2023年11月から12月にかけて上演されるミュージカル『ミア・ファミリア』。韓国ミュージカルの日本初演となる本作で、植原卓也・平間壮一・水田航生の「3LDK」がミュージカル初共演を果たす。互いにリスペクトしあい、切磋琢磨してきた3人だから出せる空気感は、インタビューでも健在。仲良し「3LDK」の、よく知る仲だから話せる内容が飛び出した。
――3LDKのお三方のミュージカルでの共演が観れる!という夢のような企画ですが、お話を聞いた時皆さんはどう思いました?
水田:嘘だろ・・・!と思いました。
平間:最初に聞いた時、冗談交じりの「こんなことやれたら面白いかな」みたいな企画がされている段階かと思って聞いていたんですよ。そしたら、もう「やる」と決まっていたのでびっくりしました。
水田:じわじわと「なんかやるらしいね・・・」みたいな感じで話が伝わってきたんですよ(笑)。
平間:初めてその話を聞いたのは、確か3人一緒にいた時だったよね。
植原:いや、違う。
平間:えっ?
植原:俺だけ知るタイミングがちょっと遅かったんだよ。
水田:(笑)!そうだ~!!
平間:!!そうだそうだ!!
植原:2人から「やるんだよね」って言われたんだけど、「えっ、俺何知らない・・・」ってなったの。
水田:3LDKでインタビュー取材の時だったよね。「実は3人でミュージカルをやるらしいですね」って話を振ってもらったんだけど、「何も知らない・・・」ってなってた(笑)。
植原:植原卓也の知らないところで話が進んでいました(笑)。
――そんなことがあるんですね?!
平間:僕も「やる」ってことは知ってたんですけど、そこ止まりだったよ。
植原:航生が一番知ってたね。
植原:3人で情報量にこんなに違いがあるの?!っていう驚きがありましたね。
一同:(爆笑)!!
――それは、植原さんは知っているものだと皆さん思っていらっしゃったということですか?
水田:もちろん。
平間:思ってました。
植原:俺は、何の話をしてるの?って思ってたよ。二人が一緒に出る作品の話なのかなって。
――きっと、お三方の共演はファンの方の夢だったと思うのですが、皆さんはどうでしたか?
水田:みんなで語り合ったりしたことはないですけど、ここまで3人とも役者としてがんばってきたから、いつか一緒に舞台をやってみたいよね、という感覚はありました。
平間:そうだね、夢として掲げたりはしていなかったけれど、それぞれがんばってきたからね。いざ決まったと聞いた時は本当に嬉しかったですね。
植原:今までいろんなお仕事を3人でやらせてもらっていたので、冗談ながら「いつかやれたらいいな」と思っていました。だから、知った時は「あ、“いつか”の時が来たんだな」と思いました。
平間:そうだね。そして、ファンの皆さんが喜んでくれたのが何よりだよね。
――選ばれた作品が韓国ミュージカルの日本初演というのは?
