2022年12月16日(金)に東京・東京芸術劇場 シアターウエストにて、プロペラ犬第8回公演『僕だけが正常な世界』が開幕した。プロペラ犬は、水野美紀が主宰を務める演劇ユニット。本作や、同ユニットの約6年ぶりの公演となる。
水野は、第4回公演『ネガヒーロー』(2012年)から脚本、第7回公演『珍渦虫』(2016年)からは脚本・演出を担当。今回は、崎山つばさ、鳥越裕貴、安里勇哉、定本楓馬、浅野千鶴、福澤重文、宮下貴浩、そしてノゾエ征爾という多彩な顔ぶれが集結。
物語は、舞台上にジャージ姿の役者(鳥越)が「おはようございます」と入ってくるところから始まる。すると、唐突に少年少女が現れ、何か物語が始まる。
周りとのコミュニケーションがうまくいかず、ずっと生き辛さを抱えて生きているミチル(崎山)。その幼なじみである元気(定本)と妹のあかり(江藤)は唯一の理解者だった。あかりが読む絵本「青い鳥」の登場人物たちが、そんな3人を見守っている。状況が飲み込めず、「怖い!」と戸惑う男。そう、シアターウエストで上演される公演の代役として呼ばれたのに、間違えてシアターイーストに紛れ込んでしまったのだ・・・。
居場所を失い、追い詰められていくミチルの物語は、間違えた男が入り込んだことで、少しずつ“世界”が狂っていく。狂った先で、たどり着くものは――。
「プロペラ犬」の公演は、「興味のある人、好きな人と自由にお仕事できる場を作る」という旗揚げ当時の動機からも、水野美紀という俳優が“今”何を感じているのかがダイレクトに感じられる公演だ。
これまでも、虚構と現実が入り混じる多層的な世界を描いてきたが、本作では歌やダンスも取り入れて描くダークファンタジーに挑戦。前回公演から、結婚・出産という女性にとっての大きな転機を迎え、母となったこと。そして、この数年続くコロナ禍で誰もが感じている閉塞感の中で、作り手としてどんなことを考えたのか。
物語が進むにつれて、紛れ込んでしまった男側の視点で観ていた自分の感情もぐにゃりと歪む。目の前で起こっていることを理解しようと思うこと。それはきっと、現実世界でも他者と接する時にきっと必要なことだ。“物語”がくれる希望のかけらを現実にも持ち帰りたい。俳優たちが、小劇場という密な空間に生き生きと立っている姿を存分に味わいながら、
そんなことを思った。
プロペラ犬 第8回公演『僕だけが正常な世界』は、12月16日(金)から12月25日(日)まで東京芸術劇場 シアターウエストにて上演。上演時間は約2時間を予定。
コメント紹介
◆水野美紀(作・演出・出演)
いよいよ開演いたします。『僕だけが正常な世界』。稽古場で毎日、役者の力でシーンが膨らんでいき、音楽、音響、衣装でさらに彩られ、劇場で、セットと照明と映像が加わり、最後に、お客様がいらっしゃることで完成します。とにかく、ここまで精一杯やってきました。地震にコロナに戦争に悲惨な事件。一寸先は闇。そんな事を実感させられる時代です。共に生きる皆様の心に、小さな光が届きますように。千秋楽まで精一杯努めます!
◆崎山つばさ
完成されたセットや美しい照明や音響も入り、作品がまた姿を変えた気持ちがしました。そしてここにお客様の熱も合わさるとなると本番が楽しみで仕方がありません。スタッフ、キャストが一丸となり『僕だけが正常な世界』という異常な程に見たこと、感じたことのない世界を皆様にお届けできたらと思います。どうか最後まで無事に走りきれますように。
◆鳥越裕貴
今作の脚本を観た時、ついに僕は水野さんのファンタジー世界に足を踏み込んだんだ!と一人興奮しておりました。稽古が進むにつれて演出やオーダーに応える役者の皆様を観て楽しんでいました!もちろん、自分も必死に喰らい付いています!今回の役どころはシアターイーストと間違えてシアターウエストに紛れ込んでしまった役者。この役者がどう絡んでいき、何を思うのか。皆様、存分に想像し色々と感じて頂ければと思います。僕自身、今この時代に今作品に関われる事を嬉しく思います。精一杯、努めさせて頂きます!
◆安里勇哉
ついに幕が開く。本番を楽しみにワクワクしながら、集中して稽古に臨み劇場入りすることができました。夜という役は一風変わっておりますが、稽古を重ねる毎にとても大事な役だと思いました。達観してるというか余裕があるというか。皆さんにどのように感じてもらえるのか楽しみです。振り幅が大きくて頭と心がぐちゃぐちゃになるかもしれないですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
◆定本楓馬
いよいよ始まります。本当に魅力あふれる先輩方と作品を作れることに感謝しています。2022 年、最後を締めくくる舞台として最高の作品です。楽しくて苦しくて、色んな気持ちにさせてくれるこの世界を、皆さんと一緒に過ごしていけたらなと思います。元気という役をやってみて、元気が抱えてるものの大きさや、深さを痛感しました。簡単に元気を演じることはできないです、元気のために最期まで寄り添って演じていきたいと思います。最後までよろしくお願いします。
◆ノゾエ征爾
すごいイイなあ!な若き素晴らしき俳優さんたちにまみれて。水野さんの脚本・演出もさらに覚醒されたような凄まじさで。劇場ではさらにどうなっていくのかすごく楽しみでありつつ。ともかくお客さんに楽しんでいただけるよう、私自身しっかりと謳歌したく思います。
プロペラ犬 第8回公演『僕だけが正常な世界』公演情報
上演スケジュール
2022年12月16日(金)~12月25日(日) 東京芸術劇場 シアターウエスト
スタッフ・キャスト
【作・演出】水野美紀(プロペラ犬)
【出演】
崎山つばさ 鳥越裕貴 安里勇哉 定本楓馬
浅野千鶴 入手杏奈 竹内真里
江藤萌生 西野優希 猪俣利成 武藤心平 小口隼也
福澤重文 宮下貴浩
水野美紀 ノゾエ征爾
公式サイト
【舞台『僕だけが正常な世界』公式サイト】https://bokudake2022.com
【プロペラ犬公式Twitter】@propellerken
【プロペラ犬公式Facebook】https://www.facebook.com/propellerken