浦井健治と城田優が主演を務めるミュージカル『ブロードウェイと銃弾』が、2018年2月に東京・日生劇場にて上演される。演出を務めるのは様々なメディアから引っ張りだこの福田雄一。本作の製作発表が2017年11月10日(金)に行われ、福田、浦井、城田と平野綾、保坂知寿、愛加あゆ、ブラザートム、鈴木壮麻、前田美波里が登壇した。
1994年にウディ・アレンが手掛けた同名の映画が元とした作品。映画版はアカデミー賞7部門にノミネートされ、その後アレン自らがミュージカル化したという経緯を持つ。1920年代、禁酒法時代のニューヨークで、劇作家のデビッド(浦井)は、かねてからの念願が叶い、自分の戯曲をブロードウェイの舞台にかけることになり、張り切っていた。しかし、プロデューサーが見つけてきた出資者はマフィアの親玉ニック(ブラザートム)、しかもキンキン声でろくに台詞も言えない、大根以下の自分の愛人オリーブ(平野)を主役にしろと要求し、部下のチーチ(城田)を監視役として送り込んでくる。
さらにプライドの高い主演女優ヘレン(前田)は脚本を書き換えろと色仕掛けで要求し、名優だが過食症で女癖の悪いワーナー(鈴木)はオリーブと怪しい関係の様子。クセがあり過ぎる出資者、俳優たちが次々と無理難題を繰り出してくるハチャメチャな状況に、芸術至上主義でマジメなデビッドは困惑。さらにさらに、てんやわんやの状況をずっと観察していたチーチまでもが脚本と演出に口を出してきて・・・。
会見では、登壇者の挨拶からスタート。開口一番、福田は「事前にネットニュースなどで見たのですが、真ん中の二人(浦井・城田)がこの作品でふざける気マンマンだそうで、僕は一生懸命にやろうと思っています・・・でも、僕の言うことを聞いてくれるのか不安・・・」というと、早速、城田が「ニホンゴガ、ワカリマセン」と謎のカタコト英語でボケた。そのリアクションに笑いながらも、福田は「ウディ・アレンの原作ですし、『笑い』を作るならこれ以上はないだろうというメンバーを揃えたくて・・・揃えました!」と改めて意気込みを見せた。
浦井は、自身が演じるデビッドについて「夢を追うというところが魅力的な役だなと思いました。このカンパニーでできることも、そして福田さんとは『タイトル・オブ・ショウ』以来の舞台のお仕事になることも嬉しいです。みんなで和気あいあいと楽しんで作った、楽しい作品をお客さんに届けたいです。また、城田優とは初めてコメディで一緒の仕事をすることになりますのでこれも楽しみです」と挨拶。この挨拶に対して「こういうときは優等生なんだねえ」と福田が突っ込むと、浦井はくしゃっとした笑顔を見せていた。
福田の言葉を受け、司会が「次は優等生なご挨拶にはならないかもしれません・・・」という前振りをすると、「失礼な(笑)!」と小声で突っ込みながら城田が立ち上がった。福田の挨拶のときにカタコト日本語で突っ込んだそのままで「アー、コニチハ。キョウハ、ワタシノタメニ、アツマッテクレテ、アリガトザカリマス」と始めると皆大笑い。「ココカラハ、フダンシャベッテルコトバデ、シチュレイシマス。えー10年ぶりとなりますコメディへの出演ですが・・・」と城田が素早く切り替えると、場内の笑い声は倍に。
「福田さんとは映像作品で何度もご一緒しているので、作品を作る過程や思いは重々理解しているはずですが、舞台は初めてです。皆さんが笑顔になれるもの、ハッピーなものを作りたい、その一心で稽古をがんばります・・・個人的には(チーチがやる)タップが本当に不安で降板したいくらいです(笑)」と弱気な所をちらっと見せていた。
城田はチーチとの共通点について「芝居への熱さ」だと語る。「僕も演出家さんにあれこれ言ってしまう役者なので。『ロミオとジュリエット』のときに小池修一郎先生に、ここはどう考えてもお客さんにとっても、スタッフにとってもキャストにとってもこうあるべきじゃないか、と思って言いに行ったことがあります。そういうめんどうくさい奴なんです。チーチは一見強面でクールですが、それが逆に滑稽に見えます。そんな人が芝居にのめりこんでいくピュアさ、芝居への熱さを表現したいです」。
平野はオリーブ役の設定に基づき、思い切りキンキン声で「平野綾です!」と挨拶し、満場の笑いをさらった。「私の役柄ですが、こんなにひどい役ってあるのかと思うくらい、人としていいところが一つもないようです。でも、そういう役をやらせていただけるのが嬉しくて自分にとっても挑戦だなと思っています。福田さんの作品は何度も経験していますが、本番でも毎日台詞やアドリブが変わっていくので大変なんです。激やせする覚悟でやりたいと思います」と普段の声色で話した。
なお、キャスティングについて福田から「『キンキン声といったら綾ちゃんだよな』って言われて」という平野。「『レディ・ベス』は大変だろうけど、これは(普段の平野)そのままでできるから大丈夫!って言われて・・・」と口走ると、福田が「ここでそれを言わないで!!・・・もう脂汗出まくるわ」と慌てて止めにかかっていた。
