2023年10月より愛知、福岡、兵庫、そして東京にて『ロスメルスホルム』が上演されることが決定。それに伴い、演出の栗山民也、主演の森田剛、ヒロインの三浦透子からのコメントも公開された。
1886年に「近代演劇の父」と称される劇作家ヘンリック・イプセンによって書かれた本作は、古く凝り固まった時代から新しく解放されつつある時代の中、保守的な思想と進歩的な思想の人々との対立を、緊張感のある心理描写で描いた人間ドラマ。
イギリスでは2019年に新翻案で上演。2020年のローレンス・オリヴィエ賞でベストリバイバル賞、主演女優賞にノミネートされ、今もなお色褪せることのない名作として知られている。
主演は森田剛。ロスメルスホルムと呼ばれる屋敷の主で、妻を失うもレベッカの支えで立ち直り、新たな時代に向けて前向きに生きようとするヨハネス・ロスメルを演じる。ヒロインである三浦透子は、屋敷に下宿し、亡き妻に代わって家の一切を仕切り、ロスメルにも強い影響を与えるレベッカ役を担う。
そのほか、保守的なロスメルの義理の兄クロル教授に浅野雅博、急進派の新聞編集者モルテンスゴールに谷田歩、ロスメルの子供時代の家庭教師で大きな影響を与えるブレンデルに櫻井章喜、そしてロスメルスホルムの出来事を静かに見守る家政婦へルセット夫人に梅沢昌代が名を連ねている。
演出を務めるのは、2019年読売演劇賞大賞・最優秀演出家賞に輝いた栗山民也。観客の想像力を刺激する演出とともに、物語のもつ命題にどのように迫るのか注目が集まる。
『ロスメルスホルム』は2023年10月より愛知、11月より福岡、兵庫、東京にて上演予定。
コメント紹介
◆栗山民也(演出)
イプセンの作品と出会うたび、独特な劇世界の中に喜びとも迷いとも分からぬまま、その言葉の海に漂っていたことを覚えています。それは、物語のぎりぎりのところでいつもはぐらかされ、方向性の見えぬどこか遠くへと連れ去られてしまった感覚なのです。でも、それが人間の在り方そのものでしょ?と問われたら、なるほどと頷いてしまうのですが。
まるでギリシャ劇の運命に揺れる人間たちのように、イプセンの描いた人物たちはとても雄大にも見え、あるときはひどく愚かで滑稽で、だからこそ愛おしく、必死にたくさんの言葉を目の前のあなたに投げつけてくるのです。
なんだか人との関わりに距離をとってしまう今の乾き切った時代だからこそ、必死に何かを探し続ける、そんな出会いを夢中で求めてしまうのです。
◆森田剛(ヨハネス・ロスメル役)
台本を読んで、緊張感のある会話の中でのシーンが深く描かれていて、暗く重たいストーリーではありますが、自分にとって大きなチャレンジになる作品だと思うので、稽古が始まるのが今からとても楽しみです。
栗山さんの作品は、ステージの空間と俳優たちの立ち位置がすごく計算されていて綺麗で、今回ご一緒できることになって、演出を受けられることはとても嬉しいです。この作品はきっとご覧になる方にとっても、凄く集中力と体力がいると思いますが、きっと大きなものを感じてもらえると思います。
◆三浦透子(レベッカ役)
時代と国を超えて残ってきた作品に触れること自体学びがあり、純粋にこの作品に関われることは意味のある貴重な体験になると思いますし、すごく嬉しいです。
実際今を生きている自分が今の心で読んでも、考えさせられる部分や、刺さる言葉の強さを戯曲から感じるので、繰り返し読みたいですし、自分の中で生まれてくる解釈を楽しみたいと思います。
栗山さんとご一緒出来るのは光栄です。集中したくなるような素敵な空間と時間を作れるようにがんばりたいと思います。
『ロスメルスホルム』公演情報
上演スケジュール
【愛知公演】2023年10月 穂の国とよはし芸術劇場プラット
【福岡公演】2023年11月 キャナルシティ劇場
【兵庫公演】2023年11月 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【東京公演】2023年11月 新国立劇場 小劇場
キャスト・スタッフ
【出演】
森田剛 三浦透子 浅野雅博 谷田歩 櫻井章喜 梅沢昌代
【原作】ヘンリック・イプセン
【脚色】ダンカン・マクミラン
【翻訳】浦辺千鶴
【演出】栗山民也
あらすじ
歴史と伝統に縛られたロスメルスホルムと呼ばれる屋敷には、所有者ヨハネス・ロスメル(森田剛)と家政婦のヘルセット(梅沢昌代)、そしてロスメルの自殺した妻ベアーテの兄・クロル教授(浅野雅博)の紹介により、レベッカ(三浦透子)という女性が下宿人として住んでいた。
ある日、ロスメル家を訪ねたクロル教授は、モルテンスゴール(谷田歩)が掲げる「新しい進歩主義」に対抗すべく、ロスメルを保守派に引き込もうとするが、ロスメルはレベッカの影響でこの古い体質から解き放たれようとしていた。
ロスメルは若い頃、家庭教師だったブレンデル(櫻井章喜)という自由思想家に影響されていて、レベッカは、その彼の後を継ぎ、自分こそがロスメルを自由にすることができる人物だと信じていたのだ。
説得を試みるクロムはレベッカがベアーテを死に追いやった原因だと告げる。「進歩主義の同志」というレベッカへの気持ちは愛情だったのかと気づくロスメル。心に罪を抱いたロスメルとレベッカがとった道とは・・・。