1995年のTVアニメ放映開始から現在に至るまで、多くのメディアミックスに展開され、その人気の過熱ぶりは社会現象ともなった「エヴァンゲリオン」。その初の舞台化作品である『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』がTHEATER MILANO-Za」にて上演中だ。「THEATER MILANO-Za」は新宿歌舞伎町の新たなランドマークである「東急歌舞伎町タワー」6階に完成した新劇場で、本公演はこけら落とし公演となる。本記事では、その公演の模様をレポートする。
14年前、隕石の落下がきっかけで「使徒」が現れる。使徒殲滅の為、特務機関「メンシュ」の作戦指揮官の霧生イオリ(石橋静河)と、エヴァンゲリオンパイロット達は、戦いの日々をおくっていた。そんな戦いのさなか、イオリ達の前に、渡守ソウシ(窪田正孝)が現れる。ソウシとイオリは、14年前の隕石落下の真相に迫る。クライマックスに向かって、戦いの根幹を揺るがす事実が明らかになっていく――。
客席に着いてまず度肝を抜かれるのが舞台の奥に向かって高くなっている八百屋舞台だ。その傾斜を利用したプロジェクションマッピングやワイヤーアクションは本公演の大きな見どころといえる。
今作は2度のローレンス・オリヴィエ賞受賞など世界的に活躍する振付家のシディ・ラルビ・シェルカウイが原案・構成・演出・振付を担当している。日本では「テ ヅカTeZukA」「プルートゥ PLUTO」の演出・振付で話題になった。作品随所に登場するダンサーによる身体表現は、時にコミカルに、時に妖しく、空間を演出していた。ダンスの他にも、歌・太鼓・プロジェクションマッピング・ワイヤーアクションなど多彩な手法を用いており、エヴァンゲリオンに初めて触れる観客も感覚的にエヴァンゲリオンの世界観を体感出来るだろう。
また、本公演の意欲的な取り組みのひとつとして、「エヴァンゲリオン」を登場させたことが挙げられる。舞台で巨大生物やロボットなどを登場させる場合、一部分だけを見せたり、映像のみで表現することもあるが、本公演では人形浄瑠璃のような動きでエヴァが有機的に舞台上を動き回る。日本文化に造詣が深いシェルカウイと、エヴァの化学反応がとても面白い。
そして、主演を務める窪田正孝の存在感が終始作品を支配していたのが印象的だ。ソウシは出ずっぱりでお話の中心になって作品が進んでいくタイプの主人公ではない。しかし少ない出番の中でも、ソウシのある種不気味な存在感が舞台上から消えることはなく、クライマックスでは神々しさすら感じさせる。窪田の高い表現力には注目だ。
さらに、絶対的な強い存在として作品の核となっていた田中哲司、凛とした指揮官をしなやかな身体表現も交え表現していた石橋静河、連続リフトのシーンが印象的な宮下今日子など、実力派揃いのキャストで作品に深みを持たせている。
エヴァパイロットたちの、体当たりの演技にも胸を打たれた。アニメ版でおなじみの4人のパイロットのアイデンティティを引継ぎつつも、それぞれに悩み、答えにたどり着いていく様は、思わずこちらも感情移入して見てしまう。特にナヲ役の板垣瑞生の、トウマへの思いを利用され壊れていく様を繊細な演技は秀逸で、今後が楽しみだ。ベテランから若手まで多才な俳優の演技をじっくり堪能できるのも本公演の強みといえる。
『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』は東京公演を皮切りに、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」作中の第2新東京市の場所でもおなじみ長野・松本公演を経て、6月19日(月)に大阪・森ノ宮ピロティホールにて千秋楽を迎える。
世界的天才振付師が描く「エヴァンゲリオン」の世界観と深いテーマ性を、エヴァ好きもそうでない人も是非劇場で体感して欲しい。
(文/鈴木りさむーん・撮影/エンタステージ編集部 1号)
『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』公演情報
スケジュール
【東京公演】2023年5月6日(土)~5月28日(日) THEATER MILANO-Za
【長野公演】2023年6月3日(土)~6月4日(日) まつもと市民芸術館
【大阪公演】 2023年6月10日(土)~6月19日(月) 森ノ宮ピロティホール
スタッフ・キャスト
【構成・演出・振付】シディ・ラルビ・シェルカウイ
【上演台本】ノゾエ征爾
【キャスト】
窪田正孝 石橋静河 板垣瑞生 永田崇人 坂ノ上茜 村田寛奈 宮下今日子 田中哲司
大植真太郎 大宮大奨 渋谷亘宏 AYUMI 森井淳 笹本龍史 渡邉尚 高澤礁太 権田菜々子
<歌唱>
山脇千栄(東京・長野公演) 阿部好江(大阪公演)[太鼓芸能集団 鼓童]
【公式サイト】https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/evangelion2023/