松岡充×丸尾丸一郎によるVOL.M、ついに始動!『不届者』ゲネプロレポート

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撮影:小松陽祐

構想5年。SOPHIA/MICHAELのボーカルで俳優の松岡充と、劇団鹿殺しの丸尾丸一郎がタッグを組んだ新ユニットVOL.M『不届者』が、2017年9月27日(木)に、天王洲銀が劇場にて開幕した。Vol.Mの二人が、新ユニットの第1弾として打ち出したのは、夢のため、愛のため、生活のため、友情のため、死闘を繰り広げる“不届者”たちの物語。その公開ゲネプロの模様をレポートする。

公式サイトで公開されているあらすじでは、時は江戸時代。紀州藩藩主の四男として生まれたが母が百姓のため出世に縁がない新之助(松岡)が、親友と共に兄弟たちを暗殺し、「徳川吉宗」として成り上がっていく。

しかし、時代物を想像して劇場に向かうと予想を裏切られる。ステージに飾られているのはソファやシャンデリア。「あれ、ヨーロッパの貴族モノだったっけ?」と思いきや、どうやらそこはキャバクラらしい・・・。

『不届者』舞台写真_7撮影:小松陽祐

ここを舞台に、史実をベースにした「徳川吉宗」に関する暗殺劇と、現代で起こった保険金詐欺事件が絡み合っていく。江戸時代、満開の梅の下で野心を燃やした新之助を演じる松岡は、現代では冴えない男「ウメモト」となる。それは、松岡に抱くパブリックイメージとは異なる、情けなく自信のない姿。

一方、肉親たちが次々と死んだ後に将軍となり、独自の政策を打ち出し続けた徳川吉宗というモチーフに、作・演出を手掛けた丸尾は「ミュージシャン・俳優として、のし上がってきた松岡の人生」に対するイメージを重ね合わせたという。それを受けた松岡は、冴えない中にも野心を隠さない男を熱演。背中を丸めおどおどするばかりの松岡が、オレノグラフィティ作曲によるテーマ曲「不届者」を熱唱するシーンの落差は衝撃で、ロックスターの風格をただよわせ、丸尾のイメージに応えてみせた。

『不届者』舞台写真_5
撮影:小松陽祐

江戸でも現代でも、松岡の傍にいつも立ち、支える親友を演じるのは荒木宏文。のしあがっていく吉宗に寄り添い“不届”を働いていくが、自分自身の人生と見つめ合わなければいけない時がくる。動きの美しい荒木が、後ろを向きゆっくりと歩いて行くシーンでは、その肩に背負った重みを感じさせた。

『不届者』舞台写真_3
撮影:和田咲子

池田純矢が扮する男もまた、野心に溢れ、熱を燃やす“不届者”。豊かな表情は感情を雄弁に語り、見ていて怖くもある。さらに、ダンスシーンなどで見せる俊敏な動きは、一際目を引いた。

『不届者』舞台写真_7
撮影:和田咲子

ほか、谷山知宏(花組芝居)、小沢道成(虚構の劇団)、劇団鹿殺しよりオレノグラフィティ、橘輝、鷺沼恵美子、峰ゆとり、近藤茶、椙山さと美・・・誰もが、己の欲するものに向かい、己のルールで突き進んでいく“不届者”だ。

そして丸尾は、舞台のキャラクターすべてを操る作・演出の立ち位置を活かした役を自らに課した。そこには、SOPHIAとして一世を風靡した松岡に夢破れ挫折した男を演じさせることと同じ皮肉さを感じる。人の人生を板の上にのせる演劇そのものが“不届者”の行為なのかとも思えた。

『不届者』舞台写真_2
撮影:小松陽祐

江戸時代に起きた出来事が、キャバクラで起きる出来事と重なっていくほどに、生々しい現実感が増す。時代設定も、配役も、“不届者”たちの行動も、すべてが表裏一体だ。二つの時代が呼応するほど、人間の二面性が浮き彫りになる。野心のために、臆病だからこそ大胆になり、愛しているからこそ残酷にもなれる。誰も彼も、その野心の根底にある動機が純粋なほど苦しい。

“不届者”とは大辞泉によると、1.配慮・注意が足りない者、2.道・法に背く者、の意味がある。配慮がなく浅はかで考え及ばず、なのに、倫理を無視して行動する彼らが、野心を胸に死闘を繰り広げる。それは、追い求める野心へと“届かない者”たちの生き様でもあるように感じた。

『不届者』舞台写真_6
撮影:小松陽祐

OFFICE SHIKA PRODUCE VOL.M『不届者』は、10月1日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて、10月13日(金)から10月15日(日)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。

なお、本作のDVD化も決定。販売時期は、12月予定、価格は5,400円(税込)。先行予約をすると、送料が無料になるほか、完全受注生産のビジュアルブックがプレゼントされる。受付期間は、10月15日(日)23:59まで。詳細は、公式HPにてご確認を。
【公式HP】http://vol-m.com/futodoki/

(取材・文/河野桃子)
(撮影/小松陽祐、和田咲子)

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