わんばかりの姿を見せ続けてくれることだろう。
また、時を同じくして東京で行われている音駒高校対梟谷学園高校の試合を、孤爪研磨役の永田崇人、黒尾鉄朗役の近藤頌利、木兎光太郎役の東拓海、赤葦京治役の高崎俊吾の4人が、印象的に差し込んでくる。試合以外での姿を含め、その活躍ぶりをお見逃しなく。
開演前や幕間のアナウンスでも聞かれるが、これはまさに「試合」である。汗と涙と喜びがつまった劇場という名の“体育館”で、ぜひ、キャストと共に“青春”の一時を共に過ごしてほしいと思う。
ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!! 」〝はじまりの巨人〞は、以下の日程で上演。なお、大千秋楽公演となる6月17日(日)18:00公演では、全国の映画館でライブ・ビューイングが行われる。詳細は、公式HPにてご確認を。
【東京公演】2018年4月28日(土)~5月6日(日) 日本青年館ホール
【兵庫公演】2018年5月12日(土)~5月13日(日) あましんアルカイックホール
【福岡公演】2018年5月18日(金)~5月20日(日) 福岡国際会議場 3F メインホール
【宮城公演】2018年5月25日(金)~5月27日(日) 多賀城市民会館 大ホール
【大阪公演】2018年6月1日(金)~6月3日(日) オリックス劇場
【東京凱旋公演】2018年6月8日(金)~6月17日(日) TOKYO DOME CITY HALL
【公式HP】http://www.engeki-haikyu.com/
※高崎俊吾の「高」は「はしごだか」、「崎」は、「大」の部分が「立」が正式表記
(C)古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会
(取材・文・撮影/嶋田真己、エンタステージ編集部)