キャラメルボックスが「会いに行く」全国ツアー『光の帝国』出航式レポート

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結成32年目を迎える演劇集団キャラメルボックスによるグリーティングシアターVOL.4『光の帝国』が、2017年10月4日(水)に東京・シアター1010にて開幕した。原作は、人気作家・恩田陸の短編小説。成井豊と真柴あずきが共同で脚本・演出を手掛け、一度読んだ書物を完璧に暗記する能力を持つ少年の、切なく不思議で美しい物語に仕上げた。

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オフィシャル提供

本公演は、キャラメルボックスの“会いに行く”ツアー「グリーティングシアター」。4回目の実施となる今回は、この東京公演を皮切りに全国10ヶ所を回る。10月5日(木)には全国出発に先駆けて、製作総指揮である加藤昌史の進行のもと「出航式」が執り行われ、出演者の関根翔太、森めぐみ、鍛治本大樹、原口健太郎、家納ジュンコ、毛塚陽介、金城あさみ、竹鼻優太、小林春世、そして真柴が登壇し、ツアーに向けての抱負や、役についての思いを語った(成井は映像メッセージのみ)。

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初主演を務めた春田光紀役の関根はまず、ツアー最終日を見据え「始まったばかりなので、必ず成長して帰ってきます」と挨拶。2009年に初演されている『光の帝国』だが、その際に関根の役を演じていたのは、入団のきっかけにもなったという畑中智行。初演のDVDを何度も見返しては“畑中さんを越えなくちゃいけない”と感じていたと語る。しかし、実際に稽古が始まると新しい気づきがあったようで「主役の特権と言いますか、出演者全員と絡める機会があったんです。なので、自分でこうしようと考えるだけではなく、周りの人から影響を受けて成長しようと思いながら演じました」と笑顔を見せた。

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そんな関根を近くで支えていたのは、光紀の姉である春田記美子役の森。原作では“美少女”として描かれている記美子について「千秋楽までにはこのハードルを、どうにかこえたいと思っています(笑)」とコメントし、観客の笑いを誘った。さらに、初演から新しく追加されたシーンに触れ「追加された部分が膨らんだことで、この脚本の中での“記美子”として生きていけるのかな、と思います。原作に描かれている記美子とは、少し違う性格になっている部分もあるのかも」。

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光紀の人生を大きく左右する猪狩義正役の原口は、劇団桟敷童子の看板俳優。他団体での公演について「皆さん、真っ直ぐな芝居をされるので、それに対抗するには演技力とか技術とかそういうことでなく、気持ちや気合いの面で負けないようにやってきたつもりです」と稽古期間を振り返った。

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自分の能力に悩む光紀を見守るのは、母親・春田里子役の家納と、父親・春田貴世誌役の毛塚。家納は「不思議な家族のお話で、最初は『想像もつかなくてどうしよう!』と思っていたのですが、普通の家族にも通じるところがたくさんあります」、毛塚は「将来自分が父親になったら、こんな人になりたいです」と、それぞれ春田家についての思いを語った。

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現在と過去の演じ分けが求められる猪狩悠介役の鍛治本は、初演では悠介の弟・猪狩康介役を務めていた。初演の思い出を聞かれると、鍛冶本は「トラウマになるくらい大変だったので、当時の記憶があまりないのですが・・・(笑)」と前置きした上で「この作品との距離感が変わって、大好きな作品になりました。同時に初演のことも思い出し、9年間を丸々を振り返りながらできているので幸せです」と、再演での変化の喜びを噛み締めていた。しかし「稽古場でダメ出し中に『康介!』と呼ばれると、いまだに僕までびくっとしてしまって・・・」と、若干トラウマが残っている様子も。

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今回、その弟・康介役を演じるのは竹鼻。全国ツアーということで「この歳になって、ようやく日本史というものを楽しめるようになりました。たくさんの場所に回りますので、ご当地のお酒を楽しみつつ、お芝居もしっかりがんばっていきます」と意気込みを見せる。また、悠介の妹・寺崎美千代役を演じた金城は、自身の役について「彼女はすごい人なんですよ。どうやったらこの人の魅力を伝えられるだろうと一生懸命やっているところです」と役に取り組んでいるという。

映画プロデューサーの奥原なつみと今枝先生との二役を演じる小林は「初演を客席で見ていまして、実際に舞台に立つことができて、とても嬉しいです」と出演を喜んだ。また、奥原なつみは原作にはないオリジナルのキャラクターで今回初登場。このオリジナルキャラクターについては「新たに加わった意味を稽古でも模索してきましたし、これからもっと役を深めていけたら」と成長を誓った。

真柴は、成井との共同脚本製作について「よく質問をいただくのですが、私が台本を書き、だめ出しをもらい、私が台本を書き・・・を何度も繰り返して、ようやく出演者に読んでいただきます」と明かした。映像メッセージでは成井が、原作の小説に惹かれた理由に「少年」と挙げ、「(少年というテーマは)私のライフワークだと思っています。特に少年の孤独と成長を描いているところが大好きで、8年前からずっと再演したいと思ってました。今回、まさに『光の帝国』の決定版が作れたのではないでしょうか」と太鼓判を押した。

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出航式の後半には、取材記者を含む観客からの質問コーナーが行われた。今日までにあった印象的なエピソードは?という質問が飛ぶと、関根が初日の終演後に起きた“ある出来事”について答えた。「僕、舞台上で初めて三方礼をしたんですけど、横一列、平行に並んでいたため、奥の人が見えなくなってしまって。その時に鍛治本さんか背中をぽんっと押して、僕を前に出してくれたんです。その時『ああ、なんていい先輩なんだろう!』と、感極まってしまいました」というそのエピソードに、会場からは鍛治本へ称賛の拍手が沸き起こった。さらに、出演者一人一人による手渡しのプレゼントが贈られるなど、会場は大盛り上がり。

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最後は、関根と毛塚による公演にちなんだ寸劇ののち、舞台上にくす玉が登場。「出航!!」と書かれた垂れ幕が揺れる中、出航式を終えた『光の帝国』は次の場所へと見送られていった。

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グリーティングシアターVOL.4『光の帝国』の次の上演は、10月7日(土)・10月8日(日)の東京・たましんRISURUホール。その後、埼玉、愛知、大阪、広島、鳥取、新潟を巡演する。日程は以下のとおり。

【東京公演(北千住)】10月4日(水)・10月5日(木) シアター1010(終了)
【東京公演(立川市)】10月7日(土)・10月8日(日) たましんRISURUホール
【埼玉公演(秩父市)】10月12日(木) 秩父宮記念市民会館
【愛知公演(豊川市)】10月15日(日) 豊川市御津文化会館 ハートフルホール
【大阪公演(阪南市)】10月17日(火) 阪南市立文化センター サラダホール
【広島公演(廿日市市)】10月19日(木) はつかいち文化ホール さくらぴあ
【鳥取公演(鳥取市)】10月22日(日) 鳥取市民会館
※開演30分前から岡田達也プレトーク有り
【大阪公演(西梅田)】10月27日(金)~10月29日(日)サンケイホールブリーゼ
【埼玉公演(所沢市)】11月3日(金・祝) 所沢市民文化センター ミューズ
【新潟公演(新潟市)】11月5日(日) りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館

(取材・文・オフィシャル提供以外撮影/エンタステージ編集部)

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