英国作家パメラ・トラバースの小説をもとにディズニーが映画化、それを舞台として蘇らせたミュージカル『メリー・ポピンズ』。日本初上演となる本作が、プレビュー公演を終え、2018年3月25日(日)より東京・東急シアターオーブにて開幕した。開幕前には公開フォトコールと囲み会見が行われ、濱田めぐみ、平原綾香、大貫勇輔、柿澤勇人ら出演者に加え、オリジナル演出のサー・リチャード・エア、日本プロダクション演出のジャームズ・パウエル、振付のジェフリー・ガラットが取材に応じた。
この日、公開されたのは「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」「チム・チム・チェリー(リプライズ)」「ステップ・イン・タイム(リプライズ)~ハウス」の3曲。それぞれが平原・柿澤、濱田・大貫の両バージョンで披露された。
「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」は、タイトルロールにもなっているメリーが“何を言うかではなく、どう言うかが大切”ということを、彼女の友達であるバートと共に、自分がナニー(子守り)をしているジェーンとマイケルに教えてやるナンバー。
ゆっくりとしたメロディから始まり、だんだんとスピードアップするこのナンバーでは、歌の上手さはもちろんのこと、一音一音に振付が入るため、ハイレベルなダンスの技術が求められる。メリー、バートはもちろん、アンサンブルも驚きや喜びの表情を崩さず、拍手の音が鳴りやむその時まで役を演じきってみせた。
雰囲気はガラッと変わり、2曲目はメリーとバート、二人だけで歌う「チム・チム・チェリー(リプライズ)」。ロッド(煙突掃除棒)を背負いながら、自分に言い聞かせるように、そして、メリーに語りかけるように歌うバートと、屋根の上に腰掛けながらそれを見つめるメリーの間には、友人としての温かい信頼関係が見えてくる。
最後は、バートが煙突掃除屋の仲間たちを紹介する「ステップ・イン・タイム(リプライズ)~ハウス」。迫力あるタップダンスの音に圧倒されるのもそのままに、そのまま場面が転換していき、今度は煙突掃除夫たちがジェーンとマイケルの家であるバンクス家で大騒ぎ。誰かが言葉を発すれば、それをその言葉をメロディに乗せて歌いだし、軽快なタップが劇場内に響き渡った。
見ごたえのあるナンバーを立て続けに披露した出演者たちだが、エアはそんな彼らを「作品に愛情を持って取り組んでいることが伝わります」と称賛。ガラットも「舞台上ではメリーが色々な魔法が起こしますが、日本キャストの素晴らしさを考えると、この公演自体が魔法みたいなものですね」と大きく頷いた。
会見では、平原が「楽しい場面はさらに楽しく、泣ける場面はさらに泣けるものになっていくと思います。アンサンブルもハイレベルですし“皆が主役”という感じです」と、より質の良いものになっていくことをアピール。さらにこれまでの稽古期間を振り返り「自分のことで必死になってしまっても、仲間が助けてくれるので、素晴らしい仲間に囲まれていると実感しています」と語った。
「必死に命がけでやっている舞台です」と、本作への覚悟を見せた柿澤。「休みなく、朝から晩まで稽古してきたので、その努力の成果が表れるように初日から千秋楽まで支え合ってやっていきます」と意気込んだ。
公開稽古では息の合ったハモリやダンスを見せてくれた二人だが、実は平原は稽古に入る前に「私、柿澤さんとはうまくやれない気がする・・・」とこぼしていたのだと、柿澤本人が衝撃告白。柿澤の人見知りな部分を、平原が「嫌われたのかもしれない」と勘違いしたのだと冗談めかしながら打ち明けた。平原は、それに対し「ふたを開けてみたら、誰よりも相談に乗ってくれましたし、落ち込んでいる時に声をかけてくれました。かっきーに救われることがたくさんありました」と、柿澤を愛称で呼びながら、照れた笑みを浮かべた。
本作の見どころの一つであるフライングだが、世界各国で上演されてきた中で、日本版のフライングは“最長飛行”となっている。濱田はフライングについて「舞台と客席という隔たりを超えて、舞台上のキャラクターが飛び出てくる躍動感や立体感があります。どの階からも、どの角度からも楽しんでもらえます」と力説。さらにフライング中に恐怖はないと話し「飛ぶと重力がなくなって、自由になった感覚がします」と明かした。
大貫は、3月18日(日)より行われたプレビュー公演を振り返り「最後のシーンをやっている最中に、物語的にはこれでおしまいなのですが、僕自身や日本公演としては“これから始まるんだ”と思い、胸が熱くなりました。また、お客さんがいることがこんなに自分のエネルギーになるんだと実感したプレビュー公演でした」と、本公演に向けて意識を高めている様子。
会見の最後には、平原と濱田が「作品を大事に、手や顔の動き一つ一つ丁寧に作っています。皆さんの心の中にある『メリー・ポピンズ』と一致したらいいな、と思います」(平原)、「この作品を初めて見た時、自分の中にある、知らない自分と出会えました。お客様も同じように、素敵な自分自身との出会いをして欲しいです」(濱田)と締めくくった。
ミュージカル『メリー・ポピンズ』は、5月7日(月)まで東京・東急シアターオーブにて、5月19日(土)から6月5日(火)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて上演。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)