コミック累計発行部数1000万部以上、第10回手塚治虫文化賞新人賞、第31回講談社マンガ大賞(一般部門)受賞に輝く大人気高校野球漫画を原作とする舞台「おおきく振りかぶって」が、2018年2月2日(金)に東京・サンシャイン劇場で開幕した。初日前には公開ゲネプロと囲み会見が行われ、主演の西銘駿、猪野広樹、久住小春、白又敦、納谷健、脚本・演出の成井豊が登壇。見どころや稽古中のエピソードなどを語った。
【あらすじ】
祖父の経営する中高一貫校の中等部から県立西浦高校に進学した三橋廉(西銘)。
中学時代は野球部のエース投手であったが、チームメイトから「ヒイキでエースをやらせてもらっている」とうとまれ続けたため、極端に弱気で卑屈な性格になってしまった。
暗い思い出をぬぐいきれないまま、野球への未練と共に放課後の野球グラウンドを眺めていると、新設されたばかりの硬式野球部の女性監督・百枝まりあ(久住)から強引に入部させられてしまう。
部員わずか10人、全員1年生の中で、はからずもエースを任される三橋。
三橋の秘めた力をいち早く見抜いた捕手・阿部隆也(猪野)との出逢い、あらたなチームメイトに支えられながらエース三橋、そして西浦高校野球部の挑戦が始まる・・・。
舞台出演2作目にして初座長を務める三橋廉役の西銘は、「最初は緊張と自分に座長が務まるのかという不安がありましたが、共演者の皆さんが優しく接してくれて、約1ヵ月の稽古での絆も深まったので、今は安心して千秋楽まで突っ走ることができるんじゃないかなと思っています」とニッコリ。
ステージの見どころについては、「内気で弱気な三橋がバッテリーを組む阿部くんやチームメイトのおかげでどんどん人間性が変わっていくところ。アニメだとあまり感情を表に出さない三橋ですが、舞台では観客の皆さんにストレートに伝わるように胸に秘めた想いを出していくようなお芝居をしています。原作コミックやアニメでは時間をかけて表現していた部分を約2時間のお芝居にギュッと凝縮しているので、そういう意味では全部のシーンが見どころだと思います」とアピールした。
阿部隆也役の猪野は「出演オファーをいただいて初めて原作コミックを読んだのですが、可愛らしいタッチの絵なのに中身はすごく熱くて青春だなって感じました。いろんなスポーツ漫画がある中で『おお振り』としての“色”がちゃんと確立していたので、それをどう伝えるのかがひとつの課題でしたね。稽古場で戦って、舞台上でも戦って、最後まで皆で走り抜こうと思っています。『おお振り』の世界観にキャスト各々の個性をプラスして、舞台ならではの『おお振り』を皆で作り上げたので、原作ファンの方にはこういう一面もあるんだと思いながら楽しんで観ていただきたいです」とコメント。
西浦高校野球部を率いる女性監督、“モモカン”こと百枝まりあ役の久住は、「最初の頃は演出の成井さんに「男(勝り)に見えない」と言われて、どうしようかと悩んだのですが、共演の皆がいろいろ教えてくれて、何とか今日の初日を迎えられたなと思っています」と、今まで演じたことのないキャラクターに苦戦しつつも楽しみながら作り上げていった様子を語った。
野球部主将・花井梓役の白又は、「1回戦で負けたら終わりという高校野球の厳しさ・・・それが一種の醍醐味でもあると思うんですけど、そんな感動的なシーンも描かれています。西浦高校としての見どころは合宿明けの練習風景。高校球児らしさが描かれている僕の大好きなシーンです。あとキャラメルボックスの成井さんが2.5次元を作ったらどうなるのかという点も、ぜひ注目して観ていただきたいポイントです。僕らキャストと成井さん、そしてスタッフの皆さんとで作った『おおきく振りかぶって』を楽しんでいただければと思います」と舞台全体を通じての見どころを語っていたのが、いかにもしっかり者のキャプテンらしく印象的だった。
