【提供 東宝演劇部】
5月22日(日)に帝国劇場で開幕した『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』。ウーピー・ゴールドバーグ主演の大ヒット映画をミュージカル化した本作は、2009年の初演以来世界中で大ヒット!日本では2014年以来、2回目の上演となる。
100年以上の歴史を誇る帝劇がノリノリのDISCO状態になっているという噂を聞き付け、エンタステージも客席に潜入(?)。今回はその模様をレポートしたい。
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舞台は1977年のフィラデルフィア。この街でクラブ歌手になることを夢見ているデロリス(森公美子/蘭寿とむ)は、愛人であるギャングのボス、カーティス(大澄賢也/石川禅)にステージに立たせてくれるよう頼むのだが全く取り合って貰えない。ある日、デロリスはカーティスの子分・TJ(泉見洋平)、ジョーイ(KENTARO)、パブロ(上口耕平)らが、カーティスと共謀し、他の子分を撃ち殺す場面を目撃してしまう。
街に頼れる人がいないデロリスは警察署に駆け込み、偶然出会った高校の同級生、エディ巡査(石井一孝)によって修道院に匿われる。しかし、そこで暮らすのは規律に厳しい修道院長(鳳蘭)をはじめ、デロリスとは全く違った価値観の中で生きる修道女たちだった…。
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初演からデロリスを演じる森公美子が最高にキュートで愛おしい!ギャングたちに命を狙われ、カトリック修道院に匿われるというなかなかシビアな状況の中、生来の明るさですぐに状況を受け容れ、自分の特技である歌の力で周囲を変えていく様子が見事にハマっている。デロリスが修道女たちにパワーを贈り、修道女たちがデロリスに愛を返すという心のキャッチボールに胸打たれた。
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デロリスと出会い、歌うことの楽しさ、素晴らしさを実感するシスターたちも個性豊かだ。79歳設定のシスター・メアリー・ラザールス(春風ひとみ)のシブいファンキーモードや、自らの道を迷っているシスター・メアリー・ロバート(宮澤エマ)の真っ直ぐで美しい歌声、デロリスに憧れるシスター・メアリー・パトリック(浦嶋りんこ)のたくましさ等は客席にストレートに響き、彼女たちから前向きな“力”が届く。
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そんなシスターたちの中でも圧倒的な存在感を誇るのが修道院長役の鳳蘭である。神に仕える敬虔なカトリック信者でありながら、どこか可笑しみもたたえているため、デロリスとの相容れない価値観の違いや、彼女が現れたことへの混乱がシリアスになり過ぎず、ちょうど良いバランスで表現されていた。この人物造形は流石の一言!デロリスと修道院長の懺悔室での場面は秀逸だ。
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また、修道院の運営を気に掛けながら、デロリスと修道女たちの歌が“ビジネス”になると踏んだ途端、自らもキラキラの衣装に身を包みMC役を買って出るオハラ神父(今井清隆)や、最後の部分で詰めが甘いギャングのボス・カーティス(石川禅)、彼の子分の“三バカトリオ”らの硬軟取り混ぜた演技も非常に楽しい。
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本作の大きな“売り”の一つが『リトルマーメイド』や『アラジン』でもお馴染みの作曲家、アラン・メンケンが紡ぐキャッチーなナンバーの数々なのだが、70年代のディスコサウンドを意識した劇中曲を聞いていると、自然に気持ちも体もノってくる。入場時に入り口で配られる「光るブレスレット」を装着し、ジョーイとパブロ指導のもと、カーテンコールでデロリスやシスターたちと一緒に踊れる演出も心憎い。
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誰もがハッピーになれるエンディングが用意されている『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』。シンプルな物語であるがゆえに、キャスト全員のしっかりした実力がより浮き出ていたように思う。『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』といった重厚さもある作品で活躍したベテランキャストたちが底抜けに明るくハジけ、観劇後は幸せな気持ちで劇場で出られる本作のパワーをぜひ劇場で体感して欲しい。
(文中のキャストは筆者観劇時のもの)
(取材・文/上村由紀子)