紙や布などの日常的な素材、日本の文楽にも影響を受けた人形、ダンス、マイム、マジックを駆使して舞台空間に生命を吹き込み、他に類を見ないステージアートで世界の人々を魅了してきた“舞台の魔術師”フィリップ・ジャンティ。彼が率いるカンパニー・フィリップ・ジャンティの『忘れな草』が16日、東京・渋谷のPARCO劇場で開幕した。
今回幻想的なシーンを演じるのはノルウェーの若手パフォーマー達。1993年の『忘れな草』日本初演版をリニューアルし、「北極大平原における歌」という要素を加えた新バージョンでの上演となる。
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巨大な冬景色の中、雪ゾリに乗った夢の配達人たちが集めているのは死んでしまった「思い出」のかけら。そこから一人の女の過去との対面が始まる。一体彼女はどんな男たちと関わり、どんな生涯を送って来たのか。人形と人間が不思議に交差する舞台を見つめるうちに、観客もいつしか幻想的な世界へと引き込まれていく。セットの一部だと何気なく目にしていた巨大な布がまるで高貴なドレスのように、時には命を得た生き物のように自由に動き回る姿は感動的だ。
初日に先駆けて行われた公開舞台稽古終了後には出演者らによるレクチャーも行われ、本作で重要な役割を果たす人形をパフォーマーが動かす様子も公開された。出演者それぞれの顔をかたどり、そっくりに製作された等身大の人形たちが舞台上で命を吹き込まれる様子は必見。
白井晃、森山未來、宮本亜門、行定勲、cobaら各界のトップクリエイターたちに大きな影響を与え、彼らに絶賛されているカンパニー・フィリップ・ジャンティの『忘れな草』。左脳で難しく考えるのではなく、作品に身を預け、感性と感覚を研ぎ澄まして体感したい“魔法の舞台”である。
カンパニー フィリップ・ジャンティ『忘れな草』は、10月16日(木)~26日(日)東京・パルコ劇場にて上演(レクチャートーク開催決定)。その後全国10か所での公演もあり。