水田:もしやるなら、オリジナルミュージカルとか新作なんじゃないかって勝手な想像をしていたので、韓国ミュージカルって聞いて思ってたよりハードルが上がった!ってなりました。3LDKの3人で公演をするということにプラスして、日本初演を担う役者としてもがんばらなきゃいけないって、2重のがんばりが必要になるなと。
平間:確かに。
水田:割とお話自体は分かりやすいドタバタ劇だと思うんですけど、劇中劇を挟んだりするので、そこをどう見せていくのがベストなんだろうって、個人的にはそこが課題になりそうかなと。観る方にとっては、エンターテインメント要素たっぷりで、純粋に笑って楽しめる作品だと思います。
平間:「あれが伏線だったのか!」みたいなそういう複雑なお話ではないから、できるならお酒片手に見てほしい作品だよね。
水田:そうそう。肩ひじ張らずに見れる作品だよね。関係性だけしっかりと押さえておけば、多分それだけで面白いから。
植原:スタッフの方々が、「これ、3LDKでいけるんじゃないか」と持ってきてくれたのが本当にありがたくて。そこにちゃんと応えたいなって思っています。
――情報発表の時に、スタッフの方が「当て書きなんじゃないかと思った」と言われていましたよね。
水田:3LDKでやるならこの配役だろうなって思ったよね。プロデューサーの方がからお手紙をいただいたんですけど、3LDKありきで作品を探したわけではなく、数年前に韓国でこの作品を観た時に日本でできる3人は思い浮かばなかったんだけど、その後3LDKの活動を見て「この3人ならできるかも」と思ったと書いてくださっていたんですよ。僕ら3人で何かやる、ではなく、作品ありきで「ハマる3人を見つけた」と思っていただけたのがすごく嬉しかったです。その方に間違いなかったと思ってもらえるものにしたいですね。
平間:地球ゴージャスの現場とかで、同じプロデューサーさんがこの作品の話をしていたりしたから、「やるのかな?」「やるの決まったんだ」「出るんだ」みたいにして、だんだんと知っていったんだよね。
植原:どうせなら番組みたいにしてほしかった・・・。
一同:(爆笑)!!
植原:「今日、発表があります!ジャン!3LDKが舞台で共演します!」みたいな。
――ハマり役と言われているからこその役作りは、どのように考えていますか?
平間:自分が演じるのはわりと「舞台が人生のすべて」という熱血なキャラクターなので、「何が何でもダンスを続けていきたい」と思っていた自分と似てるなあと思いました。だから、誰しもが持っている情熱を 一生懸命注いでいけばいいのかなと思っています。
植原:僕はね、(稽古に入る前の取材時)正直まだあんまり考えてないです。あんまり捏ねすぎずに、稽古場でまっすぐに向き合いたいなと。
水田:僕の役は、壮一くんとの関係性が強くて会話が結構多いので、卓也くんが言うようにこねくり回すよりもリアルに、2人が長年しんどい時も一緒に乗り越えてきたんだろうなと思える感じを、新鮮に出していけたらいいなと思います。劇中劇はね、卓也くんが最初どう出るかによって考えようかなと・・・(笑)。
――演出の安倍さんとは事前に稽古に入る前にお話しされていたりしましたか?
水田:ビジュアル撮影の時かな?劇中劇での芝居に変化をつけていろいろチャレンジしてみたいんだよねって言っていましたね。リアルな翻訳劇としての会話から、劇中劇になるとやたら仰々しくなる、とか。それが稽古を経て、どうなっているか。
――コメディって、一番難しいジャンルとも聞きます。
平間:そうなんですよね。一回観たら次の展開が分かっちゃうから、初見のおもしろさを超えるのが大変!だから、一番稽古が難しいって俺は思ってる。稽古で決めた、自分たちの想定する“おもしろさ”がどこまで通用するのか、本番でお客さんを前にするまで本当のことは分からないわけじゃん?
水田:信じて突き進むしかないからね(笑)。
植原:例えばさ、明らかにハマってない感じのパターンをやることあるじゃない。きっと今、試してるんだろうなって心の中で思うけど、普通は「ハマってないですよ」とか稽古場でも言えないじゃん(笑)今回、俺らの場合は「それやめた方がいいんじゃない?」とか積極的に口に出すようにしない?
水田・平間:(爆笑)!!
植原:いい思い出になると思うんだよ。今後できる機会ないかもしれないじゃん(笑)。だから、もう本当に包み隠さず、「多分、それハマってない」みたいに進言していくの。
水田:それいい(笑)。「今のそれ、本気でやつ?」って言いたい(笑)。
平間:あはははは(笑)!
植原:・・・って言いつつ、きっと稽古場で言えないんだよ。
水田・平間:(再び爆笑)!!
