岡本健一、浦井健治らがシェイクスピアの“ダークコメディ”を交互上演『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』制作発表会見レポート

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シェイクスピア・ダークコメディ交互上演『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』の制作発表会見が2023年8月31日(木)に東京・新国立劇場 オペラハウスで行われ、岡本健一浦井健治中嶋朋子ソニン、立川三貴、吉村直、木下浩之、那須佐代子、勝部演之ら全19名のキャストと演出の鵜山仁が登壇した。

『尺には尺を』と『終わりよければすべてよし』の二作は、シェイクスピアの戯曲の中でも上演回数が多くなく、登場人物も屈折したキャラクターが多いことから“ダークコメディ(暗い喜劇)”とも呼ばれている戯曲。シェイクスピア作品の中では数少ない女性が物語の主軸となる作品でもある。今回は、その二作品を日本初の交互上演する取り組みとなっている。

そもそも新国立劇場では、2009年の『ヘンリー六世』三部作以来、20021年の『リチャード三世』まで12年にわたり、鵜山が演出を手掛ける「シェイクスピア歴史劇シリーズ」を上演してきた。今回の公演は、その歴史劇シリーズでもお馴染みの俳優陣が再集結。新たなメンバーを加えて前代未聞の企画に挑む。

岡本健一、浦井健治らがシェイクスピアの“ダークコメディ”を交互上演『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』制作発表会見レポート

演出の鵜山は、本作を上演する背景を「人間は必ず過ちを犯すけれども、愛でそれを救済できるかという大きなテーマがあります。それと同時に、『演劇は世界を救済できるのか。演じることによってものの見方が変わるのか。さらには、宇宙のシステムの様々な過ちを浄化できるのか』という大テーマが控えています。これを14年来、この仲間たちと表から裏から重層的にやってみようというのが、今回の企画です」と明かす。

交互上演となると、気になるのは舞台や衣裳を含む演出面だが、それについては「広くカバーしなければいけないので、色々な工夫をしているところです。片方は“たっぷり怪しく包括する”感じです。もう一方は“厳しく怪しくバッキング”する」と説明したが、「言ってしまうと終わりなので」とそれ以上の言及は避けた。

キャストたちは、それぞれの作品で全く違う役柄を演じる。この日の会見では、視覚的にも分かりやすいように『尺には尺を』でメインキャストを務めるキャストは黒、『終わりよければすべてよし』でメインキャストを務めるキャストは白の衣裳を着用して登壇。

岡本健一、浦井健治らがシェイクスピアの“ダークコメディ”を交互上演『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』制作発表会見レポート

『尺には尺を』ではアンジェロ、『終わりよければすべてよし』ではフランス王を演じる岡本は、「シェイクスピアについて、誰でもみんなが持っているイメージは、“堅苦しい”とか“難しい”だと思います。でも、みんなそれぞれがシェイクスピアの言葉を日常的に、人間的に喋る技術を持っている。僕も最初に台本を読んでいるときは難しいと思っていますが、実際に(キャストたちが)声に出しているセリフを聞くと、こういう話だったんだと色々な発見がある」とシェイクスピア作品への思いを語った。また、岡本は「(劇中には)権力者も市井の人も出てくるので、日本の政治家の方に劇場に足を運んでもらうと、色々な過ちや発見があると思います。生きていく上で大事ことが、たくさん詰まっている作品になっています」とアピールした。

岡本健一、浦井健治らがシェイクスピアの“ダークコメディ”を交互上演『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』制作発表会見レポート

『尺には尺を』ではクローディオ、『終わりよければすべてよし』ではバートラム役の浦井は「この座組みに初めて参加させていただいた時のことを今、思い出していました。渡辺徹さんや中嶋しゅうさんなどたくさんの諸先輩方が一緒に並んで、『浦井って誰なの?』とまるで公開処刑のようにここに座らせていただいていました」と感慨深そうな様子。そして、「そうした先輩たちの思いや存在を感じながら、この二作同時上演という過酷なトライに挑めることを幸せに思いながら、みんなで頑張っていけたらと思っています」と力を込めた。

岡本健一、浦井健治らがシェイクスピアの“ダークコメディ”を交互上演『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』制作発表会見レポート

『尺には尺を』ではマリアナ、『終わりよければすべてよし』ではヘレナを演じる中嶋は、「『終わりよければすべてよし』は、シェイクスピア作品の中でも女性のセリフでスタートする唯一の作品なんだそうです。シェイクスピア作品は、とにかく人間臭いというのが素敵なところ。人間味がぷんぷんしているので、生き物としての人間ということを感じながらやらせていただいています」と思いを述べた。

2009年の『ヘンリー六世』以来の新国立劇場でのシェイクスピア作品出演となるソニンは、『尺には尺を』ではイザベラ、『終わりよければすべてよし』ではダイアナ役。いずれの役柄も「処女で貞淑であるというのが共通点」だと話す。そして、「処女で純粋な役なら、もっと若い人の方がいいんじゃないのかなと思うんですが、『何かを秘めていて、危うさや可能性があって、つついたら弾けそうなものを持ち合わせているという女性像を考えると、ソニンちゃんだった』と言われて、なるほどと。ストレートに純粋な典型的な処女を演じるのではなく、人間としての欲や人間臭さも秘めている、透けて見えるような女性像を作っていけたらと思っています」と意気込んだ。

また、立川は「久しぶりのシェイクスピアで緊張していますが、やっぱりシェイクスピアは豊かな世界観があって、喜怒哀楽の高低があって、本当に名作だと感じています。だいぶ歳をとってしまい、追いついていくのが大変だなと実感していますので、一生懸命稽古をして、なんとか若い俳優の皆さんに迷惑をかけないように頑張っていきたいと思います」、吉村は「見知ったメンバーでお芝居に取り組めるここは、ホームグラウンドみたい。自分自身もみんなに鼓舞されて、今までにない自分と出会えたらいいなと思っています」、木下は「『ヘンリー六世』からほぼ同じメンバーで公演をしてきて、芝居づくりにはとてもいいメンバー。14年くらい続いた遠距離恋愛の相手と久しぶりに再会するような胸のときめきを感じさせてくれるメンバーだと思っています。今回も久しぶりに再会する相手がどう変わったのか、変わってないのか、楽しみに観にきていただけたら」とそれぞれコメント。

そして、那須は「この作品は問題劇と言われるだけあって、悲劇とも喜劇ともつかない、色々な形で演じられる可能性があり、解釈の仕方で受け取るメッセージも違う作品。鵜山さんがどういう解釈をしているのか、どう感じているのかウイットに富んだ説明をしてくださいながら稽古を進めています。きっと面白くなると確信しています」、勝部は「『ヘンリー六世』からシリーズが始まったとき、71歳だった私は、85歳になりました。この老齢の使い物にならない役者を呼んでいただいて感謝しています。足を引っ張らないように、千穐楽まで頑張りたいと思います」とそれぞれ思いを寄せた。

シェイクスピア、ダークコメディ『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』は、10月18日(水)から11月19日(日)まで東京・新国立劇場 オペラハウスにて上演される。

(取材・文・撮影/嶋田真己)







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