2025年2月15日(土)に開幕した「舞台『刀剣乱舞』十口伝 あまねく刻の遥かへ」。シリーズ初の短編連作集(オムニバス)となる本作で小烏丸役を担ってきた玉城裕規と、七星剣役として新たに刀ステに加わった加藤良輔が共演する。
キャリアを重ねてきた二人だが、意外にもしっかり共演をするのは初だという。元同じ事務所の先輩後輩として、目に見える以上の関係性を築いてきた二人が、舞台上でどう向き合おうとしているのか、話を聞いた。
加藤良輔「僕自身が刀ステに携われる機会はないかなと思っていたので・・・」
――加藤さんは、新たに刀ステに参加されることになりましたが、七星剣役に決まった時のお気持ちを振り返って教えてください。
加藤:不安もプレッシャーもあったんですけど、やっぱり一番は「嬉しい」気持ちでいっぱいでした。正直なところ、僕自身が刀ステに携われる機会はないかなと思っていたので。だから、このご縁をいただけて「すごく嬉しい!」というのが、率直な気持ちでした。
――玉城さんは、舞台『刀剣乱舞』にご出演されてもうどれぐらいになりますかね?
玉城:僕は、悲伝からなので・・・7年ぐらい経ったのかな?もう結構前になりますね。僕も、当時は良輔さんと同じような気持ちになりました。人気コンテンツであり、作品としてもすごく面白いシリーズでしたから。若手が登用されていくんだろうなと思いつつ、この業界に身を置いている者としては、やはり「出てみたい」という気持ちはあったので。
――お二人が演じられる刀剣男士は、共に古い時代に生まれた刀剣ですから、キャリアのある役者さんが抜擢される意味も強く感じました。
玉城:でも僕、小烏丸役でとお話をいただいた時、本当にびっくりしたんですよ!「・・・俺?!」って。原案ゲームの「刀剣乱舞ONLINE」って、複数のイラストレーターさんが刀剣男士を描かれていて、小烏丸って特に絵のタッチが繊細で、神様みたいなビジュアルじゃないですか。小柄で細身で、母のようで、父である。神秘的過ぎて、人間離れしているなって。
加藤:確かに。
玉城:やっぱり、2.5次元化する上で、入口としてビジュアルってすごく大事じゃないですか。小柄なかわいらしい方が威厳を持って演じるような小烏丸を、自分が演じる「意味」。小烏丸が“刀剣の父”と言われている部分に、その大きな「意味」があるのかなと思いました。
でも、小烏丸って自分では“刀剣の父”って言ってるんですけど、周りからはあまり“父”と呼ばれていないんですよね(笑)。そういう部分が、愛嬌があるし、素敵だなと思いました(笑)。
加藤:俺も、玉ちゃんが小烏丸に対して思ったのと同じように「俺が七星剣になれるのかな?!」って思ったよ。七星剣も、ビジュアルからしてすごくミステリアスで神秘的な存在なので、この役をいただいたことは、自分にとっての一つ大きな挑戦だから、本番の舞台で、それをうまく表現できたらなって。
玉城:七星剣は、「聖徳太子の剣」って言われていますけど、何が本当なのか分からないですもんね。
加藤:うん。だから、小烏丸役の玉ちゃんがいて、僕らの役がペア的に描かれるって聞いた時は、アツい!心強い!って思った。俺はすでに玉ちゃんの演じる小烏丸を観ていたし、俺からしたら、玉ちゃんも結構神秘的なイメージの人だから(笑)。
玉城:(笑)。
元同じ事務所の先輩後輩!意外にも初めての共演
――加藤さんと玉城さんは、すでにお互いをよくご存じですが、共演自体は初めてですよね・・・?
加藤:もともと同じ事務所に所属していたので、お互いのことはよく知ってるんですが、共演自体はほとんどなかったね。
玉城:良輔さんが出演していて、僕がアンサンブルで参加させてもらった舞台があったぐらいでしたね。映画では一回あったかな・・・?でも、それも結構前ですよ。事務所の先輩後輩として、イベントに一緒に出たりはしていたんですが、共演っていうと、あれ?意外とない・・・って感じなんですよね。
加藤:そうそう、よく知ってる関係なんだけど。
――なるほど。じゃあ、玉城さんが刀ステに加藤さんが来る!って聞いた時は・・・。
玉城:ブチ上がりました!
加藤:(笑)!
