後藤ひろひとが劇団遊気舎に書き下ろし、パルコ劇場でも2度再演されたファンタジーホラーの傑作『人間風車』。これまで生瀬勝久、斉藤由貴、阿部サダヲ(2000年版)、入江雅人、永作博美、河原雅彦(2003年版)、などそうそうたるキャストが出演し人間の恐怖と悲哀をあぶり出した人気作が、来る9月、東京芸術劇場プレイハウスで蘇る。
主人公は、近所の公園で子供たちに話を聞かせるのが精一杯という売れない童話作家・平川。ある日テレビ局に勤める友人に金を借りに行った彼は、そこで出会った女優・アキラと恋に落ち、これをきっかけに1本の傑作童話を書き上げる。しかし、そんな幸せも束の間。自らの発言が原因でアキラにフラれた平川は、同時に友人からも裏切られ、作品の発表も夢と消えてしまう。再びどん底に落ちた平川は自暴自棄になり、ある復讐を思いつく・・・。
演出を手掛けるのは、2003年に主要キャストのサムを演じた河原雅彦。主演は、会話劇からミュージカルまで多彩な活躍を見せる成河、ヒロインは2度目の舞台出演となるミムラが演じる。そんな二人の間を渡り歩く物語のキーパーソンに抜擢されたのは、唯一無二のインパクトを放つ加藤諒。過去の舞台でもゆかりのある3人に話を聞いた。
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それぞれの時を経て、また同じ舞台を作るという喜び
――先ほどちらっと会話が聞こえてきましたが、ミムラさんもご一緒に相当盛り上がっていらっしゃいましたね!
成河:この3人はそれぞれ一緒になったり面識はあるんですけど、ミムラさんはみんなの謎だったんですよ。今日お話してみたら、ほんっとに面白い人で!
河原:いや~ほんとよかったなぁ。なんかすみません、インタビューが僕ら3人で・・・(笑)
成河:真面目でストイックでいらっしゃるんだろうなとは思うんですけど、それを明るく表現できる人。お話も面白くて、素敵でした。
河原:さすが、カタカナでミムラなだけあるわ(笑)
――みなさんが揃われたのは今日(ビジュアル撮影)が初めてだったんですね!
河原:そうです。諒と成河は、前は何で一緒だったんだっけ?
加藤:NODA・MAPの『ザ・キャラクター』と本谷有希子さんの『クレイジーハニー』で一緒でした。初めて会ってからはもう結構な月日が流れているんですよね。
――当時のお互いの印象や、ご一緒されて感じた魅力は?
加藤:成河さんは、とにかく身体能力がすごくって、あと声も素敵。初めてお会いしたのは野田秀樹さんのワークショップだったんですけど、率先して周りを引っ張ってくださって。頼りにさせてもらっています!
成河:諒ちゃんは、このまま生まれて、このまま年を取らないんだろうなあって(笑)。だって、NODA・MAPの時ってあれもう何年前?7年とかだけど、外見1ミリも変わってないよ(笑)。でも、こう見えても腹の中できちっと考えて、しっかり自分を持っている子なんですよね。また一緒にお芝居できるのが楽しみです。
――過去に、加藤さんは残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』、成河さんは『ショーシャンクの空に』で、それぞれ河原さん演出の舞台に出演していらっしゃいますよね。その時の思い出や印象深かったことはありますか?
加藤:河原さんは、面と向かってちゃんと話をして下さいますし、ダメな時ははっきりダメって言ってくださる人。大好きです!
成河:僕にとっては、とにかくなんでも話せる方。目線を落として、寄り添って、役者のことよくわかってくださる方で、信頼しています。
初めて会った時から異彩を放っていた役者陣
――河原さんから見て、お二人の印象は?
河原:諒と最初に会ったのは6、7年前なんだけど、成河の言う通り、ほんとこのまんま変わらない。うまく言えないんだけど、諒をパッと見た瞬間「なんなの!こいつ」って誰でも思うでしょ?どういうつもりで生きてきたらそんな感じになるの?って(笑)。
成河:うんうん、そうですね!
河原:だから、当時からなんで売れてないか謎だった。当時から売れていないのがわからなかったんですよ。こんな面白い生き物、なんでみんなほっとくの?って。ドル箱の面白さを持ってるって思ってたから、一緒に独立しようかと思ったくらい(笑)。今の状況とか全然不思議じゃないよ。ただ、世間にバレちゃった感というか、少し寂しい気持ちもあります。
成河:あ~うまい店だったのになぁ~っていう。
河原:そうそう!見た目変だけど、口に入れたらなんかうめー、みたいな。だけどやっぱり、以前とは意識が違いますね。加藤諒が認知された状態、そのタイミングでまた一緒に芝居をするっていうのは。バラエティとかも出てるからパブリックイメージも絶対あるじゃないですか。そういう状況で諒をどう使うか、どういうサム(役名)にしようかなって考えています。コメディなら分かりやすく諒の持ち味が出せるけど、今回の役どころで担うのはそこじゃないからね。そこは悩ましいところでもあるし、楽しみなところでもある。
――河原さんと成河さんは、過去に俳優としてもご一緒されてたんですよね?
