客席が360度回転する「IHIステージアラウンド東京」にて、ロングラン公演が行われている劇団☆新感線『髑髏城の七人』。2017年3月末のこけら落としから6月前半まで上演された「Season花」、そして現在上演中の「Season鳥」に続き、9月15日(金)からは「Season風」が上演される。この「Season風」の製作発表記者会見が7月11日(火)に行われ、作家の中島かずき、演出のいのうえひでのり、松山ケンイチ、向井理、田中麗奈、橋本じゅん、山内圭哉、岸井ゆきの、生瀬勝久が登壇した。
大勢の観客が見守る中、まずはスクリーン映像にて、劇場の特性や「Season花」「Season鳥」公演の模様が紹介された。会場の熱気が上昇した所で舞台上の垂れ幕が落とされ、いよいよキャスト陣が登場!と思いきや、その中心に立っている松山の様子が何やらおかしい・・・。
場内がざわつき始める中、会場後方から“本物”の松山が姿を現し、実は壇上に佇む松山が3Dプリンターで作られた“偽物”の模型であることが判明。松山が観客の間近を通り抜けてステージへ上がるというサプライズに、会場は大きな歓声に包まれた。
IHIステージアラウンド東京は360度のすべてが舞台。その中心にある円形型の客席が回転することで、全方向のステージと対面する。松山は「演劇という一言ではくくれないくらい、沢山の要素が詰まったエンターテインメントです」と劇場の魅力を語り、向井も「時間を感じないくらいすごいスピード感でした」と、観劇時の感想を明かした。
従来の劇場とは異なる造りであるため、田中は「動線が分からなくなって方向音痴になりそうです・・・(笑)」と早くも不安げな表情。一方、生瀬は「舞台裏をセグウェイで移動しているらしいので、セグウェイに乗れるのが楽しみです」と違った角度からの期待を語り、笑いを誘った。
冒頭の3D模型を使った演出については、「風」の見どころの一つである“影武者”から構想を得たものだという。今回は、捨之介と天魔王の二役を松山が一人で演じる。この一人二役の始まりについて、作家の中島は「元々(オリジナルキャストの)古田新太が出とちりをして、もう失敗させないようにと、出ずっぱりにさせるため作ったものです(笑)」と誕生の経緯を明かした。もちろん、それだけではなく「本物が消えて影武者が残ってしまった時に、その偽物たちがどう生きていくのかを書きたかった。(2011年版より捨之介と天魔王が別々の配役になっていたが)今回は一人二役という“オリジン”に戻ります。その中でブラッシュアップした、新しい形の“オリジン”を作れたらと思います」と作品への思いを語った。
演出のいのうえも「『花』ではストーリーをシンプルに、『鳥』ではショーアップしてきましたが、今回の『風』ではきっちりと人間ドラマをやりたいです」と構想を明かす。「13年前は勢いで駆け抜けたというか、当時は人間ドラマよりも“一人の俳優が二つの役をこのスピードでやれるんだ”ということを見せることに意義がありました。今回は13年越しで、捨之介と天魔王をきっちりと描きたいです」と意気込みを語った。
主演の松山へ伝えておきたいことを問われると、いのうえが「とりあえず足腰をしっかりと(笑)。あと、できれば雪駄でお願いしたいです。小栗旬君も豆を潰してがんばっていたので・・・」とエールを送る。これを受け、松山は「雪駄以外の選択肢があったんですか?!」と驚きつつ、「僕も雪駄がいいと思うので普段から履いています。作品を観るたび“なんで雪駄を履きながらあの殺陣ができるのか”と疑問に思ってましたので、そこは歴代の役者さんにお話を聞きたいですね」と役作りへの熱心な姿勢を見せた。
また、記者から「ライバル視する人物は?」と質問が飛ぶと、沙霧役の岸井は「今まで『髑髏城』を観させていただいて、皆さんそれぞれ違う色を出されていましたので、自分ができることを一生懸命やって『風』の沙霧を作れるようにがんばりたいです」と謙虚に回答。
贋鉄斎役の橋本は「僕もかつて兵庫役を演じましたので、まずは今回兵庫役の(山内)圭哉くんを応援したいです」と山内にエール。そして自身については「古田くんと(池田)成志さんが、それぞれ『花』と『風』でやりきったと思うので・・・(笑)。あとは本番を観ていただければと思います」と控えめに答えた。
橋本から応援の言葉をかけられた兵庫役の山内は「どちらかと言うと、髑髏城に居てる方の人みたいですけど・・・(笑)。兵庫は常に血が沸いているような人物で、そういう役を演じるのは初めてです。今、『鳥』で兵庫役をやられている福田転球さんは一番仲のいい先輩ですが、軽く超えてやろうと思ってます」と冗談を交えながら意気込んだ。
極楽太夫役の田中は「新感線に初参加なので、今までの先輩方の姿に学びながら、ライバル視というよりは勉強させていただく気持ちです」と謙虚に切り出しつつ、「(『鳥』では)松雪泰子先輩の太夫が優雅で素晴らしくて、最高でした。素敵なところを見習いながら、田中麗奈の極楽太夫を作っていかなければと思っています」とコメント。
主演の松山は、過去に一人二役バージョンを演じた古田新太と市川染五郎をリスペクトしつつ「古田さんと染五郎さんのお二人が完璧だったで、これ以上はないというところまで自分を追い込みたいです。これまで観てこられた『髑髏城』ファンの方々にも分かるくらい、古田さんや染五郎さんのニュアンスを入れ込めたらおもしろいかなと思います」と新演出への期待をにじませた。
蘭兵衛役の向井は「やるからには自分にしかできない蘭兵衛をやりたいと思っています。ただ(『鳥』で同役を演じている)早乙女(太一)くんの殺陣は日本最高峰だと思うので、そこと比べられのは辛いなと・・・(笑)。なので、今回は殺陣を封印して、会話で解決するという、僕にしかできない会話劇にしていこうかな・・・」と独自のアイデアを提案し、会場を笑わせた。
狸穴二郎衛門役の生瀬は「(『花』で同役を演じた)近藤(芳正)くんとか、(『鳥』で同役の)梶原(善)くんとか、本当に仲のいい役者仲間ですから・・・ぶっ潰します。蹴散らしてやります!」と冒頭から宣戦布告した。さらに「僕は新感線に初参加なので、今後残るためにも共演者全員をぶっ潰します。初日に喉を壊すくらいの気持ちで、全力で全員をぶっ潰します。本当ですよ!役者生命をかけます!!」とヒートアップ。ユーモアたっぷりに意気込みを語り、会場を盛り上げた。
ONWARD presents 劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season風 Produced by TBSは、9月15日(金)から11月3日(金・祝)まで東京・IHIステージアラウンド東京にて上演される。
(取材・文・撮影/堀江有希)