田島悠一郎役の納谷(劇団Patch)は、「稽古が終わった後、柔らかいボールとプラスチックバットを使って皆で野球をしたのが楽しかった思い出です。ゲームの様子を見ながら実況したり、マネージャーが応援していたり、稽古後もが皆が一つになる瞬間がたくさんありました。さっき“しゅんしゅん”(=西銘の愛称)も言いましたが、キャストの絆がどんどん深まっていって、今日から本番を迎えるにあたってすごく“いいもの”がお届けできると思います。初日は雪が降りましたが、サンシャイン劇場を夏に変えて、みんなとキラキラ熱い舞台をお届けします! 期待して劇場にお越しください!!」と力強い言葉を聞かせてくれた。
なお、演劇集団キャラメルボックスで30年以上もの長きにわたって脚本・演出を務めて来た成井も、2,5次元作品の演出を手掛けるのは今回が初めてとのこと。「一番苦労したのは“野球を舞台でやる”ということです。ほかのスポーツと比べても野球が一番難しいんじゃないかと思いました。一塁・二塁・三塁・ホームベースの位置が決まっていて、ランナーは必ずそこを走らなければいけない。舞台上ではベースの間が近いため普通に考えたらセーフになるものを、いかにアウトにするか・・・例えば、遠回りして走るとか(苦笑)。役者の皆にもアイデアを出してもらいながら作りあげていきました。芝居全体の半分近くが試合シーンですが、“ちゃんと舞台上で会話をして人間ドラマを作ろう”というテーマを役者たちに伝えて稽古をしてきたので、出来上がったものは22人の役者が感情をぶつける生々しい芝居になっていると思います。ぜひ楽しんでいただきたいです」とキャスト以上に熱く語っていた。
会見では男性キャスト陣の野球歴についての質問もあったが、登壇した5名のうち西銘だけが経験者という驚きの事実が―。とはいえ「出演が決まったその日にバッティングセンターに行って、稽古中も通い詰めた」という白又は、役に合わせて坊主頭にするなど気合いがみなぎっているのがヒシヒシと伝わってきたし、「野球と関わることのない人生なんだろうと思って生きてきたけれど、僕が演じる田島は野球センス抜群の天才プレイヤーなので、体の動かし方の効率や、どうすれば打てるのかに意識を置いて、いかにしたら上手な選手として見られるのかを考えながら稽古を重ねてきました」と語る研究熱心な納谷は、幼いころからテコンドーやダンスで鍛えた身体能力の高さには定評があり、田島悠一郎というキャラクター同様に小柄な身体を生かしたプレイが見どころとなるのは容易に想像ができる。
猪野は「僕も(納谷)健と一緒で一生野球をやることはないだろうなと思っていたけれど、稽古後の野球練習ではまぁまぁ打ちました。俺ってセンスあるなって思いました」と自画自賛。これには共演者も「本当によく打ってた!」と納得の表情だった。
さらに、猪野は「野球に親しむためには、自分が楽しむのが一番だと思ったので、稽古後に皆と野球が出来て良かったです。あとは本を読んで勉強をしたり、キャッチャーの座り方は映像を観て研究をしたり、共演者の中に野球経験者が何人かいるので彼らにアドバイスを受けながらフォームを改善しました」と、今回の舞台出演を通して野球の楽しさに目覚めた様子だった。
また、バッテリーを組む二人(西銘×猪野)への“絆が深まったエピソード”という質問に、「稽古場でアドリブを出しても猪野くんはすぐに突っ込んでくれるし、逆にアドリブもいっぱい言ってくるので三橋としても稽古がすごく楽しくて・・・」と答える西銘だったが、それに対して、猪野は「アドリブばかりじゃなく、ちゃんと台詞もしゃべっています!しゅんしゅん、言い方(苦笑)!」と大慌て。「三橋と阿部という関係性そのまま、僕も猪野くんに引っぱってもらっていました。『三橋だったらそうするよね」とか、『自分たちバッテリーだったらどうする?』というのを細かく話し合いながら稽古をしてきたので、現実でも三橋と阿部くんのような関係だったのかなって僕は感じています。ねっ?」と笑顔で顔を見合わせる二人だった。
