少年社中25周年『テンペスト』鈴木拡樹×本田礼生×矢崎広インタビュー「続くということは、求められているということ」

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少年社中25周年『テンペスト』鈴木拡樹×本田礼生×矢崎広インタビュー「続くということは、求められているということ」

少年社中は2023年に25周年を迎え、2024年1月に “25周年記念ファイナル公演”となる第42回公演『テンペスト』が東京・サンシャイン劇場にて開幕する。本作で共演する鈴木拡樹、本田礼生、矢崎広に出演が決まった時の感想や25年続く少年社中の魅力を聞いた。

少年社中25周年『テンペスト』鈴木拡樹×本田礼生×矢崎広インタビュー「続くということは、求められているということ」

――今作はシェイクスピアの戯曲『テンペスト』を基に少年社中らしい大胆な脚色がなされていますが、皆さんのプロットや台本をもらった時のお気持ちをお聞かせください。

鈴木:毛利さん(脚本・演出・主宰の毛利亘宏)って公演の尺も気にされるので、わりとタイト目に作品を作る方なんです。でも今作は時間内に語りきれるかな?って感じです。
シェイクスピアの「テンペスト」自体をご存じの方も多いとは思うのですが、わからない方に向けてもどういう作品なのか提示もするでしょうし、その上で劇中劇も行われます。劇中劇が変化することで混乱したりかき回されたり、どんな結末になるのか見届けてもらう作品になっています。今のところ膨大な情報量なので作品がどうなっていくのか我々も楽しみです。

矢崎:話を聞いた時は、シェイクスピアが題材の作品を久々に社中がやるので本当にそのまま「テンペスト」を社中なりに上演するのかと思っていたんですよ。でも“どうやら劇中劇をやるみたいだぞ?”となり、実際に台本をいただいたら思っていたものとは全然違うものが来て…。もう、びっくりしました!!(笑)

本田:僕も「テンペスト」を社中らしいテイストで上演するのかなって思っていたのですが、見てみたら“あれ?こんな登場人物いたっけ!?”って衝撃でした(笑)。予想外というか良い意味で裏切られたと思いました。

――出演が決まった後に役が割り振られたそうですが、役が決まった時はどう思われましたか?

鈴木:僕自身に重ね合わせてくれている部分と、毛利さんの“こういう拡樹を見てみたい”って部分を上手く足してくれている役だなと思いました。“人を幸せにする演劇”っていう部分に惹かれましたね。そういうものを作れたら最高だよねって考えているので、等身大の気持ちを役に乗せることができるのではと思っています。
また今作は座組に入って引っ掻き回す役なので、課題というか、自分なりに戦いながら役を表現出来るのは楽しみですね。この役をもらえたことが嬉しいです。

矢崎:基本的には“なんでもござれ!”ってスタンスなので、役をいただいても毛利さんと話を詰めて、どういう風に役をどんどん深めていけるかなってまず思いました。でも、どんな役を割り振られても演じられるという信頼は毛利さんと築けていると思っているので今回の役も楽しみです。

本田:今回の座組の中での自分の立ち位置に近い役をいただいたなと感じました。自分が持っているものや、毛利さんが描くものや今作の座組が作る世界観などと照らし合わせながら、今回の役を作っていけたらと思っています。

――役者役を、役者である皆さんが演じるというのは?

鈴木:役者役を演じる時はお客さんからどう見えるのかという部分が楽しみですね。我々は、日頃役者の仕事をしていますので、舞台に出ている以外のバックステージ部分も知っています。そういう部分を描く作品なら資料は豊富ですし、“役者あるある”的なことやこういうのって面白いよねっていう提示もしやすいかなと。経験を活かせたら良いと思いますし、お客さんにもバックステージではそんなことがあるんだと笑ってもらえたら嬉しいですね。

矢崎:僕の役は“劇団の中心人物”なんですけど、他の作品と一緒で、「どういう経緯があって、どういう背景があって、何を考えて・・・」っていうことを突き詰めていけば、おのずとその役の造形が出来上がってくるんですよね。だから、「役者役だから」とか意識せず、どんな役でも取り組み方は変わらないです。それよりも、今作だとその役にどう深みを出せるか、チーム感を出さなきゃいけないシーンがあるのでそこを稽古の中でどう作り上げられるかを考えています。

本田:僕は、MANKAI STAGE『A3!』でも役者役を演じてさらに劇中劇をやっています。その中で、作中に劇中劇があることで見せ方の手法に幅が広がったり、制限が増えることもあるけれど上手く使うことでより作品が面白くなる、ということを学びました。今回も、本作ならではの面白さがあると思います。

――ちなみに、「劇団」に対してはどのようなイメージを持たれていますか?

