2017年5月25日(木)、東京・DDD AOYAMA CROSS THEATER(DDD青山クロスシアター)にてミュージカル『I love a PIANO』が開幕した。本作は、ブロードウェイを代表するソングライターの名曲を、ショー形式のミュージカルで楽しむ「ブロードウェイ・ショウケース」シリーズの第1弾。初日前には公開ゲネプロと囲み会見が行われ、主演の屋良朝幸をはじめ、上口耕平、吉沢梨絵、小此木まり、樹里咲穂、鈴木壮麻が登壇した。
今回スポットが当てられるのは、主に1920~1940年代のアメリカで活躍した作詞作曲家のアーヴィング・バーリンによる楽曲。その名を知らなくとも、代表曲「ホワイト・クリスマス」は誰もが耳にしたことがあるだろう。このほか「ブルー・スカイ」や「チーク・トゥ・チーク」など今なお親しまれるアメリカン・ポップスの数々が、ミュージカル仕立てのステージでたっぷりと堪能できる。
アメリカが舞台となった物語は、1台のピアノが搬入された楽器店から始まる。ピアノの実演販売員としてやってきたレオン(屋良)は、店主のアレックス(鈴木)から提案された「10分以内に1曲売れたら採用」という課題を見事クリア。販売員として働くことになったレオンは、いつかこのピアノを自分で買い取ろうと夢を抱く。しかし禁酒法時代に“スピークイージー”と呼ばれる隠し部屋で人々がこっそりとお酒を楽しむ様子や、反ユダヤ主義、戦争における収集令状やその背景にある貧困が描かれ、時代とともに流されていく運命。明るいナンバーから暗く切ないナンバーまで、バーリンによる楽曲がさまざまな感情を伝える。
ピアノの音色とキャストの歌声だけで繰り広げられるステージについて、屋良は「ピアノ1本と言えどもエネルギッシュです」と語る。ピアニストを迎えての演奏だけでなく、屋良が生演奏を披露する場面もあり、「生涯、ピアノを弾くことはないと思っていましたが・・・これを機に3カ月くらいみっちり練習しました」と明かした。また場面転換が多く、次々とキャラクターが入れ替わるものの演者は6人のみ。キャスト全員が一人何役もこなしており、屋良は「自分が出演していないシーンも早替えなどで2時間ずっと動きっぱなしで・・・体力勝負だなと思っています」と改めて意気込んだ。
本作では歌唱シーンも多く、ミュージカル界の一線で活躍するキャスト陣による歌声はとてもパワフル。それぞれのソロパートはもちろん、全員のハーモニーが重なったときは、歌声とピアノの音色のみと思えないほどの迫力に圧倒される。そんな豪華なキャスト陣に囲まれた屋良は「本当に皆さんに助けられました」と感謝しきりの様子。「今回はピアノ演奏だけでなく、歌もダンスも今まで自分が見せてきたスタンスとは違うので、すべてが挑戦です。自分の武器を封印しているような感覚でステージに立っているので、観に来ていただくお客さんにとっては、すごく新鮮に感じられると思います」と、屋良にとって新しい挑戦となった本作品。
共演の鈴木は「すごく心強い座長で、彼ががんばっている姿を見て僕たちもがんばりました」と屋良を褒めると、樹里も「稽古場では“俺の背中に付いてこい!”みたいな寡黙な感じです(笑)」と続けた。「いい意味だよ」「かっこいいなと思ってたよ」と称賛された屋良は、「皆さんがすごいから“俺全然できてない!”と焦って楽譜と戦ってただけです」と恐縮。
現場の雰囲気について、屋良が「6人だけというのはすごい一体感で家族みたいな感じです」とリラックスした表情を見せると、上口も「笑顔たくさんの稽古場だったので、笑うと免疫力や回復力が上がって喉にもいいんだと思ってます(笑)」と笑顔を見せた。また、屋良とのダンスシーンが多い小此木は「ダンスが苦手なので・・・稽古のときから屋良さんに引っ張っていただきました」と打ち明けるも、周りからは「タップダンスは一番上手!」との声が挙がった。
屋良からも「“私ダンスは苦手なんです”と言っておきながら、タップシューズを履かせた瞬間一番うまいですから(笑)」と太鼓判が押されるなど、会見は始終なごやかな雰囲気。最後に屋良は「キャスト6人だけの舞台で、素晴らしい楽曲が集まったステージになっています。すごくエネルギッシュで、笑えて感動して、盛りだくさんな作品だと思います。皆さんぜひ楽しみにしていてください!」と観客へメッセージを送っていた。
ミュージカル『I love a PIANO』は、6月11日(日)まで東京・DDD AOYAMA CROSS THEATER(DDD青山クロスシアター)にて上演。その後、大阪、東京凱旋公演が行われる。日程の詳細は以下のとおり。
【東京公演】5月25日(木)~6月11日(日) DDD AOYAMA CROSS THEATER(DDD青山クロスシアター)
【大阪公演】6月13日(火)・6月14日(水) 松下IMPホール
【東京凱旋公演】6月16日(金) よみうり大手町ホール
(取材・文・撮影/堀江有希)