2024年11月21日(木)に東京・IMM THEATERにて舞台『夢見る白虎隊』が開幕した。初日当日に公開ゲネプロが行われたので、その模様をレポートする。
戊辰戦争において悲劇的な運命をたどった少年たち『夢見る白虎隊』
本作は、新政府軍と旧幕府軍が争った日本近代史最大の内戦・戊辰戦争において悲劇的な運命をたどった少年たち“白虎隊”を描く作品。16から17歳という若さで自ら戦争に赴くことを志願した彼らを、現代の若者と変わらない、それぞれ魅力的な個性をもった少年たちとして描き、未来を夢見る彼らの姿を明るく描く青春群像劇となる。
脚本は、映画『20世紀少年』、テレビドラマ『ブラッディ・マンデイ』など数々の人気作品を手掛ける渡辺雄介。演出は、1993年の旗揚げより2006年のさよなら公演まで「転球劇場」で全作品の出演・構成・演出を手掛けたほか、バイプレイヤーとして様々な映像、舞台作品に出演する福田転球が務める。
演じるのは、白虎隊役に、少年忍者から、深田竜生(篠田儀三郎役)、黒田光輝(飯沼貞吉役)、檜山光成(林八十治役)、元木湧(井深茂太郎役)、安嶋秀生(有賀織之助)、鈴木悠仁(間瀬源七郎役)、豊田陸人(石山虎之助役)、稲葉通陽(津川喜代美役)の8名。そしてスパイクから小川暖奈(井深ゆめ子役)。
ゲネプロレポート:少年忍者が鮮烈に演じる幕末の若者たち
物語は、1867年(慶応3年)12月の大晦日から始まる。明治新政府軍と旧幕府軍の争いが激化し、戊辰戦争の足音が近づく会津藩は若松城近くの剣術訓練場で剣術に励む8名の少年たち。少年たちはいずれも優秀な若き侍ながら、まだ少年ゆえに戦いの前線に送り込まれる予定ではなかった。しかし、共に会津のために戦いたいと、会津藩主・松平容保に嘆願書を送ることにする。
その嘆願書は受け入れられ、少年たちは志願兵として戦地へ赴くことになった。出陣の際に、少年たちは容保公から名前を授かった。その名は“白虎隊”。
しかし、最新の兵器を有する新政府軍に幕府軍は連戦連敗を重ね、会津藩は徐々に追い詰められる。命からがら飯盛山の中腹まで逃げ延びた少年たち8人は、そこで炎上する若松城を目撃する。絶対絶命の状況に、果たして8人はどのような未来を選択するのか・・・。
幕末に10代の若き会津藩士たちによって組織された“白虎隊”。戊辰戦争のさなか、飯盛山で白虎隊の士中二番隊の一部の隊士が自害したという史実をベースとした本作。史実と実在の人物たちに、隊士の1人に特殊な能力を持たせることで、人間関係と物語をよりドラマティックに描き上げ、魅力的なものとしている。
さらに、戦争に翻弄されながらも明るい未来を夢見て幕末を懸命に生きた少年たちのドラマを、戦地に赴く前の若者たちの明るさと白虎隊となった後に訪れる悲劇の緩急のバランスを持って描き上げることで、白虎隊に待ち受ける運命の過酷さをより際立たせている。
儀三郎を演じる深田は、歌舞伎作家志望で笑いを愛するムードメーカーっぷりを発揮。貞吉を演じる黒田は「男なら」「武士たるもの」という思いを人一倍見せ、特殊な能力を持つ八十治役の檜山はマイペースな空気をステージに作り上げる。
その3人を軸に、自信家で会津藩の勝利を疑わない茂太郎を演じる元木、武芸に優れ、腕っぷしの強い織之助役の安嶋、お洒落でモノマネが得意な源七郎の鈴木、類いまれな記憶力を持つ虎之助役の豊田、仲間の最年少でマスコット的存在で魅せる喜代美役の稲葉という、個性溢れる登場人物たちがステージ上を駆け巡る。
そんな白虎隊の登場人物たちそれぞれの個性が光り輝き、その連なりの中で、若者たちの純粋さや無邪気さが少年忍者のフレッシュさとマッチする。そして、8人を優しく見守る茂太郎の姉・ゆめ子を演じる小川はストーリーテーラーとしても物語を牽引していく。
歴史に紡がれてきた幕末における悲劇の物語の裏に描かれる夢と、まばゆい若者たちを少年忍者が鮮烈に演じ上げる舞台となっている。
舞台『夢見る白虎隊』は、11月21日(木)から11月25日(月)まで東京・IMM THEATER、11月28日(木)から12月9日(月)まで大阪・大阪松竹座、12月21日(土)から12月22日(日)まで石川・北國新聞赤羽ホールにて上演。
(取材・文・撮影/櫻井宏充)
舞台『夢見る白虎隊』公演情報
【公式サイト】https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202411zenkoku/