2018年2月28日(水)に「第25回読売演劇大賞贈賞式」が東京都内にて行われた。読売演劇大賞は、1994年に創刊120周年を迎えた読売新聞の記念事業として、古典から現代劇まで演劇の全分野を網羅し、舞台芸術の発展を願って設立された。第25回は、9人の選考委員の選出した候補者、作品に対し、演劇関係者108人が投票を行い、それをもとにした最終選考会で決定。
第25回読売演劇大賞各賞の受賞者は、以下のとおり。正賞は佐藤忠良制作のブロンズ像「蒼穹(そうきゅう)」、副賞は大賞・最優秀女優賞に200万円、ほかの最優秀賞並びに杉村春子賞、芸術栄誉賞、選考委員特別賞に各100万円が贈呈された。
第25回の大賞・最優秀女優賞を受賞したのは、宮沢りえ。宮沢は、『足跡姫~時代錯誤冬幽霊(ときあやまってふゆのゆうれい)~』『クヒオ大佐の妻』『ワーニャ伯父さん』での演技を評価された。最優秀賞に関して、宮沢は第12回、第16回でも受賞をしており、3度目で大賞に輝いた。なお、大賞を受賞した女優は、杉村春子、黒柳徹子、森光子、大竹しのぶに続く5人目。
女優賞のプレゼンターは、昨年度最優秀女優賞を受賞し、宮沢とは過去4度共演をしている鈴木杏が務めた。鈴木は、宮沢に「ご縁がありまして、りえさんには“ストーカー”と呼ばれています」と明かしながら、「共演する度に、人を惹きつけて離さない力がどんどん増していて、もしかして、りえさんは魔女なのかなと思っていました(笑)。これから、さらにパワーアップして魔女になっていくりえさんをストーカーできるように、私も精進したいと思います」と祝いの言葉を贈った。
ブロンズ像を手に、マイクに向かった宮沢は、緊張の面持ちで「素晴らしい先輩たちを差し置いて、(大賞受賞者の)あの席に座っていることの居心地の悪さったらなかったです(苦笑)」と前置きをしながら、「爪がはがれるんじゃないというぐらい高すぎるハードルを与えてくださったプロデューサーの方たち、ダメ出しばかりでちっとも褒めてくださらない演出家の方たちのおかげで、今、私はここにいるんだと思います」と挨拶。
また、これまで大賞に名を刻んだ女優陣の名前を聞いて、膝が震えたそうで、「この賞の重さと歴史を感じました。これをいただくには本当に覚悟が必要だなと思います」と、受賞を噛み締めた。
初舞台を踏んでから15年。宮沢の胸の内には、忘れられない言葉がたくさんあると言う。中でも、特に“忘れられない”と、蜷川幸雄がある演者を叱咤した「自分をもっと疑え」という言葉を挙げ、「その言葉は、私の中にすごく響きました。役と向き合って生きるには、『本当にこれでいいのかな』と疑い続けることが誠実さにも繋がると思っています。今までも、これからも、丁寧に、表現者としてひたむきに参りたいと思います。本当にありがとうございました」と締めくくった。
なお、優秀女優賞は新橋耐子、藤井由紀、森尾舞、若村麻由美の4名に贈られた。各賞の受賞者は、以下のとおり。
◆大賞・最優秀女優賞
宮沢りえ
『足跡姫~時代錯誤冬幽霊(ときあやまってふゆのゆうれい)~』『クヒオ大佐の妻』『ワーニャ伯父さん』の演技
◆最優秀作品賞
『子午線の祀り』(世田谷パブリックシアター)
◆最優秀男優賞
橋爪功
『謎の変奏曲』の演技
◆最優秀演出家賞
永井愛
『ザ・空気』の演出
◆最優秀スタッフ賞
土岐研一
『天の敵』『散歩する侵略者』の美術
◆杉村春子賞
シライケイタ
『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』『袴垂れはどこだ』の演出
◆芸術栄誉賞
仲代達矢
◆選考委員特別賞
『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』
◆優秀作品賞
『ザ・空気』『怪人21面相』『屠殺人ブッチャー』
◆優秀男優賞
市村正親、佐川和正、佐藤誓、中村雀右衛門
◆優秀女優賞
新橋耐子、藤井由紀、森尾舞、若村麻由美
◆優秀演出家賞
小笠原響、小山ゆうな、日澤雄介、和田憲明
◆優秀スタッフ賞
鎌田朋子、塵芥、乘峯雅寛、前田文子
【選考委員(50音順)】
青井陽治(演出家、翻訳家、訳詞家、劇作家)
大笹吉雄(演劇評論家)
河合祥一郎(東京大学教授)
中井美穂(アナウンサー)
西堂行人(演劇評論家、明治学院大学教授)
前田清実(振付家、舞踊家)
みなもとごろう(演劇評論家、日本女子大学名誉教授)
矢野誠一(演劇・演芸評論家)
渡辺保(演劇評論家)
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)