2015年6月5日(金)より東京・シアタートラムにて日本文学シアター vol.2【夏目漱石】『草枕』が上演される。本作は、劇作家・北村想が日本文学へのリスペクトを込めてオリジナル戯曲を書き下ろす“日本文学シアター”シリーズ第2弾となる。第1弾では、太宰治の未完の絶筆『グッド・バイ』を取り上げ、登場人物やストーリー展開に大胆な発想を加味。第17回鶴屋南北戯曲賞を受賞するなど注目を集めた。
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執筆前はごく限られた漱石作品しか読んでいなかったという北村だが、旧知の仲である演劇評論家・安住恭子が2012年に発表した『「草枕」の那美と辛亥革命』により認識を一変。その著書は『草枕』のヒロイン・那美のモデルとされている前田卓(つな)という女性についての評伝で、これに大いに刺激を受けた北村は、ヒロイン像から得たインスピレーションと漱石流の芸術論をもとに新たな作品として本作を作り上げた。原作の骨格を大きな枠組みとしつつ、軽妙なおかしみと心震える叙情感が絡み合った北村ならではの独特の美学溢れた仕上がりとなっている。
出演は、第1弾『グッド・バイ』で作者の分身とも思える教授の純愛を演じ絶賛を浴びた段田安則が、本作の主人公である画工(画家)を演じる。物語のカギを握る謎めいた女性・那美には、北村が執筆時からヒロインとしてイメージしていたという小泉今日子が登場。画工の旅路の行く先々に現れる男女複数の人物を浅野和之が演じるほか、春海四方、山田悠介(D-BOYS)が主人公とヒロインに関わりながら、物語を静かに進行していく。演出は、前作に引き続き北村の信頼厚い寺十吾が続投する。
“智に働けば角が立つ。情に棹されば流される。意地を通せば窮屈だ。とにかく人の世は住みにくい”という冒頭の一節で名高い名作に、どのようなリミックス効果がかけられるのか。ここでしか味わえない、もうひとつの『草枕』が誕生する。日本文学シアター vol.2【夏目漱石】『草枕』は、2015年6月5日(金)から7月5日(日)まで東京・シアタートラムにて上演される。
撮影:加藤孝