2024年11月より『そのいのち』の上演が決定した。本作の脚本を務めるのは、個性的な存在感でドラマ・映画・バラエティと大車輪の活躍をみせる佐藤二朗。ミュージシャン・中村佳穂の同名曲にインスパアされ、12年ぶりに新作を書き下ろす。
映画『竜とそばかすの姫』で注目を浴びたミュージシャン・中村佳穂の楽曲を聞いたことから始まった物語
佐藤は、俳優としての活躍もさることながら、演劇ユニット「ちからわざ」の主宰として、全公演で作・出演を担当してきた。佐藤が原作・脚本・監督を務めた映画『はるヲうるひと』は、第2回江陵国際映画祭 最優秀脚本賞を受賞するなど高く評価されている。演劇の戯曲を書き下ろすのは、2012年に上演された『ハラナイ荘の人々』以来、12年ぶり。
インスパイア元となった楽曲は、映画『竜とそばかすの姫』でヒロイン・すず/ベルの声優を務め、劇中歌で注目を浴びたミュージシャン・中村佳穂の楽曲「そのいのち」(2018)。
佐藤はこの楽曲から、介護ヘルパーとして働く山田里見と、彼女の雇い主で障がいを持った相馬花とその夫・和清の穏やかな日々、そして、あることをきっかけにその穏やかな関係が徐々に狂い始めていく様から、「持つ者」と「持たざる者」の間にある埋めようのない「溝」を描いた。
介護ヘルパーとして働く山田里見役を演じるのは宮沢りえ。そして、里見の雇い主である相馬花の夫・和清役は佐藤自身が演じる。宮沢と佐藤がタッグは、2018年公開の映画『ルイスと不思議の時計』で声優としての共演以来となる。
このほかの詳細は、続報を待とう。
『そのいのち』は、11月 9日(土)から11月17日(日)まで東京・世田谷パブリックシアター、11月 22日(金)から11月24日(日)まで兵庫・兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール、11月 28日(木)に宮城・東京エレクトロンホール宮城にて上演される。
『そのいのち』出演者コメント
◆宮沢りえ(山田里見役)
二朗さんから、脚本が届いた。あの佐藤二朗さんから生まれた作品!と驚きつつも、物語のページが進むたびに、登場する人間の抱えている言葉に出来ない、とてつもない感情が何層にも重なり、迎える結末に震えました。
二朗さん、他共演者の方達と、この作品に誠実に丁寧に向き合いたいと思っています。
◆佐藤二朗(相馬和清役・脚本)
その歌を聴いたのが始まりだった。中村佳穂さんの「そのいのち」。この歌が流れる物語を書きたい。そう思った。暗い澱に閉じ込められたとしても、前を見上げる人間の讃歌になるような、そんな物語を書きたいと思った。その脚本に、宮沢りえという大きな存在が共鳴してくれた。「そそられます」。りえちゃんが脚本を読んだあと、最初に僕に言った言葉。同業者としても脚本を書いた人間としても最大級の褒め言葉だ。りえちゃんと丹念に、この物語を紡いでいこうと思う。
『そのいのち』あらすじ
マンションのキッチンで煙草を吹かす至って平凡な女性、山田里見(56)。彼女は介護ヘルパーである。新たな雇い主である相馬花(24)は障がいを持っている。花は動物ライターの夫・和清(45)とペットのウサギ「スケキヨ」と一緒に暮らしていた。要介助の妻と歳の差夫の関係はどこか奇妙ながらも幸せそうに見えた。
ある日、花の母・瑠依(44)とその再婚相手の悟(42)、息子の圭祐(10)が訪ねてくる。上辺は取り繕っていても実の親からも、世間からも見放されている花にシンパシーを感じていく里見。優しい時間の中で、花も徐々に里見や和清に自分の気持ちを吐露していく。しかしある出来事をきっかけに、穏やかだった3人の関係が徐々に狂い始めていく。
そしてその先にあった驚愕の秘密・・・。浮かび上がる「持つ者」と「持たざる者」の間にある埋めようのない「溝」。それを前にした時に、3人が選んだ衝撃の結末とは――。