成河:すっごい昔ですよ。僕がまだアンサンブルで出ていた頃です。
河原:当時から、群を抜いてたよね。まず声、それから存在感が怖いぐらいはみ出てたよ。もはや、アンサンブルとしては失格でしょ?(笑)。
成河:すみません・・・(笑)。
河原:メインの人たち食っちゃう勢いで目がいっちゃうから。「うわ、誰こいつ!」的な舞台上での存在感。だから、成河にしても今の活躍はちっとも不思議じゃない。二人とも売れないわけないって思ってた。そんな二人と一気に再会できるなんて、感慨深いものがありますね。
カンパニー力を感じる、面白い舞台が作りたい
――河原さんがご出演されていた2003年から14年が経ちますが、このタイミングでの再演、そしてプレイヤーから演出へと立場を変えての挑戦についてはどんな思いがありますか?
河原:今、この時代にこの作品をやる意味とかって、舞台のインタビューでもよく聞かれるんですけど、単純にそれがいい舞台になったら、いつやってもいいやって思うんですよ。
成河:それは本当にそうだなって僕も思います。
河原:今の時代と照らし合わせて、どう感じて受け取るのかは観る人によると思うし、個人差もあると思うんです。僕たちはシンプルに、このメンバーで作る『人間風車』を魅力的に作っていきたい。面白ければ、それだけで意味があると思うんです。
――稽古に入るにあたって、ここに苦戦しそう、ここが楽しみというところは?
加藤:怖いのは、やっぱり役柄。サムという役は、特殊というか、僕がこれまでやってきたどの役とも全然違うので、新しい一面に挑戦するっていうことが不安ですね。どこまでやれるんだろうってすごく考えています。
河原:前回僕が演じた役ではあるけど、もう元の容れ物が違いすぎて予測不可能ですね(笑)ま、大丈夫な気はしてますよ。得体の知れなさは内蔵されてますし。
成河:こうやっているだけで何考えてるかわかんないですもんね。もちろん、僕らみたいに諒ちゃんの中身を知っていたら分かりますけど、見た目だけじゃ本当に何にもわからないっていう顔を諒ちゃんは持っています。
河原:『人間風車』は童話の話だけど、もはや諒の存在自体がファンタジーだよね。だってさ、ある時いきなり「諒、実はカメムシだったらしい」ってなって、パッと見たら諒がいなくてカメムシがいたりしても、ちょっと時間を置けば、納得できる気がするもんね(笑)
人が見たくないもの、人の見たくない部分をとことん見せる作品
――どんなサムになるのか楽しみです!台本を読ませていただいて、冒頭と結末で、ここまで抱く気持ちが変わるのかとすごく怖かったですし、そこが楽しみにもなりました。
成河:役者として、この作品をやるにあたって、一番大変であり、面白くあり、意味があるのは、「ごまかしがきかないこと」だと思うんです。人間の恐ろしさとか、人が見たくないことを見せる作品なので、生半可だとバレる。目の前にいる人が「ああ、そっちに転んだな」って本当にリアルに思ってもらうためには、本気でやらないと。今の僕たちが見たくないものをどこまで追求できるか、とことんやりたいです。覚悟しつつ、楽しみにしていただければ!
河原:そうだねえ。とにかくミムラさんがね、楽しみです。ミムラさんがいない稽古とかいやだなぁ・・・。
成河:河原さん、そこはお願いします!「河原さん今日あからさまにやる気ないな・・・」みたいなのは・・・。
河原:まあ、それは冗談ですけど(笑)でもね、こういう仕事を長くしていると、今日みたいに取材やスチール撮影で皆さんと一緒になったり、ちょっとお話ししたりすると、なんとなく分かるんですよ。「あ、イケる」とか、「これ大丈夫かな」とかって。でも、今回は“イケる”やつです。
加藤:僕も、素敵なキャストの皆さんとご一緒できるのが一番楽しみです!初めて一緒になる方や、今まで舞台やTVで観ていた方とか、知ってはいるけどお仕事でご一緒したことない人ばかりだから。
河原:でもさ、諒の役柄的にはほとんど成河とミムラさんとしか絡まないんだよ!
成河:本当に毎日稽古場来るの?
加藤:行きます~!だって、僕そういうスケジュールですもん!ねえ?(マネージャーを見る)本当にこの舞台に懸けなさいって言われていますし、殻を破れるように頑張りたいと思っているので、毎日行かせていただきます!
河原:最後の最後にごめんなさいね。顔面の割に普通のことしか言えなくて・・・(笑)ああ、ミムラさんに締めてもらえたらな~!
◆PARCO&CUBE 20th. Present『人間風車』
2017年9月28日(木)~10月9日(月・祝) 東京・東京芸術劇場 プレイハウス
2017年10月下旬 大阪・森ノ宮ピロティホール
ほか各地公演予定
【作】後藤ひろひと
【演出】河原雅彦
【出演】
成河、ミムラ、加藤諒、矢崎広、松田凌、今野浩喜、菊池明明、
川村紗也、山本圭祐、小松利昌、佐藤真弓、堀部圭亮、良知真次
【企画・製作】パルコ・キューブ
https://www.parco-play.com/web/program/ningenfusha/
ヘアメイク:Leinwand(成河、加藤)
スタイリスト:宮本真由美(MYPS)(成河、加藤)
衣裳クレジット:KINJI(成河)
(撮影/高橋将志)