おぶちゃ『ポエム同好会』石渡真修・吉田知央らが紡ぐ“陰”の青春コメディ【レポート】

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おぶちゃ『ポエム同好会』舞台写真

2024年10月14日(月・祝)まで、東京・中目黒キンケロ・シアターにて舞台『ポエム同好会』が上演されている。本作は、大部恭平が主宰する企画団体「おぶちゃ」の7周年記念公演。石渡真修・吉田知央がW主演を務める。

目次

舞台『ポエム同好会』のあらすじは?

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物語は、一人の転校生が担任と面談しているシーンから始まる。転校生・関春生(石渡真修)は元サッカー部だったが、「もうサッカーはやらない」と話す。そこで、担任の韮山(小谷嘉一)は、関を自分が顧問を担当している「ポエム同好会」へと誘う。

「ポエム同好会」のメンバーは、内弁慶な権藤太志(吉田知央)、部長の志村蓮(望月雅友)、シスコンで唯一の2年生である松原真之介(真野拓実)、アイドルの箱推しをしているせいでマッツーに借金ばかりしている弓崎琉輝亞(岡部直弥)。

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明らかに“モテそうにない”メンバーたちに、馴染めない関だったが、そんなことはおかまいなしに、権藤たちは「一緒に“セッション”しよう」と誘う。そこへ、突然「文化祭で何かしなければ廃部」というピンチが訪れる。

職員室では、ダンス部顧問兼生徒会顧問の榎本(髙畑岬)、セクシーな保健室の先生・堤(宮越愛恵)、非常勤講師で琉輝亞の兄・力也(柳下大)、そして「ポエム同好会」顧問の韮山の間で、「ポエム同好会」の廃部について話し合われていた。

そんな中、榎本からダンス部が文化祭で「恋愛リアリティーショー」をしたがっていると話が上がる。廃部の危機を回避するために、韮山は「ポエム同好会」を「恋愛リアリティーショー」に参加させることにする。

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突然の話に、同好会メンバーは浮足立つ。相手になるダンス部は、速水明世(未菜)、篠田真希(工藤菫)、三浦琴乃(彩島圭叶)、モリコこと小森和歌菜(鈴理)と超明るい女子たち。無理だと困惑する一同だったが、妙に乗り気なメンバーも・・・。

真之介の姉の絵美(宮﨑想乃)や、韮山に憧れる2年生の岩田香織(紅羽りお)らも巻き込んで、「ポエム同好会」は存続をかけて「恋愛リアリティーショー」に挑むことに――!

『ポエム同好会』想いを紡ぐ“セッション”

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こういう男子(女子も)、いたよね。

学生時代、教室での居住まいを思わず思い出す。教室の光と陰。でも、別に陰にいることが悪いことなわけじゃない。陰にも陰なりの楽しさがあり、青春があるのだ。そして、「居場所」があって、「友達」がいるってすごく大切。

「ポエム同好会」のメンバーは、関を除いていわゆる“陰キャ”と呼ばれる学生たち。一口に言っても、その“陰”っぷりは人それぞれに違うけれど、何故か彼らは「ポエム」という表現を通じて共鳴している。

劇中には「セッション」「チェイス」「クロスファイヤー」など、誰も知らない(何故なら彼らが考えた“技”だから)共通言語が登場する。知らないはずなのに、「なんか分かる~!」と思ってしまう不思議な感覚を味わえる。

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転校生の関は、意図せず参加させられた身であり「ポエム同好会」のメンバーを一歩引いた目で見ている。ストーリーテラー的存在だが、演じる石渡はその中で生じる些細な心の揺れを丁寧に表現。特に、もともとの台詞なのか、アドリブなのか、ツッコミの一言を投げる間が絶妙で、関というキャラクターを強めていた。

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権藤を演じる吉田も冴えわたっている。権藤は、挙動不審だし、急に大きな声を出したり、どうにも落ち着かない少年。ポエム部の中で一際こじれた“陰”を抱えている。でも、悪いヤツじゃない。内に秘める感情は誰よりも大きく熱いのに、最後の一歩が踏み出せない。(誉め言葉として)絶妙にキモいのに、「がんばれ」とエールを送りたくなる愛すべきキャラクターとなっているのは、吉田の役への没入っぷりが大きいだろう。

おぶちゃ『ポエム同好会』舞台写真

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少年たちを取り巻く大人たちの存在感も心地よい。小谷が演じる「やっていることはよく分かっていなそうだけど、愛着は持ってくれている」顧問っぷりも、ヒール的な役割も担う高畑の温度感も、宮越が創る独特の世界観も、コメディリリーフとして先生と生徒の間を行き来する柳下のフットワークの軽さも(なお、柳下は本作が本格的な俳優復帰作となる)、ちょうど良いバランスで物語に奥行きを出してくれる。

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そして、「ポエム同好会」に大きな影響を与える絵美を演じる宮﨑が頼もしい。かわいらしい見た目からは想像がつかない性格の人物を、豪快かつ愛情深く仕上げた。

「ポエム同好会」も、「ダンス部」も、みんな愛すべきキャラクター。いつかの教室を思い出す。ひたすら笑っていたのに、妙にぐっとくる。最後、誰も言葉を発していないはずなのに、劇場のあちこちから「がんばれ・・・」「がんばれ・・・」と心の中でささやく声が聞こえた気がした。

おぶちゃ『ポエム同好会』舞台写真

劇場で紡がれる、不器用な青春のひと時。劇場を出たらきっと、“セッション”したくなる。かも?

『ポエム同好会』は、10月14日(月・祝)まで東京・中目黒キンケロ・シアターにて上演。上演時間は約2時間を予定。

また、各公演の終了後にはゲスト登壇を含むアフタートークが実施される。詳細は公式サイトにてご確認を。

【公式サイト】https://ofcha.biz/poem2024

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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