植原:本気のやつは、たぶん空気で分かるから。お互いのこと、リスペクトしてるからね。
――いろいろ想像が広がりますね。
平間:台本を読んだ時、大変になりそうだなと思いました。普通にやろうと思ったら普通にもできるし、たっくんとか航生が演じているのを想像して読むと「こうできるな、ああいう風にもやれるな」とか、想像がすごく膨らんだんですよ。自由度が高い分、どこをチョイスするかによっても変わるし。
水田:想像がつくからこそ、結果がまったく想像つかなかったりもするんだよね。「どうやっていいか分からない」に陥りやすいタイプの本だとも思うので、
平間:あとね、コメディに厳しいSHUNさん(大村俊介)がこの現場にはいるからね。きっと、帰り際とかに「あれはおもしろくないよ~」とか言われるよ(笑)。
植原:誤解がないようにまず言っておきたいんだけど、俺、SHUNさんのことすごく好きだよ。でも、SHUNさんが稽古場にいるとめっちゃやりづらいの(笑)。
水田・平間:(爆笑)!!
植原:分かってくれる?このニュアンス?
平間:分かる、めっちゃ分かる!
植原:振付の時だけお願い!って思うの(笑)。
平間:でもきっと、SHUNさんはずっと稽古場にいるよ。
水田:「ふーん、そういう感じなんだ」「えっ、ダメですか?!」「いいけどォ~・・・まだあると思うんだよなァ」(モノマネ)。
植原:航生には特にめっちゃ言いそうだな~!
平間:で、どんどん航生がぐちゃぐちゃになっていくの。
一同:(爆笑)!!
水田:そういうのも想像できるから、難しいんだよね(笑)。
――よく知る仲の座組だからこその、やりやすさとやりにくさが共存しているんですね。
水田:そう、知ってるが故に(笑)。
平間:演出の安倍さんも、僕とたっくんははじめましてだけど、航生はよく知ってるんだもんね?
水田:そう。プライベートでも仲良くしてもらっていて。
平間:じゃあ、稽古場でも航生が引っ張っていってくれるよね。
植原:この作品がうまくいくかどうかは、航生にかかってるよ!
水田:いやいやいや、すぐそういうこと言うんだから~(笑)。
――お三方とコメディというと、宝石シリーズなども懐かしいですが、「コメディ」に取り組む上で大事にしていることとかありますか?
平間:そうだなぁ・・・俺の悪いところなのかもしれないですけど、「コメディ」としてやったことないかもしれない。
水田:それ、そうかもしれない。宝石シリーズとかも「めっちゃストレートプレイがんばった!」っていう意識かも。
植原:笑かしにいってるわけじゃなくて、観ていて自然にウケてるってものだしね。でも、二人は、他の作品でもあんまり「ここ絶対笑い取らなきゃ!」ってところをやってるのはあんまり見たことないかも。
平間:各現場に一人は必ずすごい人いるじゃないですか。めっちゃ見ちゃう。自分から遠いから、すごく勉強になる。みんな同じ台本を見ているはずなのに、どうやってあそこまで「笑い」が起きる芝居に持っていけるんだろうって。勉強したい。
水田:逆に、「ここ絶対笑いを求める書き方をしてる」っていう台本もあるじゃない。そういうのとかやる時は、本当に胃が痛い。稽古場では、何回もそのシーン繰り返すわけじゃない?意外とコメディの、間に対するガチな演出の時なんか恥ずかしいんですよ(笑)。センスなくて申し訳ないっ!って思っちゃって。
――ハマる瞬間を見つけるまでが大変なんですね。
植原:僕はなぜか・・・結構そういうポジションの役を担うことが多いんですよ。
平間:そういう印象ある!