鈴木:僕は、単純に劇団っていうスタイルに「うらやましさ」を抱いてきた人間でした。劇団というホームがあることで、それは安心でもありますし、守らなきゃいけないものでもある。作品の現場ごとに座組があるので、それを1チームと捉えると同じ感じもあるんですけど。役者を始めた頃は何も分からなかったので、「劇団」への憧れはすごく強かったと思います。劇団の方って、舞台の作り方について、僕らの知らないこともたくさんご存じなので、そういう意味でもずっと憧れの対象です。少年社中さんは、特に好きな劇団さんなので参加するのが本当に楽しいです。

矢崎:劇団って外部が立ち入れないところがあるから、そこに憧れたりもするんですよね。劇団出身で外部作品にもいろいろ出ている方が、劇団に戻ると全然立ち位置やポジションが違ったりするんですよ。役に限らず、稽古場での居方とかも。それがまた、お芝居を深めているんじゃないかなと思ってますね。

本田:僕はTHE CONVOYの公演に2017年から出演していますが、コンボイって30年以上続いていて。その中でやらせていただいていて思うのは、苦楽や歴史を共にしていることでその人の強いところ弱いところ、チームの空気感や作品を共有するスピードとかが違うんですよね。

鈴木:なるほど!

本田:だから自分が新しい座組に入る時は、その世界観や空気感を早くキャッチしたいと思っています。それを掴んだ上で、自分の色をどう出せるかを探していくのが面白いです。

少年社中25周年『テンペスト』鈴木拡樹×本田礼生×矢崎広インタビュー「続くということは、求められているということ」

――今作の座組もすごいメンバーが揃いました。

矢崎:よく知る方も、初めましての方も、なだぎ武さんのようによく見ていた方もいるし、面白くて安心できる座組だなと思いました。キャスト見ただけで、なんか面白い作品を作れそうだな!と。

鈴木:毛利さんが好きそうなメンバーで、また毛利さんや少年社中のことが好きな人が集まってますよね。

本田:尊敬する先輩ばかりですし、もっと深く共演してみたいと思っていた方々がたくさんいらっしゃったので、もうガッツポーズでした!

矢崎:僕らも楽しみにしていたよ(笑)。

――矢崎さんは発表があった時に「鈴木さんと9年越しにクリスマスを過ごせる」とXに投稿されていましたよね(笑)。

矢崎:そうなんですよ!

鈴木:『贋作・好色一代男』(少年社中第28回公演)だよね。それからは舞台としての共演はなかったから。

矢崎:拡樹がMCやってた番組とかでの共演はあったけど、舞台は久しぶりだもんね。

――しかも同じく少年社中で共演ということで。鈴木さんや矢崎さんが感じる「少年社中の魅力」って何でしょう?

矢崎:毛利さんが本当に描きたいものを描く場所、かな。「少年社中」という劇団名そのままに、ファンタジーもあり、少年っぽさもあり。毛利さんが心の奥底に秘めている「好きなもの」を、一番自由に描けるのが少年社中という場所なのかなと思います。これは『贋作・好色一代男』の頃から感じていたことで、今も変わらないです。外部の作品で会った時の毛利さんや(井俣)太良さんって、社中の公演で会う時と顔が微妙に違うんですよ。

鈴木:僕も同じ印象を受けます。自由に書いている時って、筆の乗り方も違うんだろうな~とか(笑)。毎回面白いですし、こんな発想が出てくるんだって驚くぐらい、毛利さんの「物語を作る才能」が一番活きるのが少年社中という場所なんだと思います。
よく聞く話なんですが、毛利さんって外部の作品でも書くのが早いそうなんです。納期もあるとは思うんですが、要望を全部上手く作品に取り入れるのって、すごく大変なことだと思うんです。毛利さんはスペシャリストですが、だからこそ少年社中では自由に書いていてほしいなって思っていますし、そうなんだろうと感じています。

――初参加の本田さんは、毛利さんの作品のどんなところに魅力を感じていらっしゃいますか?

本田:僕はまだ毛利さんとご一緒した経験は少ないのですが、お二人がおっしゃったように、ファンタジー性や少年心があって、いつもワクワクさせていただいています。この前ご一緒した『仁義なき幕末』も、SF要素もありつつ、“ヤクザと新選組の戦い”ってワードだけでも心躍るというか(笑)。掴みが上手い~と思っていました。

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――今作は、25周年の最後を飾る作品なので、日替わり出演者も特に豪華ですよね。共演を楽しみにしていらっしゃる方はいますか?

