2016年10月にアニー・ベイカー作の『フリック(原題:The Flick)』の日本初演が決定した。本作は、2014年にピュリッツァー賞の戯曲部門を受賞した戯曲。アメリカ・マサチューセッツ州の寂れた映画館を舞台に、若者たちの焦燥感をあぶり出すコメディタッチの会話劇となっている。演出は、劇作家・演出家として幅広く活躍するマキノノゾミ、翻訳は『OPUS/作品』や『バグダッド動物園のベンガルタイガー』を手掛けた平川大作が担当する。
上演にあたり、演出のマキノからコメントが届いた。
◆マキノノゾミ(演出)
現代社会で日常を生きるということは、面倒くさくかったるいことの連続でもあります。次々に押し寄せる様々な事象にいちいち正面からぶつかっていては身が持たないので、大抵の場合、私たちは目をつぶって「えいや!」といい加減に処理しています。小さな嘘をついたり、ちょっとだけズルをしたり、あるいは、ちょっぴり後ろめたくても「まあ、仕方ないか」と誰かを裏切ったりするなんてことも、日常よくあることです。ただ――それだけで一生を過ごしてしまうというわけでもない。時には(つらいことだけれど)きちんと目を見開いて自分の矮小さを見つめ、正面から受け止めようとする瞬間がある。それは、私たちが人間だからです。
優れた戯曲には、そのような人間の瞬間を場面としてすくい取ったものが多い。この『フリック』という新しい戯曲もそうです。淡々と滑稽で、しみじみと哀しくて、でも最後にちょっとだけ心に火が灯るような、そんなお芝居です。ご期待ください。
出演は、映画狂のエイヴリー役の木村了、紅一点のローズ役のソニン、スカイラー役の村岡哲至、映写係を夢見て働くサム役の菅原永二という4名が名を連ねた。
『フリック』は、10月13日(木)から10月30日(日)まで東京・新国立劇場 小劇場にて上演される。