OFFICE SHIKA REBORN『パレード旅団』が、12月7日(木)より東京・シアターサンモールにて上演されている。本作は、「名作は、死なない」というキャッチコピーを掲げ、過去の名作を掘り起こすOFFICE SHIKA PRODUCEの新シリーズ。第1弾として上演するのは、1995年に劇団「第三舞台」が発表した鴻上尚史の戯曲。演出は、劇団鹿殺しの菜月チョビが手掛けている。
(以下、物語の一部に触れています)
本作では、二つの世界を行ったり来たりしながら描かれる。一つは、ある悩みを抱えた中学生たちが集う家。もう一つは、関係が軋んでいる家族が住まう家。登場人物は場面によって二つの役割を演じ分けている。
物語は、とある一軒家に、中学生らしき少年や少女が、謎の合言葉と不可解なステップを踏みながら次々と訪れるところから始まる。家の主は、坂口くんという名前らしい。どうやら、少年少女たちは彼の呼びかけによって集まったようだ。
もう一つの家には、厳格な父、世話焼きな母、反抗期の息子、ませた妹、ボケたおじいちゃん、余計な口出しばかりするおばあちゃん、そして飼い犬のポチが、客人を迎えながら食卓を囲んでいる。もてなそうとすればするほど、浮上する些細な家庭内問題。もう帰りたそうな客人をよそに、姑のおばあちゃんと母を中心にいさかいが始まり、どんよりと気まずい空気が流れ始める。
どちらの世界にも、共通して吹き荒れる嵐。それぞれの家を取り巻く状況を示唆しているようだ。
「復讐、しませんか?」
「今日かぎり、父さんは父さんを辞めようと思う」
二つの世界の問題が徐々に膨れゆく中、事態はおかしな方向に・・・。
出演は、蕨野友也、松浦司、佐藤祐吾、葉丸あすか(柿喰う客)、伊藤今人(梅棒/ゲキバカ)、劇団鹿殺しより橘輝、鷺沼恵美子、椙山さと美、メガマスミ、菜月チョビ(伊藤とWキャスト)。そして、七味まゆ味(柿喰う客/七味の一味)、ファーストサマーウイカ、有田杏子が日替わりを務める。
菜月がこの戯曲に出会ったのは、大学1年生の頃だったという。仕上がったのは、当時の菜月に芽生えたであろう、無邪気な情熱が焼きついた作品の姿。観ていて、なんとも不思議な感覚に襲われた。鴻上の言葉が、ギラつく鹿殺しの色に染まる。でもちょっと、いつもの鹿殺しより青さも感じるし、オレノグラフィティの音楽、伊藤らが手掛けた振付が加わることで、エンターテインメント性が際立ったようにも見えた。また、蕨野、松浦、佐藤が小劇場で活き活きと輝く姿にも注目だ。さらに、22年前の「第三舞台」による上演を知る人には分かるオマージュ要素も、随所に織り込まれているという。懐かしい、だけど、新しい。
映像などで残される作品も増えているが、演劇の多くは、上演されている間しか存在できない。劇場に足を運んで、目にした人の記憶にだけ残り続ける。そうした記憶がまた、演劇を次の時代へと繋いでいくのだと感じた。
OFFICE SHIKA REBORN『パレード旅団』は、12月17日(日)まで東京・シアターサンモールにて、12月21日(木)から12月24日(日)まで大阪・ABCホールにて上演。
なお、Wキャストとなる伊藤と菜月は、伊藤が「踊る犬組」、菜月が「歌う犬組」となる。日替わりキャストの登場日程は、以下のとおり。
七味まゆ味/12月12日(火)19:00、12月13日(水)19:00(終了)
ファーストサマーウイカ/12月14日(木)19:00、12月15日(金)19:00
有田杏子/12月10日(日)13:00、12月16日(土)18:00
【公式HP】http://shika564.com/parade/
(写真/和田咲子)
(取材・文/エンタステージ編集部)