玉城:そもそも「刀剣乱舞」に「剣(つるぎ)」の刀剣男士が出てくると思ってなかったんです。「え、小烏丸“父”じゃなくなる?!マジかよ?!」って(笑)。でも、七星剣がお披露目になった時、個人的にめちゃめちゃ好みの刀剣男士だったんです。「舞台に出てくる時は、僕が小烏丸と七星剣、両方やりたいです!」って冗談みたいなことを言っていたぐらい好きで。そんなキャラクターを、良輔さんが演じるって決まったでしょう。ビジュアルが出て「めちゃめちゃ素敵!」って思っていたら、物語の中でペア的になっていたから「え、お芝居もめっちゃご一緒できるじゃん!」って、段階的にどんどんテンションが上がっていって、の、今です。
加藤:そう言ってもらえるのはめちゃめちゃ嬉しいね~。
玉城:しかも、「剣(つるぎ)」の七星剣は、“刀剣の父”である小烏丸より古い存在ですから、先輩が演じてくれるのは、自分の気持ちの面でもお芝居に反映しやすいなって思います。
加藤:俺もめちゃくちゃ嬉しくて、爆上がりだったよ。玉ちゃんが事務所を離れてからかなりの時間が経っているし、当然その後の玉ちゃんの活躍も見ていたわけだから。
玉城:いやいやいや。
加藤:俺的には、先輩後輩っていう意識はあんまりなくて、昔から、玉ちゃんは玉ちゃんって、関係性を築いてきたわけだから。
玉城:それは、良輔さんが分け隔てなく接してくださっていたからですよ。
加藤:同じ事務所にいた時、先輩二人と、下二人が俺らって感じだったんですよ。だから、その時の関係性は、時が経って別の事務所になっても変わらないし、玉ちゃんと俺にしか出せない、二人の間にあるものを役にも活かせたらいいなって思ってる。
玉城:台本を読んでいても、なんか、良輔さんと玉城の歴史って言われているような感覚にもなるので、ダブルで気合が入りますよね。
オムニバス形式の脚本は刀ステ初の試み
――今回、脚本がオムニバス形式になっていて、複数の脚本家さんが書いているというのも、刀ステとしては新たな試みですね。
玉城:哲学要素や宗教性も根底にあって見え隠れしていて、それに対してどうあるべきか、答えは見えないのかもしれないけど、そこにはある、みたいな感覚になる。
加藤:・・・難しいっす。想像していた以上に深い。深くて考察しがいがあって、その場で消化できない。持ち帰ったところで、なんですけど。
玉城:良輔さん、消化できてたらうちら悟り開いちゃう。
加藤:確かに。
玉城:「〇〇の使っていた刀」って所縁があれば、分かりやすいんですけど、僕らが演じる刀剣男士はどちらも分かりやすい“物語”ではないですしね。
加藤:七星剣は、一応「聖徳太子の剣」って言われているけれど、聖徳太子自体がよくわからない点が多い存在だもんなあ。昔、教科書で普通に「聖徳太子」のこと習ったけど、またちょっと変わってきているんでしょう?教科書に載っていた「聖徳太子」の絵は聖徳太子じゃないんじゃないか?とか、そもそも「聖徳太子」はいなかったんじゃないか、とか。
だから、台本を読み始めた当初、時代がこうで、こういう背景があって、あーでこーでって調べながら。
玉城:理解しながら進めたいですもんね。
加藤:でも、全然進まないから、ダメだ!とにかく一回読もうと思ってページを進めるんだけど、やっぱり分かんないからワンクッション欲しくて調べるのよ。俺の学生の頃にも「刀剣乱舞」とかがあったらなあ。もっと歴史勉強してたのになあ!
玉城:(笑)。あと、オムニバス形式だから、ほかのキャストさんとの関わりが少ないんですよね。
加藤:そうだね。役者本人は知ってる子もいるんだけど、お互いの稽古をそんなにたくさん見ることも、最初の頃は特にないからね。
玉城:だから一層、僕たちだけでなくペアとなっている刀剣男士同士の芝居は濃いものになると思います。
――殺陣はどうでしょう?
玉城:まんべんなく、あるはずです。
加藤:俺、殺陣は本当に久しぶりなんですよ。今まであんまりやってきていなくて。ダンスとかで動くのとはまた違うじゃないですか。
玉城:あの衣裳、あのウィッグをつけて立ち廻りをするということは、普通の殺陣とも感覚変わりますからね。
加藤:俺、舞台『刀剣乱舞』観に行って、「うわ、すごいな!」って圧倒されたのよ。それに今度は自分も挑戦できるんだと思うと、本当に楽しみで。
玉城裕規「良輔さんと玉城の歴史を見えないところでプラスに作用させられたら」
――お二人の関係性の上に生まれる新たな物語を、楽しみにしています!
加藤:とにかく、この「刀剣乱舞」というコンテンツを愛する皆さんに、応援してくださるたくさんの方々に、新しい挑戦を楽しんでもらえるように精一杯がんばりたいと思います。ほんと、いろんな話が次々と語られて面白いなと思うので!一公演一公演、一つ一つを楽しんでもらいたいです。
玉城:良輔さんが言ったように、オムニバスならではのワクワクする作品になっています。七星剣、小烏丸の物語に、良輔さんと玉城の歴史を見えないところでプラスに作用させられたらなと思っています。
加藤:邪魔にならない程度にね(笑)。
玉城:そういうのいらないって言われない程度に(笑)。でも、目に見えない空気感は絶対プラスに持っていけると思うんですよ!座組の刀剣男士最年長コンビにもなるので、作品の重みや奥行きを出す存在になれたらなと。良輔さんと踏み出す新たな一歩を、皆様と一緒に共有できることを楽しみにしております。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)
2月16日(日)と3月16日(日)にライブ配信、3月16日(日)18時~大千秋楽ライブビューイングあり。