矢崎:僕は森大さん(1月8日出演)です!僕は少年社中の『モマの火星探検記』に出演したんですけど、僕が演じたモマを初演で演じたのが森さんでした。森さんとは社中以外の舞台で共演させていただいていて、すごく魅力的な人。社中の話もたくさん聞いていました。でも、僕が社中の舞台に出るようになった頃にはもう退団されていたのですれ違ってしまって・・・。やっとですよ!やっと社中で共演できるのがとても楽しみです。

鈴木:僕も一番最初に少年社中の舞台に出演させてもらったのが『ロミオとジュリエット』(第21回公演)だったんですが、森さんとダブルでメインを張らせてもらったんです。だから、今回の日替わり出演者の中に森さんがいることにとても感動しました。楽しみです。
そして、デビューしてから早くに知り合って、ずっと長年話し合いながら仕事を続けてきた椎名鯛造くん(1月9日出演)。「また社中で共演できたら良いよね!」って話をしていたから、今回、一緒に舞台に立てることが嬉しいです。

本田:む、難しいですね・・・!そうそうたるメンバーですから・・・。あえてお名前を挙げさせていただくなら、松田凌くん(1月16日出演)かな。世代も近くて、でも先輩でもあって。うーん、うーん・・・でもやっぱり全員で!!

鈴木・矢崎:(笑)。

――25周年を迎えた今の少年社中に伝えたいメッセージはありますか?

鈴木:25年続けて、そして愛され続けているのって、本当にすごいことです。年々、少年社中の輪が広がっているのも感じます。その結果がきっと、今作に出演する顔ぶれにも現れているのかなと。お客さんだけではなくて、多くの役者からも支持されている劇団というのは、本当に貴重だと思います。最終的にどこまでこの輪が広がるのか。30年、40年と続いていくよう、がんばっていってほしいです。

矢崎:25周年を迎えるって本当にすごいことですし、なかなかない劇団ですよね。コロナ禍で演劇界もくじけそうになった時、少年社中も公演中止などが相次いで本当に大変だったと思うんです。でも、少年社中によって救われた人たちもたくさんいて。25年続くということは、たくさんの人に求められているってことなんですよ。25周年のファイナルっていう壮大な祭りだと思っているので、この応援する気持ちを持って、さらに少年社中の背中を押したいですね。

本田:まずは25周年おめでとうございます!僕は今回初参加ですが、25年劇団が続くということは、それだけでも演劇界にとって素晴らしいことだと思います。若手にも未来を見せてくれていると感じます。そんな記念すべき周年の締めくくり公演に出演できることが大変嬉しいですし、祭りの一部として嵐を巻き起こしたいと思います!今作でのご縁を大切にしていきたいです。

――ありがとうございました。公演を楽しみにしております。

本田:お二方の色んなお言葉を聞いて、より少年社中さんのことを知ることができました。本番を迎えるのが楽しみです。劇場でお待ちしております!

矢崎:25周年を迎えた少年社中ですが、その魅力を存分に初めての方にも、そしてまた求めてくださる方にもお届けしたいなと思っています!ぜひ劇場で体感してください。

鈴木:魂の叫びを、みんなで芝居にぶつけて心を震わせたいと思います。ぜひ、少年社中の少年心を劇場で観ていただきたいです。

(取材・エンタステージ編集部1号、文・一本柳歌織)

ヘアメイク=AKI(鈴木拡樹) 城本麻紀
スタイリスト=小田優士
衣装=【鈴木】ジャケット・パンツ(共にAM3/LANCE PR tel.080-3705-4272)

目次

公演情報

上演スケジュール

【東京公演】2024年1月6日(土)~1月21日(日) サンシャイン劇場
【大阪公演】2024年1月25日(木)~1月28日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

スタッフ・キャスト

【出演】
井俣太良 大竹えり 田辺幸太郎
長谷川太郎 杉山未央 山川ありそ
内山智絵 川本裕之

鈴木拡樹 本田礼生 萩谷慧悟(7ORDER)
なだぎ武 山﨑雅志(劇団ホチキス)
鈴木勝吾 矢崎 広

【原作】ウィリアム・シェイクスピア
【脚色・演出】毛利亘宏

ほか

あらすじ

ウィリアム・シェイクスピアの『テンペスト』を上演することになった人気劇団。
だが稽古を迎える前に演出家が急死。
困り果てた劇団員の前に現れたのは、一人の天才役者だった。
彼の存在は反発と憧憬と混乱を生んだが、どうにか公演初日を迎えることとなる。

まさに開演しようとしたその時、劇場にかつて劇団を追われた男が現れる。
その男の目は、復讐の炎に燃えていた・・・。

彼の発した宣言により、嵐のような初日の幕が開ける。

『テンペスト』は裏切りと欲望、そして悲しき過去の渦巻く怒涛の物語として進んでいく。
復讐の果て・・・その終着地とは?

「さあ、始めよう。
私の人生を奪った“演劇”に復讐を」

公式サイト

【公式サイト】http://www.shachu.com/tempest/
【少年社中公式X(Twitter)】@shonen_shachu

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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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