エン*ゲキ#06 即興音楽舞踏劇『砂の城』フォトコールおよび取材会が2022年10月14日(金)に、紀伊國屋ホールで行われ、中山優馬、岐洲匠、夏川アサ、野島健児、池田純矢、鈴木勝吾、升毅が公演への思いを語った。
本作は、池田が自身の脚本・演出により「演劇とは娯楽であるべきだ」の理念の基、誰もが楽しめる王道エンターテインメントに特化した公演を上演するエン*ゲキシリーズの最新作。シリーズ6作目となる今回は、“即興音楽舞踏劇”と題して、即興で音楽を奏で、舞うという挑戦的で革新的な試みに挑戦する。
物語の舞台は、国土を砂に覆われた大海の孤島、アミリア。街外れの農地に暮らすテオ(中山)は、領主・アッタロス(野島)の娘で幼馴染のエウリデュケ(夏川)と念願の婚礼を迎えた。共に育った親友のアデルらも歓声を上げ、全てが幸福に満ち溢れていた。
時を同じくして、宮廷では国王崩御の報せが舞い踊っていた。王位継承権を持つ太子・ゲルギオス(池田)はこの機を逃すまいと、最高文官である宰相・バルツァ(升)と共に邪な策を練る。しかし、先王の遺言によってこれまで隠匿されていた「王家の血を継ぐ庶子」の存在が明らかになる。そこで、ゲルギオスは玉座を確たるものにしようと、秘密裏に謀殺を企てるのだった。そして、エウリデュケの従者で奴隷の男・レオニダス(岐洲)こそが、王家の血を継ぐ高貴な者であることが判明する・・・。
フォトコールでは、中山が歌い踊るプロローグ、バルツァから国王崩御の報せを聞いたゲルギオスが思いを歌い上げるシーン、テオとエウリデュケの結婚式のシーンを披露。プロローグでは、ピアノの音色に合わせて幻想的に舞い、歌う中山の姿が印象に残った。
続いて、テオが夜中にいなくなることに悩むエウリデュケがアデルに相談するシーン、そしてテオとレオニダスが話し、歌いながら絆を深めていくシーンも上演された。
取材会では、新しい試みに溢れた舞台である本作について、中山は「新ジャンルといってもいい作品なので、いつもの本番前とはちょっと違う気持ちです。即興の部分は、どんな化学反応が起きるのか舞台上でしかできないことなので、準備の仕方が違いました」と話す。「即興が表現できる自分のコンディションを整えていこう」という意識が第一にあったそうで、「その状態を作る稽古があったのが違うところでした。ピアニストのハラ(ヨシヒロ)さんと見えない糸でコンタクトを取ったり、他のキャストの皆さんとチームワークを高める稽古でした」と明かした。
また、中山は「稽古ではたくさん失敗もしましたし、色々と動いていく中で、演出からも“これはない方がいい”“これはいいね”といったこともたくさんありました。これは、舞台芸術で作品なので、ルールを守りながら、その中で自由であることが大事です」と持論を展開。
アドリブは「得意ではない」というが、「これをやってやろうと思ってステージに立っているわけではなく、その瞬間に出てくるものを信じて、それをお届けする感じです。自分が出すものではありますが、作品の中で皆さんからいただいたものをそのまま乗せてなので、アドリブに対応しているという感覚は全くないです」と語った。実際に、この日のフォトコールでは「(他のキャストが歌った)今日の歌は初めて聞いた歌ばかりでした。僕の歌もそうだったと思います」という。
これについて池田は「今日、お届けしたシーンの歌は全部即興です。僕の場合は、歌詞、メロディもそうですし、伴奏もです。即興で鳴る音に合わせて歌いました」と同意し、会場を驚かせた。
続いて、池田は、即興で歌い踊る作品を作るに至った経緯を「優馬と話す中で、例えば即興で歌って踊ることができれば、いわゆる爆発的に120点を叩き出す俳優に僕らもなれるんじゃないかというところからスタートだったんですが、今はこの作品においては即興性がなくてはならなかったと認識しています。それは、ストーリーとしてもそうですし、自分が表現したいものを突き詰めた時に、即興性が重要なファクターになっていると認識したというところです」と語った。
さらに、升は「若い方たちは、どんどん変化していく。僕は染み付いているものがあるので、それを取っ払うのは大変ですが、今は必死でついていっています。僕もいい歳して新しいことが大好きなので、気持ち的には順応できています」、夏川は「初めての舞台がまさかの即興劇で、歌って踊ってというのは、ハイレベルだなと思います。このような大きな舞台も初めてで、ようやくつかめた役なので、経験の浅いこともあって、皆さんに助けていただいてきました。23年分の殻を突き破って、裸で演じられたらと思います」、岐洲は「この作品は、自分がどれだけ自由に立っていられるかが大切だと思っています。難しくて、分からないことも多いですが、力を抜いて、縛られずに、固定されずに、ただ自由であるという気持ちだけを持っています」とそれぞれが本作に思いを寄せた。
そして、鈴木は「即興という言葉の概念探しからこのカンパニーで探し始めました。『お芝居って何?』『俳優って何をするべきものか?』をまた一から考えた稽古の日々でした。ハラさんも含めて、音楽とどう共存するのかを考えながら、支えてもらったり、リードしたり、不思議な感覚でやっています」、野島は「普段、私は声優としてお仕事をさせていただいているので、稽古ひとつとってもなかなかできない経験ばかりで、戸惑いました。ですが、声優という仕事の枠の中から飛び出したいと思っていた時にお声かけいただいたので、嬉しかったんです。役作りもゼロから作っていく作業を体感させていただいて、すごく刺激的ですし、勉強させていただいています」とコメントした。
「見どころは毎日変わる」と池田が話す今作。会見の最後に中山は、改めて「この作品は、この劇場で瞬間的な今が繰り広げられる作品なので、この劇場のこの瞬間の、この時間にしかないものを必ずお届けできますので、新鮮さを楽しんでいただければと思います」とアピールして、会見を締めくくった。
エン*ゲキ#06 即興音楽舞踏劇『砂の城』は、10月15日(土)から10月30日(日)まで東京・紀伊國屋ホール、11月3日(木・祝)から11月13日(日)まで大阪・ABCホールにて上演。上演時間は約2時間10分(休憩なし)を予定。
(取材・文・撮影/嶋田真己)
エン*ゲキ#06 即興音楽舞踏劇『砂の城』公演情報
上演スケジュール・チケット
【東京公演】2022年10月15日(土)~10月30日(日) 紀伊國屋ホール
【大阪公演】2022年11月3日(木・祝)~11月13日(日) ABC ホール
スタッフ・キャスト
【作・演出】池田純矢
【出演】
中山優馬
岐洲匠 夏川アサ 野島健児 池田純矢 鈴木勝吾
升毅
<アンサンブル>
佐竹真依 高見 昌義 永森祐人 真辺美乃理 森澤碧音
<ピアノ演奏>
ハラヨシヒロ
【公式サイト】https://enxgeki.com/
【公式Twitter】@enxgeki