いつも犬を連れている神経質で個性的な女優・イーデン役を演じる保坂は「今、役の説明を初めて聞きました」と笑う。福田から「ブロードウェイの舞台では本物の犬を使ったんだって」と説明が入ると、「じゃ、日本版でもやりましょうか」と返す保坂。というのも、保坂は映画版で登場したのと同じ犬種の犬を飼っているそうだ。「犬のしつけをしておきます」と笑わせつつ、「自分はこの強烈な個性の顔ぶれの中にうずもれないようにがんばりたいです。福田さんは笑顔の裏に恐怖があって大変なんです・・・よいお年を!」と言い逃げるかのように挨拶を締めていた。
デビッドの恋人エレンを演じる愛加は「福田さんの舞台に初めて出演するのでドキドキしてます。コメディも初めてなので、食らいついていきたいと思います」と語った。ちなみに浦井とはミュージカル『王家の紋章』で共演した仲。「前回は、ずっと浦井さん(メンフィス役)に片思いして、浦井くんのお姉さん(濱田めぐみ/アイシス役)に燃やされて死ぬ役でした。それが今回、ようやく報われます(笑)」というと「最初は綺麗な女性だったのに、その後、基本黒焦げだったもんね」と観劇に行った福田がフォローしていた。
ブラザートムは「どうも。こんにちは。福田雄一役のブラザートムです」と言い出すと福田から「(見てくれが)かぶってますよね」と突っ込まれニヤリ。さらに「今日はお足元の悪い中・・・(福田「すごいいい天気でした!」と再度突っ込み)、そんな感じでよろしくお願いいたします」と作品の話にあえて触れない挨拶に終始。この日の会見では一言二言だけしか発しなかったブラザートムについて、福田は「実はトムさんに任せておくと稽古時間がどんどん長くなっていくんです」と本来のブラザートムのキャラクターを暴露していた。
鈴木は、ブラザートム、保坂と共に福田がかつて演出したミュージカル『フル・モンティ』に出演している。「そのときの記憶がお腹の中に蓄積されています。トムさんと今回『僕らは脱ぐ気マンマンだからそういう場面があるといいねえ』と話していました」と目線を送ると、「勝手にやってください」と笑いながらかわす福田。なお、劇団四季出身であり、退団後もあまたのミュージカル作品に出演している鈴木は、浦井とは『エリザベート』以来の共演、前田・保坂とは劇団四季時代に、平野とは『コメディ・トゥナイト!』でなぜか双子の役で共演していると振り返り、城田とは「念願の優くんとの現場です」と初共演を楽しみにしているようだった。
ちなみに、鈴木が演じるワーナー役との共通点については「過食症。僕は稽古中や本番中にバクバク食べますね。アルフォートを気が付いたら一人で一袋食べきっています」その言葉に福田は「商品名を出すんだ(笑)。でも、アルフォートって結構、稽古場のお茶場にあるよね。キットカットと共に。なぜなんだろう?」とこちらも商品名を出しつつ話を進めていた。
前田からは「映像では何度か経験していますが、舞台でいつもコメディをやりたいと思っていたんです。芸能生活五十数年で初めてだと思います」と意外な発言が。「壮麻さん、保坂さんはそこにいるだけでコメディの香りがプンプンする。そして保坂さんには私がまじめな役で舞台に出なければならないのに、その直前に笑わされていました。今回は逆に笑わせようと思います」と作品とは違うところで目標を掲げていた。「浦井さんとキスシーンがございます!お楽しみに」そう言って挨拶を締めた後、「言ったら赤くなっちゃったわ」と自分の頬に手を当てていた前田だった。
会見の後半では、浦井と城田による劇中歌の歌唱が行われた。浦井は「I’m Sitting on Top of the World」、城田は「Up a Lazy River」。それぞれのキャラクターの性格が見えるような二曲を披露し、先ほどまで笑い声にあふれていた会場を一転、ニューヨークのライブ会場のような空気に変えていた。
製作発表の最後では、城田が「最後に浦井くんがおもしろいことを言ってくれます」と無茶ぶり。「うわーっ!」と叫んだ浦井は「美輪明宏さんの真似をやります。ジブリシリーズより」と『もののけ姫』の一場面を披露。その上手さに拍手が送られるが「『ブロードウェイと銃弾』をよろしくお願いします!」と、浦井は本筋に話を戻そうと必死にアピールしていた。
ミュージカル『ブロードウェイと弾丸』は2018年2月7日(水)から2月28日(水)まで、東京・日生劇場にて上演される。その後大阪、福岡にて巡演。日程は以下のとおり。
【東京公演】2018年2月7日(水)~2月28日(水)日生劇場
【大阪公演】2018年3月5日(月)~3月20日(火)梅田芸術劇場メインホール
【福岡公演】2018年3月24日(土)~4月1日(日)博多座
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)