植原:不思議なんだけど。初めてやった舞台『FROGS』の時からコミカル担当だったから、そういう意味では大変に感じることは全然ないかな。だから、逆に僕の中では、よく観に来てくださるファンの方の中で「その笑いの手法、結構見てる!」みたいに、上手い下手じゃなくて、既視感を抱かれちゃう可能性が怖い。今回の作品は、その壁に当たる可能性あるなって思うの。
水田:なるほど。
植原:僕らは笑いのスペシャリストではないから、やっぱりお芝居の上で笑ってもらえるようにしなきゃいけない。でも、「コメディ」と銘打っているからには、笑っていただかないと話にならない。そこのハードルは超えたいし、そんなこと考えないぐらいのところまでいけたらいいよね。
平間:どんなに稽古しても、間一つ、お客さんの空気一つで変わっちゃうからね。
植原:俺、今年の頭にも『ファーストデート』でもMAXハイテンションなコミカルポジションをやらせていただいたんです。自分で言うのもなんだけど、本番ばりの勢いで稽古初日にやって、大爆笑もらったの。俺の想定どおり、本番でお客さんもこれぐらい笑ってくれるだろう、よし!って思うじゃない。でも、ここからが自分との闘い。そこから1ヶ月・・・稽古で、マジ、みんな笑わない。
水田・平間:(爆笑)!!
植原:ここで「あれ?」ってひるんじゃうと、初日の勢いが弱まるんですよ。だから「稽古初日・・・めちゃくちゃウケたよな・・・。真面目な大人の人たちがケラケラ笑ってたのは幻じゃない・・・。大丈夫、大丈夫・・・」っていう、自分との1ヶ月の戦い。これは「コメディあるある」だと思う。
平間:あるあるだ~(笑)。
植原:多分、もっと引き出しの多い俳優さんだったら、稽古用にいろいろやって、本番直前になってきたら“とっておき”を出すっていう、稽古場サービスっていう技もあるんだけど、俺にはそこまでの技量はないから、自分と1ヶ月戦う(笑)。
――戦いの結果、楽しみにしております!最後に、公演に向けてお客様へメッセージをお願いします。
平間:楽しみに来てください!もうそれだけ。
水田:時期も今年の終わりの方だし、大阪公演なんてクリスマス前だから、きっと街もにぎわう頃だと思うので、たくさん笑って、笑顔になってもらえるような作品にできたらいいね。
植原:皆さんが楽しみにしてくださってるのが分かっているからね。こちらも、しっかり楽しませたい。きっと、3LDKが揃って出るから観に来てくれるという方もいると思うんですよ。植原が、水田が、平間が出ているから、それぞれの公演を観に来てくれている人が、今後もこの中の誰かが出ているから観てみたいな、応援したいなって思ったり、「ミュージカル」をもっと観てみたいなと思ってもらえるような、そういう未来に繋げられたらいいです。
平間:あと、ステージと客席がすごく近い距離感の劇場でやらせてもらえるので、劇場一体となって、みんなで楽しめたらいいね!
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)
ミュージカル『ミア・ファミリア』公演情報
上演スケジュール
【東京公演】2023年11月24日(金)~12月3日(日) 東京芸術劇場 シアターウエスト
【大阪公演】2023年12月23日(土)~12月24日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
スタッフ・キャスト
Original Production by MJStarfish
【出演】
植原卓也 平間壮一 水田航生
【脚本・作詞】イ・ヒジュン
【作曲】パク・ヒョンスク
【訳詞】森雪之丞
【日本版脚本・演出】安倍康律
あらすじ
1930年代、大恐慌時代のニューヨーク。明日には閉店する「アポロニア イン&バー」には、舞台が人生の全てだったリチャード(平間壮一)と金持ちの娘との結婚に気を取られているオスカー(水田航生)が、最後の公演準備をしている。その時、マフィアの手下、スティーヴィー(植原卓也)が押しかけてきて、ボスの自伝「ミア・ファミリア」を今夜上演しろと迫るが・・・。あまりにも違いすぎる3人のリハーサルが始まる。
公式サイト
【公演公式サイト】https://miafamiglia.jp/