2017年10月5日(木)より東京・Bunkamura オーチャードホールで世界初演となるKバレエカンパニー『クレオパトラ』の公開リハーサルと芸術監督・演出・振付・台本の熊川哲也による会見が、初日前日に行われた。その模様をレポートする。
ステージの背景は少しくすんだエメラルド・ブルー。鈍い金色で幾何学的な形をしたセットがピラミッドを思わせる、シンプルで美しい空間だ。女官たちをひき連れて登場したプトレマイオスは、若さの喜びを体現するように生き生きと踊りまわる。だがクレオパトラが、こちらも女官たちを従えて登場すると、舞台は一転緊張感に包まれる。実権を握るクレオパトラの「お前の好きにはさせない」という権高な台詞が聞こえてくるようだ。
姉弟であるクレオパトラとプトレマイオスの権力争いに始まるストーリーは、クレオパトラがカエサルと出会って恋に落ち、一時の幸せな日々が訪れる中、第1幕を閉じる。続く第2幕では、舞台をローマに移し、クレオパトラとアントニウスの出会い、アントニウスとオクタヴィアヌスの戦い、そしてクレオパトラの最期が描かれる。
熊川は、これまでにも『ジゼル』や『白鳥の湖』などの古典や、3年前にはビゼーの名作オペラを典拠とした『カルメン』なども振付けてきたが、原作も音楽も存在しない全幕作品を手掛けるのは本作品が初めて。会見で、熊川は「この作品の制作は大変でした」と述べながらも「すごく満足できる作品になりました」と自信の笑顔を見せた。
第1幕の部分的なリハーサルを見ただけでも、舞台の上はセットをはじめ、衣装も踊りも、“古代エジプトのクレオパトラ”と言われて違和感がない。舞台美術デザインは、メトロポリタン歌劇場など世界で活躍しているダニエル・オストリングによるもの。彼の美術について、熊川は「一つの芸術が舞台に作られています。ナイル川を渡る船に乗ったり、鬼気迫るバトルフィールドなど、興奮せざるを得ません」と語る。エキゾチックで美しい衣裳デザインを担当した前田文子は、主に演劇の衣裳で活躍しているが、熊川は「バレエを知らない人だからこその変化球、新鮮な発想が楽しかったです」と明かした。(オフィシャル写真D8S0177)
美しいセットや衣裳、登場人物全ての踊りなど、すみずみまで見どころ満載の本作品だが、何と言っても注目されるのはクレオパトラだ。クレオパトラ役は日替わりで中村祥子と浅川紫織によって踊られる。クレオパトラの見どころについて、熊川は「弟との対決を経験した冷徹な彼女が、時間を重ねてシーザー(カエサル)という包容力のある男性と出会い、ローマへ旅立ち、君主との恋もあり、殺戮もあり、陰謀もあり、といった経験をしていきます」と挙げた。一面的ではない、様々な経験により様々な感情を表し、また、成長していく美貌の女王を、実力もあり華もある二人のバレリーナがどのように表現してくれるのか。
(オフィシャル写真D8S0170?)
K-BALLET COMPANY『クレオパトラ』(世界初演)の上演日程は、以下のとおり。
10月 6日(金)~10月9日(月・祝) 東京・Bunkamura オーチャードホール(終了)
10月12日(木) 愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
10月14日(土) 大阪・フェスティバルホール
10月20日(金)~10月22日(日) 東京・東京文化会館 大ホール
10月28日(土)・10月29日(日) 東京・Bunkamura オーチャードホール
(取材・文/月島由美、写真/オフィシャル提供)