さらに、猪野からは「稽古が始まった頃はバッテリーを組む相手役ということもあって、『頑張って仲良くなんなきゃ!』と思い積極的に話しかけるようにしていたんですけど、西銘くんは誰に対しても壁を作らない人懐っこい子なので、最終的に西銘くんのペースに呑み込まれるっていうことが多々ありました。途中から『あかん、負けてられへん!』となり、ちょっと駿くんをいじり始めました。とりあえず“すべらない話”をしてみたり・・・そんなバッテリーです((笑)」と、楽しいエピソードが飛び出し、会見は笑いに包まれた。
最後に、西銘が「『おお振り』を愛してくださるファンの皆様をガッカリさせないようにという思いで1ヶ月間稽古をしてきました。自分でも役と自問自答しながら、役を見据えながら、やっとこうやって初日を迎えられました。キャスト一同、素敵な舞台にしたいなと思ってがんばって稽古をしてきましたし、絶対に納得いくようなステージにしたいと思っています。最後まで応援よろしくお願いします!」と力強くアピールし、和やかな雰囲気の中、会見は終了した。
その後行われたゲネプロでは、野球場を再現したステージで球児たちが躍動!打たれる悔しさとチームメイトから嫌われる怖さに葛藤しながらも「マウンドは絶対に譲らない!」と泣きそうになりながら踏みとどまる三橋廉を西銘が表情・声色・姿勢のすべてを使い表現。猪野も、短気で時に感情を爆発させつつ、観察眼に優れているがゆえに相手の感情をも敏感に感じ取り、実は涙もろいというセンシティブな阿部隆也役を好演していた。
出されたサインに首を振ることなく、ただ黙々と投げ続ける三橋。“捕手に逆らわない理想のエース”として三橋を評価する一方で、独学で制球力を身につけた努力と今なお過去のトラウマから抜け出せないでいる三橋の孤独を知り、次第に心を通わせていく阿部の姿に思わず胸が熱くなるシーンも・・・。
ほかにも、面倒見がよくしっかり者の主将・花井梓役の白又の豪快で爽快な立ち振る舞いや、チームのムードメーカー・田島悠一郎を演じる納谷の俊敏な動きには目を見張るものがあり、西浦高校野球部メンバーはもちろん、対戦校である桐青高校、武蔵野第一高校、三星高校の野球部員を演じるキャスト陣も、一癖も二癖もあるキャラクターを額に汗を光らせながら熱演!
また、久住が演じる百枝まりあが、甘夏を素手で握りつぶしジュースにするという名((迷!?)場面が描かれているのも、原作ファンとしては嬉しいところだろう。
作品全体からは原作に対するリスペクトやキャラクターに対する愛情、勝敗に一喜一憂する高校野球の悲哀と仲間と共に夢を追いかける青春の輝きが丁寧に描かれていて、2時間10分の公演時間が短く感じられるほどだった。
舞台『おおきく振りかぶって』は、2月12日(月・休)まで東京・サンシャイン劇場にて上演。
そして早くも本公演のDVDが6月に発売されることも決定した。DVDには、本編映像に加え、特典映像として千秋楽カーテンコール、全出演者による一言舞台挨拶を収録。さらに舞台写真満載の特製ブックレットが付く。公演期間中に会場で先行予約をすると、特典として出演者の舞台集合写真が付き、一般発売日よりも一足早く商品が届く予定。ほか、収録内容については公式HPにてご確認を。
◆舞台『おおきく振りかぶって』DVD
【発売日】6月6日(水)※予定
【価格】8,000円(税込)
【仕様】DVD 16:9LB/片面2層1枚/ドルビーデジタル(ステレオ)
【収録内容】
・本編
・特典映像 千秋楽カーテンコール・キャスト一言挨拶収録
・ブックレット(カラー8ページ)
※内容は予告なく変更の場合あり
【オンラインショップ】
NAPPOS SHOP https://nappos.shop-pro.jp/
オフィシャル提供
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(取材・文・オフィシャル提供写真以外撮影/近藤明子)
【公式HP】http://oofuri-stage.com/
(C)ひぐちアサ・講談社/舞台「おおきく振りかぶって」製作委員会